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第五章 嘘と死亡フラグと紅の聖女
一応、依頼は終了しました
しおりを挟む「ふ~ん」
手紙を受け取ってから、ギルマスはふ~んしか言葉を発しない。いったいなにが書かれてるか知らないけど、面倒くさいことを書いてるのだけはわかるわ。あ~早く、この場から脱出したい。なんてことを考えていたら、
「アキは信じる?」
いきなりギルマスに振られたよ。主語飛ばさないでほしいな。
「なにをです?」
「聖王様」
あの手紙に書かれていたのは、神殿の動向だったみたい。そうだよね。
冒険者ギルドと神殿って相性最悪だからね……神殿のやつらは、冒険者を剣を振ることしかできない馬鹿だって思ってるし。冒険者ギルドは、頭でっかちの成金野郎って思っている。まぁ私もその一人だけどね。砂糖に群がるアリのようだわ。
「さぁ? 実際見てませんし。あっ、でも、聖女様が神託を受けて見付けたのは、真っ赤な嘘ですよ」
そもそも、聖女が神託を受取ることなんてできない。できるのは、御子様だけ。その時点でおかしいでしょ。そもそも、位的には断然御子様が上なんだけどね~比べるのもおこがましいくらいにね。ちなみに、私は御子様より上になる。いまだに実感ないんだけどね……神殿は相変わらず私には鬼門だし。
御子様は聖山の麓にある大神殿から出てこないから、身近に存在して、施しをする聖女の方が尊い存在だと民は感じてる。行事毎には、神に愛された妖精のような姿も見せてるし。
実際は、治療院の職員が聖女の代わりに働いてる。ポーション製作しながら。今の聖女は完全飾りだし、治療院にきたって話は耳にはしない。それでも、民は聖女様の御慈悲だと信じている。特に、ゲンジュール聖王国ではね。
「聖女が神託を受ける? とうとう、神殿のやつらはそんなことを言い出したのね。呆れるわ~」
「直接には言ってませんよ。公表もしてませんし。神殿のやつらはそこまで馬鹿じゃないです。ただ……そう思わせる態度と噂を流してますから、ゲンジュール聖王国の国民の大半はそう信じてます。伝記通りですしね。聖女様と一緒に、パレードを開催するみたいですよ」
さぞかし花になるだろう。お飾りが増えるだけ。でも、聖山の大神殿が黙認するかはなんとも言えないけど。
「超迷惑」
心底嫌そうな顔をするギルマス。
「ですよね。ということは、ギルマスは偽者だって考えてますね」
「本物なわけないでしょ」
「それはわかりませんよ。少なくとも、あの成金神官たちが見付けてきたんだから、それなりに説得できるものを持ってるかもしれませんよ」
「……それもそうね」
ギルマスはそう呟くと、私たちに席を外すように言った。私たちは素直に執務室を出る。
「…………それなりのものか……」
「追求された時に言い訳できるかなって思ってね。まぁ、まだ鑑定してないからわからないけど」
キルの独り言に答える。
ゲンジュール聖王国のギルマスが私に手紙と小包の配達を頼んだ町、実は、聖王様がいる村から馬車一日の距離なんだよね。別に急ぎの旅をしているわけじゃないし、ちょっとばかり、観光しながら遠道をしてもいいでしょ。
「もし、本物だったらどうする?」
重ねて、キルが訊いてきた。七年前まで神兵だったから気になるようね。相手が聖王様だし。
「そうね。どうもしない。偽者だろうが本物だろうが、私には関係ないわ」
でもまぁ今回は、ギルマスの思惑にのってあげる。私自身、無視できないしね。
とはいえ、神殿とは関わらないことに変わりはない。正直、好き勝手にすればいいと思ってる。泥舟が沈もうがどうでもいいの。私の生活を邪魔しない限りね。
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