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第五章 嘘と死亡フラグと紅の聖女
馬鹿はどこにでもいるようで
しおりを挟むこんな面倒くさい国、さっさと出ていきたいんだけど、ギルマスのもう一つの依頼っていうか、思惑に乗ることにしたからね……できれば、時間調整のために一週間は滞在したかったんだけど、野宿して時間つぶした方がいいかも。
「ほんと、勘弁してよ……」
頭抱えるわ。早速やらかしたよ、この二人。特にユリアが。あれほど注意したのに!! まぁでも、注意はできても怒れない。
「今度はあいつらね……いい仲間に巡り会えてよかったわね、アキ。あと、Sランク昇格おめでとう」
国境沿いにある冒険者ギルドのギルマスは女性なんだよね。こんな脳筋国のギルマスがよ!! 頭も腕も、ギルマスに勝てる冒険者はなかなかいないから成り立つんだよね。
「ありがとうございます、ギルマス。せっかく、はるばるきたんだから、お茶をご馳走してください」
早く仕事を終わらせたいからね。
「あら、いいの? アキのために闘うのに」
「ギルマスならわかるでしょ。瞬殺で終わりますよ」
「確かに、全然レベルが違うわね。そもそも、Sランクの冒険者がいるパーティーを揶揄ってくるなんて、頭もとうとう筋肉になったようね」
「仕方ないですよ。見た目これだし、ひけらかしてないから、金巻き上げれるとでも思ったんでしょ」
相当、酔っ払ってたし。
冒険者ギルドに入った途端、ガタイがデカくてガラの悪い男にからかわれたんだよね。「お子ちゃまがなんの用でちゅか~」ってね。私的には聞き慣れてる言葉だし、馬鹿が伝染ると思って聞き流してたんだけど、やたらしつこくてね、とうとうキレちゃったわけ。同情はしないわよ。全面的にあいつらが悪い。馬鹿にしてきたのは一人だけど、その場にいたパーティーは止めなかったからね、一緒に訓練所に連れていかれたわ。
「あとで、個人的にお話するわ」
目が笑ってないギルマスと一対一か……合掌。それはともかく、
「あの殺気に気付かないなんて、ランク付けの基準落ちてませんか? まぁ、あの馬鹿パーティー以外は後退って震えてましたけど」
Bランクって声高らかに言ってたからね~。
「アキはどう思う?」
「私はまだ未成年だからお酒は飲めないけど、殺気に気付かないまで深酒はしませんね。もししたとしても、身体が反応しますね」
冒険者って、実力があればそれなりに稼げるし英雄にでもなれる。結構憧れる仕事のようだけど、それはあくまで表の顔だよ。裏は違う。
魔物の命を奪う、死と隣り合わせの仕事――
だから、自然と殺気には敏感になるの。身に付くってやつかな。それは、自分の命や仲間の命を護るのに必須なんだよ。それが欠けたら、私は冒険者を辞めるべきだと思う。
「そうだよね~私も、そう思う」
ギルマスがどう判断するかは知らないけど、もし私がギルマスなら、パーティーのランクを降格にするかな。
「――アキ様、次、同じことを言ったら、足か腕、使えなくしてもいいですか?」
私とギルマスが話していると、決闘がすんだユリアが、ただいまって感じで声をかけてきた。
「いいよ~」
私が答えるより早く、ギルマスが答えた。とびっきりの笑顔で。でも、目は笑ってない。
「ありがとうございます」
こっちも良い笑顔だよ。キルもニヤリと嘲笑ってるし……あらためて合掌したよ、心の中で。
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