41 / 104
第四章 死亡フラグも監禁フラグも潰します
慰霊祭の方が大事だからね
しおりを挟む「……それでも、あの馬鹿王の登城の命令を無視し続けるわけにはいきませんよね」
セシルド殿下の姿が見えなくなった途端、ボソッと呟いたのは、勿論ユリア。ちょいちょい、毒吐よね……馬鹿王の点は同感だけど。
「一応訂正しとくけど、無視はしてないからね。とは言っても、伸ばす理由がないし、しょうがない、至急と言われたから明日にでも登城するよ」
心底面倒くさい口調で答える私も、許されるなら無視したいけどね。一国民である以上無理だよね。これがSランクの冒険者なら、話しは別だけどね。
「「「大丈夫か!?」」」
大の男たちが揃って声がハモる。
「最悪、理由を付けて監禁、もしくは罪をでっち上げて牢屋に投獄するなら、逃げ出すしかないよね。噂によると、とうとう消えたらしいし。その件について問い糾したいんじゃない。私の神聖魔法が発動した時が被ってるから、なおさら私のせいにしたいんでしょ。ましてや……」
そう言いながら、キルの顔を見上げる。彼はもう仮面を付けてはいない。っていうか、付ける必要がなくなった。
神罰の紋印が綺麗に消えたんだよね……
その事実が拍車をかけたんだと思う。神罰が一人間の願いで消えるわけないのに。神を崇拝しながら、その実は崇拝してないよね。その事実に王族たちは気付いていない。セシルド殿下はわからないけど。
「アキ様があのエセ聖女候補から称号を奪ったなど、あの老害と花畑が!!」
今にも抹殺にいきそうな顔をしてるよ、ユリア。
「ユリア、場所考えようね。ここ外、事実だけど、下手したら不敬罪になるからね」
「あ~気持ちわかるが、アキも大概不敬罪だからな」
ケイ兄さんたちとは違う声が後ろからした。振り返ると、呆れながらも、困った顔でギルマスが立っていた。
「気持ちがわかるって発言をしてるギルマスも、同罪だって思います」
そう言ったら頭殴られた。なぜ!?
「そのまま乗り込むにしても、武器がないだろ? そこでだ、アキ、今日からSランクな」
ギルマスには私の称号について明かしているけど、まさかの昇格に驚いたよ。
「……昇格試験受けてませんが?」
「受ける必要ないだろ? 今回のスタンピードで一番活躍したんだから、満場一致で昇格が決定したぞ。言っとくが、神聖魔法は一切関係ないからな」
ほ、ほんとに!?
「あ、ありがとうございます!!」
本当は声を上げて喜びたかったけど、私は小さな声で喜んだ。皆もそれがわかっているから、この場で祝いの言葉を口にはしなかった。
「手続きを今日中に手続きをすましたいって考えていたが、早くすました方がいいな。今から冒険者ギルドにきてもらおうぞ」
宰相様に姿を見られているからね、すぐにお迎えがくるかもしれない。慰霊祭よりも弟の紋印の方が大事な人だからね……
私はギルマスの気遣いに首を横に振る。
「その必要はないですよ。慰霊祭が終わってからでいいです」
心配してくれるのは嬉しいけど、慰霊祭の方が大事だからね。
そう私が答えた時だ。副ギルマスがギルマスにコソッと耳打ちをする。
「広場を出た所に騎士と兵士が二十人ほど待機しているそうだ」
まるで、捕縛じゃない。
「私っていつから罪人になったのかな? こういう所、仕事が早いね~」
思いっきり馬鹿にしながら私がそう言うと、ギルマスと副ギルマス以外は賛同してくれた。
「アキが言う通り、慰霊祭が終わってからでいい。その頃に、冒険者ギルドに顔を出す」
ケイ兄さんが怒りを抑えながら代わりに答えた。
「大丈夫か?」
ギルマスが心配してくれるけど、その心配は無用だよ。
「ギルマス、この場にSランク三人がいるんですよ、大丈夫に決まってるでしょ」
ケイ兄さんに代わってそう答えると、慰霊祭会場から出て帰路についた。
当然、真正面からね。
少なくとも、私とケイ兄さん、ユリア、ニノリスさんは認識阻害の魔法が使えるからね。特に問題ない。剣聖のケイ兄さんが使えるのは意外でしょ。魔法は得意じゃないらしいからあまり使わないけど、魔力はそこそこあるんだよね。それなりに使えるよ。魔力操作も私より上手いし。あまり知られていないけどね。
ニノリスさんの屋敷に戻った私たちは、それぞれ着替えて休憩と食事をとってから屋敷を出た。当然行き先は冒険者ギルドだ。
100
お気に入りに追加
464
あなたにおすすめの小説

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる