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第四章 死亡フラグも監禁フラグも潰します
登城しました
しおりを挟む殺意と憎しみ、そして畏怖が入り混じった目って、いつも思うけど、なんでこんなに黒く濁っているのかな。目は心の鏡だってお母さんが言っていたから、私と相対するこの人たちは全員汚れてるってことよね。
「な、なぜ、昨日こなかったのだ!!」
謁見室に通された途端、ケイ兄さんとニノリスさんに怯んだ様子だったけど、私を見て国王陛下が怒鳴り付けてきた。
「なぜ? ですか、慰霊祭に参加するためですが、それに問題がありますか?」
「我の命令よりも、慰霊祭の方が大事とは無礼な!!」
唾を飛ばす勢いね、汚いな。
謁見室には国王陛下と宰相とあいつにその息子二人に、王太子殿下と第二王子殿下、あと数名の腰巾着。両殿下に護られるように、元聖女候補もいるわね。これって、オールスター勢揃いってやつ。
「無礼ですか? そもそも、スタンピードで亡くなった国民に対する追悼の念はないのですか?」
「それなら、宰相が出席しただろ!!」
駄目だこれ。たぶん、私側全員そう思ったわね。
「それで、私を呼び出した用向きはなんですか? こちらも暇な身体ではないので、さっさと言ってください。ないなら、帰りますけど」
呆れながらそう言うと、今度は宰相が怒鳴り付けてきた。
「無礼者めが!! 国王陛下に対して頭を垂れることなく、乱暴な物言い、不敬罪にあたるぞ!! アルキア・ゲンジュ!!」
まるで、鬼の首を取ったみたいな言い方ね。配置していた騎士が私たちを取り囲もうとする。
「不敬罪? この私を投獄すると――Sランクの冒険者である私を」
「なっ、なにを言ってる!? 貴様がSランクだと!?」
私はプラチナカードを見せてやった。瞬間、あいつら息を飲んでたね。見せるタイミング、間違ってなかったみたい。
騎士の動きが止まる。騎士になるくらいだもの、よほどの馬鹿じゃない限り知ってるよね。Sランクの冒険者は王族とも対等に話すことが許されているって。ましてや、私たちに剣を向けるとどうなるかって話もね。
「今回のスタンピードの討伐でワンランク上がりました」
にっこりと笑って言ってやった。
あいつらにとって誤算だらけだよね。私一人だけ呼ぶ予定が、保護者付き。そして私のワンランクアップ。計画が最初から破綻してるわね。杜撰すぎる。力押ししようとしてたのが丸わかりよ。
「……それで、私を呼んだ理由はなんでしょうか?」
私は笑みを消し国王陛下に再度尋ねた。
「なにが、Sランクだ!! セラスティーアの称号を奪い手に入れたランクなど無効だ!!」
代わりに、王太子殿下が答えてくれたよ。予想通りの理由だったみたい。
その台詞の意味、わかって言ってる? 父親、親族が花畑の住人なら、息子も花畑の住人になるのかな。セシルド殿下は違うけど。
「酷いですわ!! アルキア様!! 私は皆の幸せを日々祈っているのに……」
ここぞとばかりに、ポロポロと涙を流しながら訴えてくる、元聖女候補様。祈りでご飯食べれるの? 怪我が治るの?
その華奢な背中を、両殿下が支えながら私を睨み付けてくる。腰巾着も。婚約もしていないのに、そんなに身体を擦り寄せるなんて、恥ずかしいって気付かないのかな……か弱き乙女を護るヒーローとでも思ってるのかな、マジキモっ。
「称号を奪う? 本気で言ってます? そのようなこと、一介の人間である私ができるわけないでしょ。それができるのは、称号を与えた創世神様だけです。それに、称号は時に剥奪されることがあるのを知らないのですか!? 冒険者内では常識ですよ、王太子殿下」
可哀想な子を見るような目で言ってやった。鼻で笑うより、こっちの方が効果的だと判断したからね。
顔真っ赤になって怒ってる~。歯軋りの音が聞こえるわ。あれれ、腰巾着の一人が剣に手を回してる。謁見室で抜くの!? そもそも、一生徒に過ぎない者が剣の持ち込むなんて、その時点で罪を犯してるよね。
ニヤリと笑いそうになった時だった。
バタバタと廊下を走る音がしたと思うと、飛び入りゲストが二人入ってきた。
上級文官とセシルド殿下だ。
「なにをしているのですか!? 宰相!!」
その一言で察したよ。この上級文官が宰相の補佐をしてるんだって。セシルド殿下が召喚したのかな。まぁでも、止めるのは無理だと思うよ。
「お前には関係ないことだ、下がれ!!」
「セルシド、お前もだ!!」
宰相と国王陛下が怒鳴る。普通に話せないかな……頭の血管切れるわよ。
「国を想ってのことなのに……別に同席してもらっても構いませんよ。王太子殿下は私がセラスティーア様の称号を剥奪したと言うのなら、私のステータスを、今ここで開示しましょうか?」
そう告げると、私は自分のステータスを開示した。
「…………創世神の愛し子」
王太子殿下が呆然としたまま呟く。
「ええ。私の称号は、創世神の愛し子。護り子よりも高位ですよ、王太子殿下」
私はそう答えるとステータス画面を消した。
「ありえない!! ありえない!! 赤い目の魔族が創世神様の愛し子だと!! そんなの、私は認めない!!」
頭を掻きむしりながら、狂ったかのようにあの男が怨嗟の言葉を吐く。私はそれを一瞥すると、鼻で笑って答えた。
「貴方に認めてもらう必要性がどこにあるのです?」
そう言えば、これが、この男と初めての会話よね。特になにも感じないな。
「なっ!?」
言葉に詰まるあの男を無視して、私は王太子殿下に視線を向ける。
「創世神の護り子……その貴重な称号を剥奪に導いた犯人なら知ってますよ」
「それは誰だ!?」
食い付くね~王太子殿下。私は親切だからね、教えてあげるわ。
「犯人は、王太子殿下たちですよ。勿論、国王陛下も宰相様もゲンジュ公爵様、そして、セラスティーア様も含まれますね」
満面の笑みを浮かべて私は告げた。
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