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第五章 嘘と死亡フラグと紅の聖女
思っていた通りの展開でした
しおりを挟むやっぱり、思っていた通りの展開だったよ……つくづく呆れる話よね。
結局、聖女様は駄々をこねてリタイア。キルが確認した村に滞在中のこと。合流するために、聖王様(仮)の青年が旅支度をして村長に挨拶していたよ。
まぁ、そうなるよね。その村から次の村まで約三日はかかる。生活魔法のクリーンを習得していない聖女様には無理だわ。色々な面でね。っていうか、学園に四年間いていまだに習得できてないのが不思議だわ。一応、魔法が主体の学園なのに。
「……聖女様、勉強する気はないみたいね」
呆れてボヤいてしまったよ。もったいないと心底思う。称号が消えても神聖魔法が使えれるのにね。
「始めからありませんよ、アキ様。アレは、男に依存して生きていく生き物です。そんな汚物が、勉強などすると思いますか? するとすれば、いかに、男を取り込み惑わすすべぐらいでしょうか」
あいかわらず、ユリアは辛辣だね。その通りなんだけど。
「……それって、神殿と対極な勉強だよね~」
「表向きはですね。今の大司教の一部は好き者だと聞いてます」
「一部ね……」
その一部が一番問題の醜悪なんだけどね。
言うまでもなく、聖女様を擁護し推している者たちだよ。今回の聖王様の件も彼らの暴挙。少数派だけど、そのバックは一番力がある。簡単に言えば、皆高位貴族の出自なんだよ。中には他国の王族もいるし、公爵家もいる。
「なので、神殿に入れば、彼の身も危ないかもしれませんね」
いや……お茶飲みながら言う台詞じゃないよね、ユリア。平然と聞いてる私も私だけど。
「確かに、聖女様以上に綺麗だから危ないかも」
「おい!? さっきから、なんだ!! 確かに、そんな嗜好を持つ奴がいる話は知ってるが、アキの前でする話じゃないだろ。アキもそういうことは言うな」
お父さんの台詞だね。キルって、妙に常識人になる時があるんだよね。実は、そこがありがたいって思っているの。どうも、私の周りには一般常識からちょっとズレた人が多いから。
「は~い、でも、かなり前だけど、子供大好きな嗜好の方々専門の奴隷競売と奴隷商人、購入者たち関係者の一斉摘発に参加したけどね。ちなみに、私は囮でね。私の容姿は嫌われの対象だけど、レアだからね~苦労することもなく、サクッと食らいついてくれたから楽だったわ」
「確かにサクッと食らいついてくれましたが……」
ユリア、殺気抑えようよ。コップひびが入ってる!! 結界張っておいて正解だったわ。もちろん、防音の結界も張ってるよ。
キルはとても難しく険しい顔をしている。
「あのね、私が言いたいのは、キルの言う通り、外ではあまりそういう話題は口にはしない。必要な時以外はね。でも、冒険者だから、そういう依頼も舞い込んでくることだけは覚えておいて」
冒険者は魔物を狩るだけじゃない。人の心の闇や醜い所に接触することも、現実問題多いんだよ。私はできる限り避けてるけどね。囮に関しては、冒険者ギルド長の頼みだったからね、渋々了承したってわけ。
「……わかっている」
ほんの少しだけ、キルの険しい顔が和らいだ。
「わかってくれて、ありがとう」
「それで、話をもとに戻しますが、アバズレ聖女がいる村まで先回りしますか?」
呼び方が段々酷くなってる。
「どっちでもいいんじゃない。一応、聖王様の鑑定はすんでるからね。あとは、念のために、容姿を変える瞬間を魔法具で撮影すればOKじゃない」
「ついでに、アバズレ聖女の鑑定も報告しますか?」
「参考までにね」
「でもまさか……あの青年が〈聖王の器〉という称号を持っているのは思いもしませんでした」
私も吃驚したよ。でも、同時に頷けた。神殿があの青年を欲しがった理由がね。
でも、聖王の器ってなに?
「私も驚いたよ。でも、なんで器なの? だったら、魂は? 器があるなら、魂があってもおかしくないよね。たぶん、神殿が次に探すのはたぶん魂ね……でも、なんで、別々なの?」
謎が増えたね。興味はあるけど、下手に足を突っ込んで、これ以上関わりたくないし、影から少し調べるくらいにとどめておこうかな。
そんなことを考えていたから気付かなかった。ユリアとキルがなんとも言えない表情で私を見ていたことを――
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