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第五章 嘘と死亡フラグと紅の聖女
依頼書
しおりを挟む私はあくまで傍観することを決めていた。とはいっても、情報と、神殿側と聖王国側の動きには目を光らせていたけどね。
だから、聖女が聖王様を大神殿に迎えに行く日程が決まったことも把握してたわ。まぁ想像通り、あの使えないお花畑聖女と神兵、あと一騎士団も参加するって知っていた。それで、帰りはそのまま王都内をパレードをするんだって。客寄せパンダだよね。
因みに、冒険者ギルドからの参加はなし。スタンピードの件で、今まで以上に亀裂が生まれてるからね……当然といえば当然か。下手に巻き込まれなくていいと、ギルマスも言ってたし、私もそう思う。
だから、安心していたの。だけどね……きたんだよ、依頼書が。
この日も、いつも通りに冒険者ギルドに顔を出したら、ギルマスに部屋にくるように言われてね、いってみると一枚の紙を渡されたの。
「アキ、お前さん指名で依頼がきてるんたが……受けるか?」
なんか、歯切れ悪いな。顔色も悪いし、厄介な依頼主なのかな?
「依頼内容は?」
「要人警護だ」
要人警護? この時期に? まさかね……見たくないわ。
案の定、依頼書に記されている依頼人の箇所を見てみると、想像通りだったよ。そのまま突き返す。
「断ります。却下。嫌な予感しかしない。巻き込まれ確定な案件に関わるつもりないです」
「断るに決まっている依頼を、わざわざアキ様に見せる必要ありますか?」
「冒険者ギルドは神殿と関わるつもりなのか?」
次々に上がる批難の声。ユリアもキルも嫌悪感丸出しで、ギルマスに詰め寄る。今回は庇えないわ。
だって、依頼主は大神官様。警護対象者は聖王様とセラスティーア様たからね。無理。
「うるせーな、仕方ねーんだよ。依頼があったことだけは伝えないと、職務違反になる。例え、神殿と聖王国がアキを利用する気満々だとしてもな」
ギルマスは大きな溜め息を吐きながら言った。私も吐きたくなったよ。
「私をあの女の影武者にする気ですね。旅の途中の出来事なんて、いくらでも捏造できますから。参加は神兵と騎士団だけのようだし。そうでなければ、私指名で依頼しないでしょ。この地域なら、Cランクで十分なのに」
ほんと、見え透いてて嫌になる。
奴らが欲しいのは、聖女が治癒魔法を使って聖王様を助けた事実だけだからね。
「だよな……」
「とにかく、依頼は断ってください」
再度、強く言った。
「断るよ。それでだ、この手紙と小包をリステラーク王国のギルマスに届けてくれないか?」
これって、ギルマスなりの優しさだよね。聖王国と神殿の依頼を断ったんだから。まぁ裏があるのわかってるけど。
「わかりました、その依頼受けます。出発は明日の早朝で」
にっこりと微笑みながら答えた。
「やっばり、聖王樣って言葉は影響力大だよね……本当か偽物か、まだわかんないのに」
王都の人たちがどこかソワソワしている様子を、いつもいくカフェでお茶をしながら呟く。苛ついた時は甘いものに限るよね。新作ケーキうまっ。何個か買って、マジックバックに入れとこう。
「しょうがないですよ、アキ様。神殿は別として、聖王樣はこの世界の人気者ですから」
向いに座るユリアが、私の呟きを拾う。
「人気者って……まぁ、そうだけど」
もう少しマシな言い方があると思うよ。
「それにしても、神殿側も思い切った手を打ってきたな」
元神兵のキルが話題を変える。
「確かにね。でも、公表しちゃえばこっちのものでしょ。実際に、それを否定するものがないんだから」
だから、こんな手が打てたと思う。そう考えると、前々から神殿側がセラスティーア様を欲しがっていたことにも納得だよ。
「本当に全属性持ちだと思いますか?」
ユリアとキルが私に視線を向ける。
「どっちでもいいよ。私には関係ないから。私は私。私の邪魔をしなければ、なにをしようが構わない。ただし、責任を私や冒険者ギルドに負わせようとするなら容赦はしないけどね」
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