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第四章 死亡フラグも監禁フラグも潰します
失うのはあっという間だよね
しおりを挟むこれでもかっていうほど、バッサリと切ってやった
言いたいこと、すべて吐き出したわけじゃないけどね。
目の前にいるクズたちに、皆が思うほど恨み辛みはないの……正直、もうどうでもいいレベルなんだよね。そもそも、恨みや辛みは、根本にクズたちを慕う気持ちがあるから生まれるものでしょ。私には、はなからそれがないもの。されたことの、怒りは別物だし。
だから、クズとその息子二人が私に「家族を助けようとは思わないのか!!」とか、「冷血なやつ!!」などの罵詈雑言を浴びせても、不愉快だと思うだけ。小バエ程度かな。血の繋がりなんて一切感じない。あぁ、馬鹿だとも思うけどね。私がSランクの冒険者だってこと忘れてない? ほんと、自分のこと以外はどうでもいいのか……こんな茶番、最後まで付き合う義理もないわね。
「国王陛下、これで私の疑念ははれましたね。退出してもよろしいでしょうか?」
一応、国一番のお偉いさんだからね、無視して退出するのもね……あとでグチグチ言われそうだし。
「いや、待て!! 晩餐の用意をしている、ゆっくりとしていくがいい!!」
晩餐? この時期に? それは口実ね。私をできるだけ、王宮に留まらせようとしているのかな。にしては、見え透いた誘いよね。
「お断りします。そのような遊興費があるのなら、スタンピードの被害者を支援なされたらどうですか? ていうか、すべきでは? あぁ、そんな発想、そもそもありませんでしたね。無理なことを言ってすみません。この場にいる全員が、スタンピードよりも、慰霊祭の出席よりも、称号を失った少女の保護の方が大事ですから、仕方ありませんね。では、失礼します」
私は再度踵を返す。今度こそ、帰る気満々だった。
「ぶ、無礼な!! 国王陛下のお言葉を無下にするとは!!」
宰相の存在忘れてたわ。そういえば、いたよね。無視だけど。
「アルキア嬢、単刀直入にお伺いいたします。優先的に我が国の依頼を受けてはいただけませんか?」
帰ろうとしていた私に、後ろで控えていた上級文官が尋ねてきた。
「それは、冒険者法に抵触するのでは?」
Sランクの冒険者を、一国が抱え込むことは許されないからね。でも、自分の祖国を、優先的に冒険者が仕事しているのは抵触しない。つまり、上級文官が言いたいのはこのことだよね。
「……そうですね」
素直に認めるあたり、このクズやお花畑たちとは違うわね。
私は軽く溜め息を吐いてから答えた。
「今回は聞かなかったことにします。私は受けた順で依頼をこなしたいと考えています」
これには二つの意味がある。
受けた順――
それは、依頼を言葉通りに受けた順でこなしていくこと。そして、隠れた意図として、依頼そのものを受けるかどうか考える。ひらたく言えば、絶対に優先的に全部受けないって意思を示したの。緊急時は別だけどね。
「……そうですか、わかりました」
やっぱり、上級文官が宰相の代わりを務めているのね。当の宰相は、無礼だとギャンギャン吠えてるだけ。ことの深刻さを全然理解していない。
唯一、使える神聖属性持ちは私だけなのに。元聖女候補様がポンコツだって理解していないわね。理解しているのは、上級文官とセルシド殿下だけかな……マジ、この国終わるんじゃない。
まぁ私が言えることは、貴重な〈創世神の護り子〉の称号をなくしたこと。それから、この国出身のSランクの冒険者二人に最悪な印象を抱かせたこと。時間が経つにつれ、ジワジワくるはず。
ほんと、信用って失うのはあっという間だよね。そもそも、なにも築けてなかったけど。
そんなことを考えながら、用が済んだ私たちは謁見室をあとにした。
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