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第四章 死亡フラグも監禁フラグも潰します
笑ってとどめを刺しました
しおりを挟む「……どういう意味だ?」
喚くと思ってたけど、意外と冷静に受け止めてるわね。それとも、怒りの上限を超えたのかな。たぶん後者だね、今にも私を殺したい目をしているから。
「称号は使用しなければ消えるんですよ」
「どういうことだ?」
王太子殿下が重ねて尋ねてくる。これ常識だよね、なに馬鹿をひけらかせているの。その馬鹿たちに教えなきゃいけないのってしんどいな~。
「……確かに、称号は創世神様から与えられた恩恵です。でも、それは一度与えられたら永遠に続くものではありません」
「口からでまかせを言うな!!」
そう言われると思ってたよ。いや~ほんと、勉強しなおしてよ。マジで。
「でまかせではありませんよ、王太子殿下。事実、消えているでしょ。いいですか、創世神様が与えた恩恵は皆に分け与えるために存在します。例えば、〈創世神の護り子〉は、神聖魔法の威力を上げる効果がありました。いくら神聖魔法の属性を持っていても、それを使わなければ効果は発揮できない。だから、使う意志なしとして、消えてしまったのですよ。学園で習ったと思いますが……疑うのなら、ご自身で教科書を開いてみてください」
噛み砕いて言ってあげたけど、ちゃんと伝わったかな。
「……ひ、酷い!! 嘘を言わないで!! アルキア様、そんなにも私が怖くて憎いのですか……」
わかっていない人がいたよ……
完全に悲劇のヒロイン化してるわね。似合うから、なおさらウザい。こういうの一番腹が立つのよね。本当に泣いてるの?
「なぜ私が、セラスティーア様を怖がったり憎んだりするのですか? 会ったの初めてですよね」
そもそも、私入学して間もないわよ。
「……それは、私が光で貴女が闇だからよ!!」
闇属性持ちは悪ってこと? いやいや、なに言ってるの!? 闇属性持ち全員に謝れ!!
「闇って……ただの属性ですよ。それに今は、神聖魔法も使えますが」
「それは、アルキア様が――」
まだ言うか!!
いい加減ウンザリしてきたので、話を切ってやった。そろそろ、私の付き人、特にユリアがキレそうになってる。あいつらには聞こえないほどの小さな声で「煩い、煩い」と連呼してるからね。
「私がなにかをしたと? 本当、セラスティーア様は冗談が上手いですね。反対に訊きますが、聖女候補と言われているのに、聖女らしいこと一度でもしました? なぜ、スタンピードが起きた時、救護員として働かなかったのですか? なぜ、王城に避難していたのです? いちばん、最前線で働かないといけない人が!! 教えてください、セラスティーア様。治癒魔法のレベルはいくらですか? 浄化魔法は? 魔法は使用しなければレベルは上がらないんですよ。それとも、創世神様に祈りを捧げればいいと考えているのですか!? 貴女は神官ですか? 神官を希望なさるのなら、教会に帰依したらどうです」
畳み掛けてやったら、もうなにも言わずに泣き出した。
「称号はしょせん、称号ですよ。職業ではありません。魔法や物理強化のアクセサリーと一緒ですよ。なので、いくらセラスティーア様を囲い込もうと、創世神様の加護は得られないし、その神罰は消えませんよ。せめて、セラスティーア様が聖女候補らしく、治癒魔法と浄化魔法のレベルを上げ、スタンピードにも参加していれば、その称号は消えることはなかったでしょうね。そしてそれを職業まで鍛えれば、この国を護る守護者の一人になっていた……本当に惜しいことをしましたね、この国にとって多大な損失ですよ」
私がそこまで一気に言うと、王太子殿下たちを含む取り巻きたちは身を震わせていた。すこしでも、私の言葉が届けばいいけど。
反対に、上級文官とセルシド殿下は絶望と悔しさで、真っ青な顔のまま俯いて歯を食いしばっていた。彼らはことの重大さを理解しているからだ。
それくらい、〈創世神の護り子〉の称号は貴重なものだった――
「嘘を並べ立てるな!! ならばなぜ、その男の神罰は消えているんだ!?」
あのクズが真っ赤な顔で怒鳴りながら、私の前に立つ。皆が警戒したけど、私はそれを手で制した。
こんな近くで見るの初めてだけど、やっぱり、人の皮を被った化け物って思ったわ。外見が良いだけにね、際立ってる。ましてや、仮面で顔半分隠してるから怪しさ満載。完全に、道化のように見えるわ。
「私はなにもしてませんよ、ゲンジュ公爵様。ただ……キルの神罰が早く解けますようにと願いはしましたけどね。まさか、解けるとは思いもしませんでしたよ。それもキルの日々の行いが認められた結果ですね」
にっこりと笑って答えてやった。
「ならば、私にも願え!!」
まぁ、そう言い出すよね。形振り構わずに。でも、どの面さげて言ってるの!?
クズは興奮して私の胸ぐらを掴み締め上げる。鍛えてないやつにいくら締め上げられても苦しくない。だけど、不愉快だわ。
「あとで、その洋服焼却しますね。クズ菌に汚染されてしまいましたから。あと、このクズを殺してもよろしいでしょうか?」
ユリアが背後でボソリと呟く。
「そうね。服の変えはいくらでもあるから。でも、殺すのはなしで。ユリアの手が汚れるからね。それで、いつまで胸ぐらを掴んでいるのかな、ゲンジュ公爵様」
「生意気な!! 願え!! 私のために!!」
さらに、クズはヒートアップ。私の胸ぐらをキツく締め上げてきた。さらに、私の足はさらに宙に浮く。デジャヴュ。
「離せ」
ほんの少し威圧を放ちながら命令した。
ただそれだけで、クズはすぐに手を離すと、冷や汗をタラタラと流しながら尻もちを付き、腰を抜かしていた。そんなクズを、私は冷ややかな目で見下ろしながら言い放つ。
「行き過ぎた冗談は不愉快しかないわ。生まれたばかりの子供を平気で殺そうとし、生きているとわかると何度も暗殺者を差し向けていた貴方を、私が助けると本気で思っているのですか。そして、そんな行いをしてきた貴方を、創世神様が許すとお考えですか」
クズはなにも言えずに震えている。そんなクズに、私は笑ってとどめを刺してやった。
「……七年前、貴方はあの司祭とグルになって私を奴隷にしようと企んだ。あの魔法具はそのためのもの。魔力を封じれば、子供だからなんとでもなると思った? 犯罪者や借金からの奴隷落ちは合法だけど、無実の子供を奴隷にして、娼館に売ろうとか、暗殺者にしようとか、魔力を奪い、高濃度の魔法石を作ろうとはかろうなんて、クズを通り越して化け物の所業よね。いい、貴方は実行犯。だけど、キルはただの巻き込まれ。そもそも、罪の重さが違うのよ。だから、今世では消えないでしょうね。来世にも影響あるかも、まぁ自業自得ですから、諦めてください」
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