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第四章 死亡フラグも監禁フラグも潰します

最年少、最短記録でSランクに昇格しました

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 私たちがギルマスの執務室に到着した時、既に細々とした手続きはすんでいた。後は、私の署名が必要な用紙が数枚だけ。これを提出すれば終わり。

 私は紙面に書かれている内容を確認してからサインした。それをギルマスに手渡す。ギルマスはそれを受け取ると、魔鷹の特急便で本部に送った。魔鷹を使えば、半日もかからずに本部に届けられる。

「よし、これで、登録完了だ」

「ありがとうございます……」

 早速、出来たてホヤホヤのプラチナの冒険者カードを、ギルマスから受け取った。

 これがプラチナカード……私がどうしても欲しかったカード……

 受け取ったまま、まったく反応を示さない私を不審に思い、皆が顔を覗き込むと、全員焦った表情になって慌てだした。

 私がボロボロと大粒の涙を流してたから。

「よく頑張ったな、アキ」

 ケイ兄さんが抱き締めてくれて、優しく頭を撫でてくれた。落ち着いてから、ケイ兄さんから離れると、皆が心配そうに私を見ていた。悪いことしたなと思った私は、泣いてしまった理由を話した。

「……カードを受け取った途端に、走馬灯のように色々思い出しちゃって、気付いてたら泣いてたよ。ほんと、恥ずかしいな」

 素直に話したら、皆妙な表情になったよ。どうして?

「走馬灯って、言い方悪くねーか……」

 ギルマスがポツリと呟く。

 あっ!? 表現方法間違ってた? そりゃあ、微妙な表情になるよね。でも私にとって、その表現が一番しっくりとくるんだよね。

 そんなことを考えていたら、ギルマスが咳払いをしてから締めに入った。

「まぁ、それはいい。さっき署名した書面にも書いてあったが、Sランクの冒険者は、そこら辺にいる冒険者とは格が違う。まず、国に所属はしない。依頼された案件全てに関して、受けるかどうか自由に決められる。他諸々もろもろは、そこにいる二人に聞け。アキ、Sランク昇格おめでとう!! 最年少、最短記録だぞ」

「ありがとうございます!!」

 今度は涙は出てこなかった。素直に笑えた。

 私がSランクを目指したのは、ケイ兄さんやニノリスさんに憧れたのもあるけど、一番の理由は生き抜く力が欲しかったからだ。そのために、どうしても〈国に所属はしない〉という名目が欲しくて堪らなかった。

 通常、Aランクの冒険者までは、登録した国でしか仕事が許されてはいない。

 つまり、原則国内の冒険者ギルドの依頼しか受けられないってこと。まぁ中には、特別に他国から要請される時はあるけど、基本国内だけ。特別な事情がなく他国に渡るには、色々な書類が必要になるの。

 となると、私は絶対に審査に通らないわね。あいつらにとって、私は身体の中にできる出来物だと思っている。それを外に出すのは、聖王国を名乗っている国にとって許せないでしょうね。

 ケイ兄さんとニノリスさんの力があれば、母さんのように避難することは可能だけど、でもバレた時、二人の経歴に傷がつく。それだけは嫌だったの。積み重ねてきた努力を無にしたくはなかったから。

 でも、Sランクは違う。

 国に所属しないってことは、他国の依頼を自由に受けれるってこと。

 つまり、国に縛られない。

 依頼を受けるか否かは自由に決められ、他国に渡るのも自由。それを、止めることは国王陛下でも許されない。取り込もうとしたら、即冒険者規定に違反して裁かれることになる。多額の賠償金を払うことになるわね。それだけでなく、魔物被害、スタンピードの被害が出ても保証金が貰えないのは痛いよね。

 Sランクの冒険者は、大陸に十人程度しかいないから、その影響力は自然と大きくなってね、王族に対して、それなりに発言権がもらえるまでになったそうだよ。私がこれまで無事に生きてこれたのは、ケイ兄さんやニノリスさんが保護者として、傍にいてくれたからだと思う。

 これからは、自分の身は自分で護るけどね。

「とりあえず、これで、アキを監禁投獄することはできなくなるな」

 ギルマスの言葉に私は少し考え込む。

「だといいんだけど……」

 ポツリと呟いた言葉にキルが反応する。

「なにか心配事があるのか?」

 キルに訊かれても明確には言えないけど、なんか……漠然とした不安があるんだよね。

「あの人たち、かなりおかしい人種だから、斜め上のことをしでかしそうで……なんせ、聖女候補だからといって、スタンピードの非常時に、あの女を王城で保護する人たちだからね」

 国民より、あの女一人が大事だって宣言しているようなものでしょ。

「称号が職業だと勘違いしている痛い人だな。まぁそれでも、あり得ないが」

 キルの言葉に苦笑い。

 まだ職業なら、消える確率はかなり低いけどね。どんな生活をしていても。職業は称号とダンチの差があるんだよ。ただの称号にはそんなに力がなくても、それを職業まで引き上げることができたら、それは大きな力を持つ。ケイ兄さんやニノリスさんみたいにね。

「その痛い人の筆頭が、この国の王様なんだから質悪い。第一王子も第二王子もだし、二番目地位が高い公爵とその子息二人もだからね~無駄に地位があるから大概のことがまかり通るのよ」

 もう、苦笑いしかでない。

「よく滅ばないな、この国」

「下に付いてる人が優秀だからね。どのみち、いってみるしかないわ。最悪、逃げ出すよ」

「なら、今回は俺たちもいこうか?」

 仮にも国相手だからね、心配したケイ兄さんとニノリスさんが同行してくれると言ってくれた。

「ありがとう。じゃあ、皆で乗り込みますか!!」

 できれば、あの人の顔を見るのは今回で終わりにしたい。きっちり、今回でケリをつけるつもり。


 
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