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第三章 スタンピードと神聖魔法

最終討伐戦開始

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 魔物の襲撃は時間を問わない。

 奴らが姿を現したのは、ポーションの件でいざこざを起こした翌日の早朝だった。まだ暗く、遠くで太陽が姿を見せだし始めた時間帯。

 緊張はしていたけど、気が緩んでいた時間帯だった。

 冒険者たちの反応が少し遅れた。しかし、魔物たちは第一次防衛戦を突破することはなかった。というか、突破できなかった。仕掛けていた罠にはまって身動きが取れなかったから。

 そこをすかさず、私は炎魔法を投下魔物を討伐した。

「念のために、昨日罠を仕掛けててよかったよ。でも安心はできないわね」

 私は第一次防衛戦に立ちポツリと呟く。

「うまく、はまってくれてよかったな」

「アキ様とニノリス様の作戦です。成功して当たり前です」

 キルとユリアが私の後ろでそれぞれ感想を述べていた。なんか、副官ぽくなってるのって、私の気のせいかな。

 そう、私とニノリスさんは昨日色々罠を張ってたんだよね。魔沼が消滅した後のスタンピードの特徴は熟知しているから。

 魔物たちは直線上に突っ込んでくるからね、通るだろう進路の所に、私とニノリスさんとで土魔法で大穴を開けていた。そして、普通に地面だと思わせるように認識阻害の魔法具を穴の周囲に配置して、穴が開いていないようにめくらませをしていたの。

 当然、穴の底にも罠を仕掛けてある。仲良く串刺しになったと思うよ。でも、落ちる量が多ければ串刺しにならない魔物もいる。それを、炎魔法で焼き殺したわけ。

 とはいえ、全部の魔物が罠に引っかかるわけもない。避けるやつもいる。

「まぁ、その進路も罠の配置によって誘導されているんだけどね」

 ニヤリと嗤う。

『ケイ兄さん、そろそろそっちに行くよ』

 私は耳に装着する魔法具に魔力を流し言った。

『お~見えてる、見えてる』

『じゃあ、よろしく』

『任せろ』

 左側は大丈夫ね。後は右側だけど……

『おはようございます、サルシナ先生。そろそろ、そちらにも魔物が姿を現すと思うので、やっちゃってください』

 かなり砕けた話し方で指示を出す。

 サルシナ先生が手を貸してくれてよかったよ。ニノリスさんが後方で防衛戦を張ってくれているからね、私が右側を担当したら、中央が薄くなるから困ってたんだよね。

『あまりにも、砕けすぎない?』

 そんな言葉が返ってきたけど、気は悪くしてないみたい。

『ここ、学園じゃないんで。でも、ありがとうございます、サルシナ先生』

『自分が住む国を護るのに、礼はいらないよ』

『そうですね、サルシナ先生』

『アキ君こそ、気を抜くなよ。君と模擬戦をする約束があるんだから』

『わかってます。その時は、手加減なしで』

 そう答えると、私は魔法具から手を離した。

 私とケイ兄さん、そしてサルシナ先生がしんがりを務める。ここで、一気に魔物の数を少なくする。ここでどれだけ削れるかが、この討伐の鍵になる。

「せめて、三分の二は削らないとね」

 そう呟いてから、私は後ろを向き、控えている冒険者たちに声高らかに宣言した。

「作戦は頭に叩き込んでるわね!! 私とユリア、キルが前線に出る。漏れた魔物たちは頼んだわよ!! 但し、怪我をした場合は速やかに前線から離れること。絶対に無理はするな!! 最終防衛戦には賢者が控えている、大丈夫。この討伐戦、必ず私たちが勝つ!!」

 控えていた冒険者たちは、拳を天に向かって突き上げ雄叫びを上げた。
 
 騎士団と神兵? 役に立たないから、全員、第二防衛戦に配置したよ。一応彼らも戦闘経験があるんだから大丈夫じゃない。私たちを駒のように扱ったことは許していない。信用できないから、皆まとめて配置した。命をかけた戦いの中で、寝首をかかれたくないからね。

「ここが正念場だよ。ユリア、キル、背中預けたわよ」

 私は炎魔法の魔法陣を十個ほど展開してから告げる。

「任せろ」

「会ったばかりのこの男を、そこまで信用なさるとは……身をまかせたのですね、もしくは、すべてを見せたのですね」

 間の抜けた、とんでもないことを言い出すユリア。らしいといえばらしい。キル、固まってるじゃない。

「ユリア、ダンスを踊りたい?」

 ユリアは知ってるからね、私が炎を自由に操れること。

「それは嫌です。もし踊るなら、アキ様と一緒に踊りたいです」

 ユリアはどこでも通常運転だ。安心する日がくるとは思わなかったよ。

「……そうね、一曲だけなら付き合ってあげてもいいわよ」

 だから、つい、そんな言葉がポツリと出た。

「本当ですね!! 約束ですよ!! 私、頑張りますね!!」

 目がギンギンとなって、ちょっと怖いんだけど……引いた私の耳元で「色々大変だな」って、キルに妙な同情をされたよ。

 とりあえず、こちらも始めますか。


 
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