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第二章 学園は死亡フラグを叩き折る場所です

冒険者ギルドからのお呼び出し

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「よぉ、きたな、アキ。ケイ、お前は呼んでないが……まぁいいか」

 陽気な様子で私とケイ兄さんを出迎えたのは、ゲンジュール聖王国冒険者ギルドのギルド長だった。

 私は予定通りに十二歳になると、ゲンジュール聖王国の冒険者ギルドの試験を受け、冒険者になった。出身地の冒険者ギルドでしか受けられない決まりがあるからしかたない。ケイ兄さんとニノリスさんは大丈夫って言ってたけど、実は心配してたの。この目のせいで受けさしてくれないかもって。

 七歳のあの日から、私はこの目を隠すことを止めた。

 ニノリスさんがくれたネックレスに付加してある、認識阻害の魔法を消してもらったの。「一度消したら、また付与することはできないけどいいか」って訊かれた私は頷いた。

 実際、私が心配しているようなことは起こらなかった。冒険者は実力世界、強いのが正義。門は広いけど、生き抜くには厳しい世界。だから、全然OK。こういうの私は好きかな、単純で。でもまぁ、フードを深く被って面倒には巻き込まれないようにしているけどね。ちなみに、テスト結果はトップ合格だったよ。といっても、十分の一しか出してないんだけどね……

「それで、私になんの用です? ギルマス」

 依頼で隣国にいたのに急に招集がかかったから、飛んで帰ってきたけど、やけに落ち着いてるわね、ギルマス。

「立ってるのもなんだ。二人とも座ってくれ」

「それで、急に私を呼び出した理由はなんですか? 魔物討伐の依頼じゃなさそうだけど」

 私がそう言うと、ギルマスは苦笑しながら頭を掻いた。

「鋭いな。さすが、Aランク」

「ギルマス、理由を言ってください」

 私が詰め寄ると、ギルマスは机から一通の封筒を取り出した。高級感がある封筒に嫌な予感がする。それは、ケイ兄さんもだった。

「あっ、理由は言わなくていいです。その依頼、断ります。では」

「その方がいいな」

 私とケイ兄さんはそれだけ言うと、部屋を出ようした。

「アキに調べてほしいことがある。これは、全冒険者ギルドの総意だ」

 逃げ道塞いできたわ。全冒険者ギルドの総意って言われたら、逃げるわけにはいかないよね。

「…………調べる内容は?」

 渋々尋ねる。

「この少女が聖女であるかどうか? ようは使いものになるかどうかを調べて欲しい」

 高級感のある封筒の横に置かれたのは、一枚の紙。

 一人の少女の身辺調査表か……つまり、この少女が聖女の可能性が高いのね。ん? この制服? 聖女……? そういえば、ずっと前にユリアの会話に出てきた気が……

「その、もの凄く嫌そうな表情は、可愛いアキには似合わないぞ。気持ちはわかるが」

「アキはどんな表情でも可愛い」

 ケイ兄さんがすかさず訂正する。

「相変わらず、シスコンだな。それで、受けてくれるか?」

「……学年が違ううえに、がっちり、王族とゲンジュ公爵子息を含む高位貴族と神殿に護られている人間に、どう接触しろと? ましてや、敵認定されてる私が」

 まず、無理でしょ。というか、まだ聖女が神罰を解いてくれてるって考えているの?

 私は身辺調査表を確認しながら言った。

「遠目からステータスを確認してくれたらいい」

「それなら、私に無理に頼まなくても、他の人にもできるでしょ。実際、冒険者が講師として学園に行ってるわけだし」

 鑑定魔法を使える人は珍しいけど、いないわけじゃない。このギルドにも何人かいる。ギルマスが知りたいのは属性魔法のレベル。それくらいなら、それほど高い鑑定魔法のレベルは必要ないはず。
 
「それがな……どういうわけか、あの聖女候補の取り巻きになってしまってな……」

 ギルマスはとても言いにくそうに言った。

「はぁ!? なにやってるんですか!?」

 ギルマスを責めても仕方ないけどね。

「魅了のスキル持ちなのか?」

「いや、捕まえた時点では魅了はかかっていなかった」

 ケイ兄さんの問いにギルマスは答える。

「……つまり、聖女候補側に冒険ギルドの思惑が筒抜けになったわけですね」

 頭を抱えるわ。

「ああ。まだ魅了のスキルの確認ができていないから、完全に魅了がかかっていなかったとはいえないしな……それを考えると、別のやつを送り込めなくてな」

「そもそも、こんなに護られている人が前線に立つわけないでしょ。魔物討伐さえしたことないんじゃないですか? せいぜい、治すとしても、取り巻きたちの擦り傷程度でしょ。調べる必要あります? それとも、神罰が解けるとでも思ってます?」

 聖女は神聖魔法の属性を持つ者――

 神聖魔法は治癒魔法と浄化魔法に特化した属性だ。冒険者を治し、魔物を浄化し消し去る。冒険者ギルドに欲しい人材であって、神殿で保護されるべき者じゃない。神への祈りが力を引き上げるとは聞くけどね。

 もし神聖魔法のレベルが高ければ、数年に一回あるスタンピードに強力な武器になる。だから、冒険者ギルドは、どうしても確かめたいんだろう。

「俺も正直、役に立つとは思えない。そもそも、冒険者すらならないだろうな。それでも、放置はできない。最低限は確認しないといけないだろ? あと、夢見るのは自由だ。それで、頼まれてくれるか?」

 ここまで言われたら頷くしかない。ギルマスには色々迷惑かけてるからね。

「仕方ないですね。通常価格の二倍の価格で受けます。それで、これが入学案内ですか?」

 学園に通う可能性が高いと、内心思ってたからね。だって、まだあの男は私を貴族籍から抜いていない。

「ゲンジュ公爵家から送られてきた」

 私は封筒を受け取ると裏返す。確かに、ゲンジュ公爵家の印が押されている。溜め息を軽く吐いてから開封した。

 中には、入学案内と受験票が入っていた。



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