上 下
43 / 61
第四章 死亡フラグも監禁フラグも潰します

登城しました

しおりを挟む

 殺意と憎しみ、そして畏怖が入り混じった目って、いつも思うけど、なんでこんなに黒く濁っているのかな。目は心の鏡だってお母さんが言っていたから、私と相対するこの人たちは全員汚れてるってことよね。

「な、なぜ、昨日こなかったのだ!!」

 謁見室に通された途端、ケイ兄さんとニノリスさんに怯んだ様子だったけど、私を見て国王陛下が怒鳴り付けてきた。

「なぜ? ですか、慰霊祭に参加するためですが、それに問題がありますか?」

「我の命令よりも、慰霊祭の方が大事とは無礼な!!」

 唾を飛ばす勢いね、汚いな。

 謁見室には国王陛下と宰相とあいつにその息子二人に、王太子殿下と第二王子殿下、あと数名の腰巾着。両殿下に護られるように、元聖女候補もいるわね。これって、オールスター勢揃いってやつ。

「無礼ですか? そもそも、スタンピードで亡くなった国民に対する追悼の念はないのですか?」

「それなら、宰相が出席しただろ!!」

 駄目だこれ。たぶん、私側全員そう思ったわね。

「それで、私を呼び出した用向きはなんですか? こちらも暇な身体ではないので、さっさと言ってください。ないなら、帰りますけど」

 呆れながらそう言うと、今度は宰相が怒鳴り付けてきた。

「無礼者めが!! 国王陛下に対して頭を垂れることなく、乱暴な物言い、不敬罪にあたるぞ!! アルキア・ゲンジュ!!」

 まるで、鬼の首を取ったみたいな言い方ね。配置していた騎士が私たちを取り囲もうとする。

「不敬罪? この私を投獄すると――Sランクの冒険者である私を」

「なっ、なにを言ってる!? 貴様がSランクだと!?」

 私はプラチナカードを見せてやった。瞬間、あいつら息を飲んでたね。見せるタイミング、間違ってなかったみたい。

 騎士の動きが止まる。騎士になるくらいだもの、よほどの馬鹿じゃない限り知ってるよね。Sランクの冒険者は王族とも対等に話すことが許されているって。ましてや、私たちに剣を向けるとどうなるかって話もね。

「今回のスタンピードの討伐でワンランク上がりました」

 にっこりと笑って言ってやった。

 あいつらにとって誤算だらけだよね。私一人だけ呼ぶ予定が、保護者付き。そして私のワンランクアップ。計画が最初から破綻してるわね。杜撰すぎる。力押ししようとしてたのが丸わかりよ。

「……それで、私を呼んだ理由はなんでしょうか?」

 私は笑みを消し国王陛下に再度尋ねた。

「なにが、Sランクだ!! セラスティーアの称号を奪い手に入れたランクなど無効だ!!」

 代わりに、王太子殿下が答えてくれたよ。予想通りの理由だったみたい。

 その台詞の意味、わかって言ってる? 父親、親族が花畑の住人なら、息子も花畑の住人になるのかな。セシルド殿下は違うけど。

「酷いですわ!! アルキア様!! 私は皆の幸せを日々祈っているのに……」

 ここぞとばかりに、ポロポロと涙を流しながら訴えてくる、元聖女候補様。祈りでご飯食べれるの? 怪我が治るの?

 その華奢な背中を、両殿下が支えながら私を睨み付けてくる。腰巾着も。婚約もしていないのに、そんなに身体を擦り寄せるなんて、恥ずかしいって気付かないのかな……か弱き乙女を護るヒーローとでも思ってるのかな、マジキモっ。

「称号を奪う? 本気で言ってます? そのようなこと、一介の人間である私ができるわけないでしょ。それができるのは、称号を与えた創世神様だけです。それに、称号は時に剥奪されることがあるのを知らないのですか!? 冒険者内では常識ですよ、王太子殿下」

 可哀想な子を見るような目で言ってやった。鼻で笑うより、こっちの方が効果的だと判断したからね。

 顔真っ赤になって怒ってる~。歯軋りの音が聞こえるわ。あれれ、腰巾着の一人が剣に手を回してる。謁見室で抜くの!? そもそも、一生徒に過ぎない者が剣の持ち込むなんて、その時点で罪を犯してるよね。

 ニヤリと笑いそうになった時だった。

 バタバタと廊下を走る音がしたと思うと、飛び入りゲストが二人入ってきた。

 上級文官とセシルド殿下だ。

「なにをしているのですか!? 宰相!!」

 その一言で察したよ。この上級文官が宰相の補佐をしてるんだって。セシルド殿下が召喚したのかな。まぁでも、止めるのは無理だと思うよ。

「お前には関係ないことだ、下がれ!!」

「セルシド、お前もだ!!」

 宰相と国王陛下が怒鳴る。普通に話せないかな……頭の血管切れるわよ。

「国を想ってのことなのに……別に同席してもらっても構いませんよ。王太子殿下は私がセラスティーア様の称号を剥奪したと言うのなら、私のステータスを、今ここで開示しましょうか?」

 そう告げると、私は自分のステータスを開示した。

「…………創世神の愛し子」

 王太子殿下が呆然としたまま呟く。

「ええ。私の称号は、創世神の愛し子。護り子よりも高位ですよ、王太子殿下」

 私はそう答えるとステータス画面を消した。

「ありえない!! ありえない!! 赤い目の魔族が創世神様の愛し子だと!! そんなの、私は認めない!!」

 頭を掻きむしりながら、狂ったかのようにあの男が怨嗟の言葉を吐く。私はそれを一瞥すると、鼻で笑って答えた。

「貴方に認めてもらう必要性がどこにあるのです?」

 そう言えば、これが、この男と初めての会話よね。特になにも感じないな。

「なっ!?」

 言葉に詰まるあの男を無視して、私は王太子殿下に視線を向ける。

「創世神の護り子……その貴重な称号を剥奪に導いた犯人なら知ってますよ」

「それは誰だ!?」

 食い付くね~王太子殿下。私は親切だからね、教えてあげるわ。

「犯人は、王太子殿下たちですよ。勿論、国王陛下も宰相様もゲンジュ公爵様、そして、セラスティーア様も含まれますね」

 満面の笑みを浮かべて私は告げた。

 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:518pt お気に入り:4,154

計画的な婚約解消

恋愛 / 完結 24h.ポイント:994pt お気に入り:195

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:118,209pt お気に入り:5,214

コピー使いの異世界探検記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:135

処理中です...