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第五章 嘘と死亡フラグと紅の聖女
花と大地の王国
しおりを挟むリステラーク王国――
別名、花と大地の王国と呼ばれている。
ゲンジュール聖王国の隣国で一番の友好国ね。聖王様の伝記も数多く残っているよ。神殿がかなり小さいからか、ゲンジュール聖王国のように、神官に出くわすのは少ないかな。
一見、のどかで穏やかそうな別名だから、そこに住む国民も穏やかだと思っていたら大間違い。かなり、好戦的なんだよね。
「ほとんどの大人が、武器を携帯してるのか!?」
キルの台詞に、私は苦笑い。私も最初にきた時は驚いたよ。だって、非戦闘員の屋台の店主でも、傍に武器を置いてるか、背中や腰に装着してるからね。それも結構な太刀を。当然、女性もね。
「それ、初めてきた人のあるあるな感想だよね。別名と違って、かなり好戦的な国民性だよ」
でも、町の様相はとても可愛いんだよね。全体的に丸い感じ。花の数も多いし。
「それは、人を見ればわかるが……」
驚きと興奮した様子のキルに私は注意する。トラブルは避けたいからね。
「これが、この国の通常運転だからね~。それと、ここでは、強さが正義って面がただあるから、ちょっとした口のききかたで諍いが起きるよ。巻き込まれないように気を付けてね、特にユリア」
若干、キツめの口調で釘を刺す。
「なぜ、私が名指さしで注意されるのですか?」
「私の悪口を言われたら「処します」
間髪入れず答えたよ、この人。
「さすがに、処したら駄目だからね。っていうか、いい機会だから、少しは聞き流す努力をしようね」
それでなくても、この国は面倒くさいんだから。無駄な時間割きたくはないんだよね。一度つかまると連鎖するから。
「無理です。主を貶されて、黙っている侍女がいますか? 処するのが駄目なら、再起不能で許します」
「確かに、黙ってはいられないよな」
「再起不能も処すると同義語!! せめて、みねうち」
わかってはいたけどさ、こういう反応が返ってくるの。内心は嫌じゃないよ。でもね……やっぱ、一人でコソッと出発した方がよかったかも。あ~でも、間違いなく追いかけてくるか……余計に面倒くさいことになるわね。結果は同じかな……
「アキ様が懸念されているのは、決闘のことでしょうか? なら、瞬殺で終わりますから、時間はかかりませんよ」
でしょうね、ユリアに勝てる人なんて
早々いないわよ。
「決闘?」
ユリアの物騒な言葉にキルが反応する。
「さっき言ったでしょ。力が正義って面があるって。諍いが起きた時、剣や拳で決着をつけるのよ。それも、国が指定した場所でね。だから、他での喧嘩は禁止になってる。一応ね」
ユリアの代わりに、私が教えてあげた。
「かなり独特な国民性だな」
「まぁね、シンプルなのはいいんだけど、国が指定した場所までいくのが面倒。順番待ちが嫌」
前回、ケイ兄さんと一緒に訪れた時、本当うんざりしたからね。あの二の舞いはしたくない。
「冒険者ギルドの地下にある訓練所も、確かその一つでしたよね」
場所を把握してるってことは、そこで決闘したことがあるの? ユリア。
「町の中心街から近いからって、止めてよね、ほんとマジで。嫌だよ、何時間も待つの」
ピークの時間帯だと、自分の番までくるのに一時間はかかることが有にあるから。そんな時間があるなら、食べ歩きかベッドで休みたいよ。
「極力我慢はしますが、絶対とは言い切れません」
「俺も」
なんとも心強いユリアとキルの返答に、私は盛大な溜め息を吐いた。滞在は一週間ほどの予定だけど、早めに出た方がいいかもね。
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