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第一章 死亡フラグ回避のために冒険者を目指します
体力アップの訓練開始です
しおりを挟む正式に、ニノリスさんが教えてくれることになって四日目。
私は体力アップのために走り込みと体幹を鍛える訓練を続けていた。ニノリスさんも仕事があるから、常に私の講師をしてくれるわけもなく、主に執事のキルトさんが私の相手をしてくれている。テストの時にユリアと一緒に後ろで控えていた人だ。
特に課せられる課題は難しいものじゃないよ。無茶振りもされていない。
なのに、なんでこうも何回も気絶してるの!? 私、この屋敷にきてから何回気絶した? もう、軽く十回は越えてるわね。訓練場を三週走るだけだよ!? 子供の私でもできることだよ、普通ならね。でも、このざま……もしかして、訓練所自体にカラクリがあったりして、まさかね……
身体が鉛のように重い。指一本動かすのも辛い。だから、立ち上がれなくて倒れたままが悪かった。
「そのまさかですよ、アキ様」
動けない私に、覆い被さろうとする体制でユリアが答えた。
「近い!! 離れて!! えっ!? 口に出してた?」
なんとか、腕を伸ばしユリアと強制的に距離を取る。
「いえ、アキ様は顔に出ますので。それにしても、なにを照れていらっしゃるのですか、私にすべて晒しているのに」
その台詞に、全身カッと熱くなったよ。火事場のクソ力ってこのことをいうのかな、起き上がれて、ユリアの魔の手から逃げ出すことに成功したよ。ほんと、優秀なのは見てればわかるけど、性格にかなり難有りよね!! 一応主である私をからかって遊んでるんだから。
「変な言い方しないで!! 動けなくて意識がなかった私をお風呂に入れてくれただけでしょ!!」
その事実だけですでに黒歴史なのに!!
「はい。この手で隅々まで洗わせていただきました」
「言い方!!」
過剰な反応をするから、からかわれるってわかってはいるんだけど……のせられて反応してしまう。そんな中、静かに声を発したのはキルトさんだった。
「先ほどのアキ様の疑問ですが、この訓練場は普通の訓練場ではありません。強制的に負荷がかかるように設定されております。今は一番軽いものですが。そもそも、一年足らずで冒険者としての基礎体力を身に付け、そして魔力操作を覚える。最低、早くて三年はかかることを一年で習得しようとしているのです。普通の方法では不可能だと思いませんか」
ユリアの代わりにキルトさんが教えてくれた。口調は柔らかいけど、芯はゾッとする冷たさがある。ニノリスさんとは違う冷たさだ。
彼は私を見てにっこりと微笑む。
キルトさんの言う通りだ。ほんと、今さらだけどニノリスさんってスパルタだよね。でも、無理を言ったのは私。我が儘を貫いたのも私。優しいニノリスさんは忙しい中親身になって、私の願いの手助けをしてくれている。なら、やり通さないとね!!
「確かにそうですね。それで、合格点は何段階目ですか?」
「あと、三段階は越えてもらわないといけませんね。ちなみに今は、一段階にもきていません」
キルトさんは優しい言葉をかけてはくれないけど、嘘は吐かない。大袈裟なことも口にはしない。訊けば、答えれる範囲で事実をちゃんと教えてくれる。
「魔力操作を学ぶ時間を考えたら、この課題、何か月でクリアすればいいの?」
「半年ですね」
「最低で?」
正直、猶予があるのかないのかわからない。でも、期限があることにはかわりはないわ。
「はい」
「なら、五か月でクリアできるように組んでもらえませんか?」
「理由を伺ってもよろしいですか?」
そう希望するとキルトさんが訊いてきた。
「戦意喪失のボロボロの状態で、魔法操作を学べるとは思えないから。それに、今の訓練がスムーズにいくかどうかもわならないでしょ。途中で熱や怪我のせいで訓練を休むことを考えたら、一か月の猶予が欲しいかなって……無理ですか?」
「畏まりました。そのように組みましょう。ただ……厳しいものになることはご理解ください」
わざとじゃないよね。ただって言ってから、間をおいたの。自分からお願いしたのに、ちょっと後悔してきたよ。
ガクブルと震えている私の背後に、いつの間にかユリアが身体を屈め耳元で囁く。
「私のご褒美が増えますね。ありがとうございます、アキ様」
私、はやまったかも……
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