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第五章 嘘と死亡フラグと紅の聖女
私的には死亡フラグです
しおりを挟むまぁ、私たちの証言だけでもすむのだけど、後々なんかあった時に呼ばれるのも嫌なので、かなり割高になるけど、魔法具で映像を残すことにした。ニノリスさんやケイ兄さんの助言もあったしね。
結果から言えば、ちゃんと撮れたよ。茶色の髪と瞳の青年が金髪碧眼に変わる瞬間と、聖女様が駄々をこねて宿屋に散々当たり散らして暴れている瞬間もね。あ~あと、青年に身体を擦り寄せてる場面もバッチリ撮れたよ。
初対面からそれって、もう……無言になるよね。キルなんて、私に目隠ししようとするほどだったから、おのずとどれほどか想像できるよね。
違う字の聖女が頭に浮かんだのは、私だけじゃないよ、絶対。
とりあえずそれは横に置いといて、撮影のために、認識阻害と防音結界の魔法を二重掛けして、バレないように近付いたけど、悲しいほど誰も気付かなかったわね。脇ガバガバじゃない。緊張感なさすぎ。神兵と魔術師がお守りに神経をまわしているって……まぁいいわ。
撮り終えたから、速やかに撤収。周囲に誰もいないのを確認してから、私たちは掛けていた魔法を解いた。
「やっぱり、私の言った通りでしたね」
ユリア、無表情だけどドヤ顔。
参考のために、聖女様のステータスを再度鑑定した感想がこれ。
「ですよね……それしか言えないわ。治癒魔法と浄化魔法のスキル、全然レベル上がってないじゃない。なのに、魅了レベルだけ上がってるって……マジ最悪。でも、あれ以上上がるようなら対策が必要よね。私は知らないけど。……なら、月二度の奉仕は完全に別人ってことになるよね。替え玉優秀だと思わない?」
あまりの酷さに苦笑しか出ない。ユリアの言う通りだったよ。そっち方面は鍛えたようね。
「平民の聖女候補様ですね」
ユリア、候補には様つけるのね。
「現聖女様よりなにもかも優れてるのに、候補ね……胸糞悪いわ。完全に使い捨ての駒ね」
一応、ギルマスには報告すべき案件よね。聖女様の魅了スキルについても。
ずっと黙っているキルが気になって、横を向くと、憤怒の顔で眉間に眉を寄せてたよ。こんな状態で、殺気を漏らさないなんて……さすがだけど、顔超怖い。
妻と子供をスタンピードで亡くしたキル。
平民の少女が使い捨ての駒にされている現実。
それが、かつて自分が所属し働いていた神聖な場所ならなおさらだよね。とうに、神殿に対して見限っているとはいえ、複雑だと思う。憤りも理解できる。習慣かな、今も就寝前には祈りを捧げてるし。信心深いことはいいことだと思うよ。
「使い捨ての駒でも、それなりに優遇はされていると思いますよ。潰れて使いものにならなくなったら困るのは、神殿ですから」
あいかわらず、冷静な判断だよねユリアは。私も同感かな。神聖魔法の属性を持つ者は少ないからね。
「優遇の種類が気になるけど……」
あの真っ黒に汚れまくった奴らは、やけに悪知恵だけは働くからね。当然、逃げ出さないように、外せない枷を付けているでしょうね。
「気になる気持ちは理解できますが、これ以上は深入りしない方がよろしいかと」
ユリアは私以上に私を知っている。
基本お人好しで、見捨てることができない性格だと。だから、神殿を忌避すると口で言っても足を突っ込みかねないってね。
ユリアの心配はもっともだわ。
奴らは、私のことが目の上のたんこぶだけど、同時に、飼い殺したい存在でもあるからね。魔力量と神聖魔法は馬鹿にならないから。飛んで火に入る夏の虫ってやつ。
それって、私的には死亡フラグだよ。
「わかっているわ」
「まぁでも、私とキルがいますので、いかような手を使いましても、神殿になど足を踏み入れさせませんから、ご安心ください、アキ様」
にっこり微笑むユリアと、少し表情が和らいだキル。そんな二人に、私は微笑む。
「いかような手っていうのが気になるけど、とても心強いよ。ありがとう」
感謝の言葉はちゃんと口にしないといけないよね。
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