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第一章 死亡フラグ回避のために冒険者を目指します
どうやら、異世界転生したようです
しおりを挟む私はたぶん異世界転生したんだと思う。
いや~断言できないのは自信がないわけじゃなくてね……はっきりと覚えていないからなの。
うっすらと覚えているのは、魔法の代わりに科学が支配する平和な世界で生きていたこと。そして、進学校に通う陰キャだったこと。陰キャといっても、別にオタク活動はしていなかったわね。あとは……女だったことぐらいかな。容姿は覚えてないわ。あっ、誰かにアキちゃんって呼ばれていたわね。
ほんと、これといって、役に立ちそうな記憶はないわ。記憶があったとしてもラノベのように、それを再現する頭も知識もない。そこにあって当然だったからね。
だからかな、夢の延長線上的な感覚で前世の記憶を捉えている。そのおかげで、今まで特に混乱したり、高熱を出して寝込んだこともなかったわね。そもそも、記憶の中にある知識が、この世界で役に立ったことなんて何一つないし。正直、あってもなかってもどちらでもいい、そんな程度かな。
とはいえ、ここに私がいるってことは死んだってことだよね。死因は何なのかな? ベタにトラックにでも轢かれた? 病気ではなかったと思うけど。まぁ気にはなるけど、今はそれどころじゃないわ。生き抜くために必死だからね。
そう――
ここは、異世界。
科学の代わりに魔法が主流の世界。
魔力の有無と量で一生が決まる無慈悲な世界。
そして、王都や町、村の外には魔物や野盗が普通に存在している世界。内も同じようなもの。一本道を外れたら、人攫いにあって奴隷にされる世界。
この世界は常に危険に満ちている。死と隣り合わせの世界なのだから。
五年前、私はその世界に生まれた。
ゲンジュール聖王国、ゲンジュ公爵家の長女アルキアとしてね。
一応、お父様と呼ばれる人が王弟らしいから、他の公爵家より、高い地位にあることは簡単に想像できるよね。
でもね、私はお父様の顔を知らないの。もちろん、お母様の顔もね。重ねて言えば、二人いるお兄様の顔も妹の顔もね。たぶん、妹は私の存在すら知らないんじゃないかな。私も知らないし。興味もない。
そもそも、彼らと住んでいる場所が違うから仕方ないよね。
彼らが住んでいるのは本宅。
反対に私が追いやられたのは、離れの中でも一番遠い場所。
本宅まで徒歩三十分は有にかかるもの、遠いでしょ。死罪にできない罪人を閉じ込めていた場所でしょうね。ボロくてその役割を果たせてないけど、窓には鉄格子の名残があるからね。
そんな離れに私は捨てられたの。
そこまで言えば、容易に想像できるよね。生まれて直ぐに捨てられたって。
理由は、赤い瞳を持って生まれてきたからという馬鹿馬鹿しいものだった。
赤い瞳は魔族の証――
他国も忌み嫌うけど、聖王国では特に酷かった。
普通に考えてみれば、人族同士の婚姻で別種族が生まれるわけないじゃない。それこそ、魔族と浮気しない限りね。突っ込みどころ多過ぎるよ、この世界。考えるのを放棄したのか、それともただただ盲信しているのか、どちらにせよ、私にはとても生きにくい。
無慈悲で不条理な世界――
ラノベ風に言えば、生まれた瞬間に死亡フラグが立っていたってことね。
可能性は限りなく低いけど、親であった彼らに細やかな情があったからなのか、ただの気まぐれか。それとも、間接的に私を消そうとしたのか。はたまた、生かす理由があったのかはわからない。わからないけど、幸運にも私は生きている。
乳母のジュリア一人付けられてね。ジュリアにはケイっていう十二歳年上の一人息子がいてね、私は実の両親ではなく二人に大事に育てられたの、愛情いっぱいにね。
それでも、私を取り巻く現実世界はとても厳しい。死亡フラグも立ったまま。
それでも私は、如何なる場面でも、私らしく胸を張って生きていきたい。このまま死んだら悔しいじゃない。
これが、私なりの世界に対する宣戦布告よ!!
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