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第二章 学園は死亡フラグを叩き折る場所です
調査終了
しおりを挟む「……はぁ!? なに、この糞レベル。なのに、魅了だけレベル三って……マジ、腐ってるわ。終わってるわね。へぇ~意外だわ。称号持ちなんだ。なになに、称号は創世神の護り子ってなってるわね……あ~なるほど、だから、勘違いしてあの子を保護してるのか……納得。でも、あれを保護するって……」
創世神様の悪口は言いたくはないけど、見る目を疑ってしまうわ。護り子って美しい魂に与えられる称号だって魔法書に書いてあったけど、もうあれはドス黒く汚れてない? 実際、称号もグレーになりかけてるし。そのうち消えたりしてね。サルシナ先生が視てくればわかるっていったこと、理解できたわ。
「あれ、使えませんね」
隣でユリアがポツリと呟いた。
「同感。まぁでも、冒険者の疑問も解けたわね」
明らかに魅了にかかったようなのに、調べたらかかっていなかった理由。
「見た目、ふわふわ天使ですからね……ましてや、聖女候補、先入観と好意につけこまれたようですね」
「そしてレベルが低いから、術者から離れれば正常に戻った。意図的に使ってるかは微妙だけどね」
「……天使の皮を被った悪女ですね」
ユリア、そんなに冷たい声出るんだ~そこだけ冬だよ。今春なのに、吹雪いてるよ。
「しっかり確認できたし、ギルマスに報告しましょうか。ユリア、そんなに怒らなくても、そう遠くない未来に彼らはすべてを失うよ」
そう言うと、私は屋根の上から下りた。一応、隠蔽のスキルを使っているからバレないけどね。
「そうですね、だいぶん消えかかっていますし」
「そう。私たちは巻き添えを食らわないように、安全圏から見てればいいわ」
私がそう言うと、ユリアは私の顔を覗き込みながら言った。
「見てるだけですか? アキ様なら、さらに火炎魔法をぶち込みそうですけどね」
ユリアの目には、私ってそんなに危ない人間に見えてるのかな? ちょっと、不安。
「あいつかが私にちょっかいをかけなければ、ぶち込んだりはしないわよ」
ちょっかいを出さなければね……
「はい、ギルマス、例の調査報告書」
面倒事はさっさと片付けないとね。私は着替えると、冒険者ギルドに報告にいった。
「これ、マジか……」
よほど呆れたみたいで、ギルマスは馬鹿みたいに口が開いたまま固まっている。
「マジの大マジ。確かに、神聖魔法の属性は持っているけど、レベルがどれもカス。治癒魔法はレベル二、浄化魔法はレベル一。魅了魔法だけレベル三。まぁこれもカスだけどね~。疑うなら、ユリアに聞いてみてください。ただ……変わった称号は持ってますね」
「創生神の護り子か?」
今度は苦虫を噛み潰したような表情になるギルマス。
「まぁ、珍しい称号ですね。文献にも、神聖魔法の属性を持った者によく付与されてるようだけど、基本、神聖魔法を訓練し、神に祈りを捧げ、真摯な態度の者に対して称号の力がいかされるはず。彼女、まるっきり正反対の生活をおくってますね」
「いずれ剥奪されるか……」
称号は絶対じゃない。称号を持っているから優秀じゃない。あくまで称号はオマケみたいなもの。突然なくなったり増えたりする。なくなるのは珍しいけどね。
その点、魔法レベルは消えたり下がったりはしない。鍛錬を重ねれば鍛え上げられるし増える。ちなみに、レベルの上限は五十よ。だから、レベル一とか二は、マジで糞レベル。学園に通っててありえないレベルだわ。サルシナ先生が怒り狂うのもわかるわね。
「その兆しは顕著にでてますよ。そう遠くない未来に消えると思いますね。今のような暮らしをしていれば、ですが。まぁ、忠告しても止めるつもりはないでしょうね。一度、贅沢を知った者はなかなか元の生活には戻れませんから」
「……勿体ないことをしたな」
ギルマスはしみじみと呟く。
「そうですね。この国は、大きな損失をしましたね。貴重な人材を潰した。この国の王族が率先して……彼女一人の責任ではないと思いますが」
自然と、私の声のトーンも低くなる。
「でも、決めたのはマリアーヌ自身だ。アキ、報告助かった。もう帰っていいぞ」
「わかりました」
ドアを開け出ようとした時だ。ギルマスが言った。
「アキ、お前が気にすることじゃないからな」
「わかってます。気にしてませんから。それでは、失礼します」
私はギルマスにそう返事をしてからギルマス室を出た。階段を下りて、カウンターで報酬を貰う。
ギルマスにはそう言ったけど、私の心の中はモヤモヤしたものが渦巻いていた。そのモヤモヤの原因はわかっている。
正直、彼女のことは自業自得だと思う。だけど、直接的ではないにしろ、私のことが原因の一因になったことは明らかだ。勘違いした王族と神殿側が悪いんだけどね。
だとしても、私は一切後悔はしていない。
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