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第一章 死亡フラグ回避のために冒険者を目指します
いよいよ、魔力操作の訓練です
しおりを挟むキルトさんの仕事は完璧だったよ。ほんと、五か月で三段階まで進むことができた。その間、私の黒歴史が増え続けることになったけど。ある意味、精神面も鍛えられた五か月だった。
残りの一か月は身体を休めるつもりだったけど、そんなことニノリスさんが許すもなく、ボロボロのまま魔法操作の授業が始まった。
鬼が……鬼が二人いたよ…………
魔法具を日々使用しているから、魔力は感じることはできる。でも、魔力操作となったら話は別なの。
魔術師の卵がまず習うのが魔力操作。
それができないと魔法は使えない。暴発することがあるからね。
つまり、魔術の基礎中の基礎が魔力操作なの。魔術師のレベルが知りたければ、魔力操作を見ろって言われてるほど、魔力操作は大事なものよ。
だから、魔術師を目指す者は魔力操作に時間を注ぎ込む。前に、ニノリスさんが三年かかるって言ったのはそこなの。
「魔力操作の重要性を今さら解く気はないから、実践形式で始めるよ」
にっこりと微笑みながらニノリスさんが告げる。
すっごく楽しそう。でも、なぜダンジョンなの? ていうか、ドアを開けた先がダンジョンってなに!? 物凄く嫌な予感しかしない。
「……というと?」
「次の課題は、一か月でこのダンジョンの五階層まで制覇すること」
えっ!? この人なに言ってるの!?
あまりの衝撃に言葉を失ったよ。
「大丈夫、死にはしないから。あっでも、痛感はあるよ。痛い目にあいたくなかったら、自力で魔力操作の精度をあげてね」
ますます、言ってる意味がわからない。
「自力でって……魔力操作の方法習ってないけど……」
訓練場では体力と体幹を鍛えただけだよ。
「気付いてないの? アキ。あの訓練場はただの訓練場じゃないよ。アキは体力と体幹をアップさせるのが目的だと思っていたみたいだけど、それだけじゃない。実際、筋肉バカの冒険者があの訓練場で普通に立てることは不可能だからね」
おかしそうにニノリスさんは言う。
「どういう意味ですか?」
「魔力操作は、魔力を制御しコントロールするのが一般的な考えだけど、それはあくまで一面でしかない。魔力を身体全体に均等にいきわたさせることができれば、多少の攻撃は無傷で防げるし、拳や足に魔力を流せば高い攻撃力と逃走につながるよ」
そう言いながら、ニノリスさんは実践して見せてくれた。
始めは身体全体に、そして次は拳に。薄い膜のようなものが自由自在に姿を変えている。綺麗だと思った。
同時に、簡単にニノリスさんはして見せてくれることが、どんなに凄いことなのか、今の私にはわかる。肌で凄さを感じたのかな、背中に悪寒が走ったよ。
「……つまり、体力アップのほかに、最低限、全身に魔力をいきわたせることができたから、三段階まで進めたってこと?」
あの訓練場の訓練にそういう意味があったなんて……全然気付かなかったよ。
「そういうこと。それじゃ、頑張って。さっきも言ったけど、死にはしないから安心してね。気絶したら、スタート地点に戻れるように設定しているから、体力気にせずにドンドン進んでね」
「えっ!?」
今まで一番良い笑顔で、ニノリスさんは私の身体をポンと押した。ニノリスさんの手には、肌身はださず着けていたネックレスが握られていた。
ユリアは無表情のまま手を振っている。
魔力操作訓練、第二段階開始です――
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