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第一章 死亡フラグ回避のために冒険者を目指します

ステータス

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 一か月で五階層。
 
 二か月で十階層。

 その次は、難易度が上がって三か月目は十三階層到達が課題となった。最終的に、五か月で最終階層を到達することができたよ。合格点かはわからないけど、かなり魔法操作の精度をあげることができたと思う。

 このダンジョンは主に罠が主体で、魔物はほとんど出没しなかった。その罠もなかなかエゲツいものばかりで、かかればまず即死。かからないようにするのは当たり前だけど、かかった時に如何に罠を回避できるかが問題となる。

 この時になって、ニノリスさんが言っていた、魔法操作の精度を上げるって意味を身体の芯から理解したよ。数え切れないくらい死んでからだけどね。ニノリスさんもそうだけど、誰も理由を教えてくれない。自分で考えて気付けってやつ。ほんと、何から何まで実践形式だよね。徹底してるわ。

 そして理由に気付いたと同時に、その必要性にも気付いたの。

 それは三階層を進んでいた時だった。魔力操作での強化は、慣れるまで精神力と体力を消費する。だけど、魔力は消費していないことにね。

 魔法の中には、自分の身体を強化するものがあるわ。実際、パーティーを組んでいる冒険者たちの中には、補助魔法が使える魔術師を仲間にしていることが多いし。魔物討伐の時は、身体強化、物理攻撃や魔法攻撃を軽減する魔法などをアタッカーたちに付与して戦ってるしね。

 だけど、魔力操作の精度を上げれば、魔物討伐の時、常に補助魔法をかけている時と同じ状態を維持できる。魔力を消費することなくね。訓練次第では、長時間維持できるようになるし。それって、普通に考えて凄くない!?

 特に、ソロで行動するだろう私には必要になってくると思うの。私の目のことと素性のせいでね。まぁでも、自分の性格はパーティー向きじゃないけど。それに、私はSランクを目標にしている。パーティーを組んでチンタラしている時間もないしね。そんなことも考慮して、たぶんニノリスさんは訓練を組んでくれたと思うの。ほんと、ニノリスさんって凄い人だよね。

 五か月で制覇できたんだけど、残り二か月は訓練場での実戦形式の訓練を行ったの。実際に剣やナイフや暗器などを触らせてもらった。それぞれの武器の握り方を教えてもらってからは、ほぼ実戦形式だったかな。魔力操作の精度を上げてるから、普通に振るえるし投げれる。一応、私まだ六歳児なんだけどね……

 あとは魔法の訓練かな。

 でもその前に、いそいそとユリアが出していたのは、二十センチほどの水晶玉。

「アキ、手をかざしてみて」

 ニノリスさんに言われて、何も考えずに手をかざした。

 すると、水晶玉が光り、消えたと思ったら空中に黒色の分厚い本が浮かんでいた。

 ニノリスさんに視線を移すと、小さく頷かれた。触ってみろってことよね。

 恐る恐る手を伸ばすと本特有の感触がした。閉じていた本がひとりでに開きパラパラとめくれる。あ然としながら見ていると、すぐに止まった。そのあと、開いたページを投影するように空中に文字が浮かんだの。

 私の名前に性別、そして年齢を先頭に、HPとMP、使える属性魔法が書かれていた。これって……

「アキ、これがステータスだよ」

「ステータス……?」

「今の自分のすべてが書かれている。この場にいる人には見せてもいいが、ほかの場所では安易に開くなよ。開き方は口に出しても出さなくてもいい、ただ一言、〈ステータス〉と唱えれば見ることができる。経験を積めば、ほかのページも閲覧できるようになるよ。そして本の色は、一番強い属性魔法によって変わってくる」

 私の本の色は黒――

「つまり……私の一番強い属性魔法は闇魔法ってことですね」

 ステータスにも一番上に濃い字で書かれていた。たぶん、濃い字で書かれた魔法が適性があるってことだよね。なら私は……

「これは凄いね。神聖魔法以外、すべての魔法に適性がある。知られると厄介だな……それにこの魔力量。絶対、なにか仕掛けてくるな。ケイを呼んで対策を立てるか……」

 難しい表情をしながら呟くニノリスさん。

 この世界の魔術師が適性する属性は一つから二つ。熟練者になれば適性以外の魔法を使えるようになるけど、威力は適性者の三分の一くらい。そんな中で、私は五つの魔法に適性があった。闇魔法の次に書かれている属性はグレーの文字。これは使えないってことだよね。あとは……魔力量の最大値は三千を越えていたの。

「宮廷魔術師の団長クラスで魔力量はせいぜい八百前後、属性も二つしか持っていませんから、アキ様はすべてにおいて桁外れですね」

 キリトさんが珍しく弾んだ声で教えてくれた。桁外れって言われても、実感ないな。まぁでも、闇属性持ちは納得だけどね。

「……ニノリスさん、魔力測定の儀でステータスは表示されるんですか?」

 ふと、気になって訊いてみた。

「いや、たんに魔力測定だけだよ。属性は、学園の入学時に調べられるね。でもまぁ大概は、学園入学前に個人で計るかな」

「それは、主に貴族ですよね」

 平民の魔力は一般的に貴族より低いからね。騎士や宮廷魔術師、冒険者を目指さない限り計ることもないと思う。学園に入学する子は別として。

「そうだね」

「なら、属性と魔力量は隠さなくてもいいのでは?」

 あくまで、私個人の意見だけどね。保護者がどう思うかはまた別の話。

「そこらへんの話は、ケイがきてから詰めようか」

 ニノリスさんの言葉でこの話は終わった。

 一週間後くらいに来るかなって思っていたら、その日の深夜、私が寝ている間にケイ兄さんはやってきた。

 ……早すぎない。
 
 
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