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お仕置きの反動は激甘でした

第一話 糖分過多は身体に悪いです

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「……シオン様、今私は仕事しているのですが」

 この台詞、何回口にしたでしょう。

 お仕置きが終わってからのシオン様が痛すぎます。謎のスキルを身に付けてからは、休みの時間がまとまって取れたら、私の所に転移魔法でやって来ます。まぁそれは、私もしていたことですから、特に文句は言いません。その気持ちも嬉しく思います。

 ただ、私は引っ付いたりはしてませんよ。節度は守ってます。人間椅子になったりはしません。なのに、なのに、シオン様は――

「偉いな、セリアは」

 よしよしと、シオン様は頭を撫でてくれます。

「頭を撫でて欲しいわけではありません!! 側近や文官たちの目を見てください!! 彼らの生温かい、死んだ魚のような覇気のない目を!!」

「怒ったセリアも可愛いな。別にいいじゃないか? 俺たちが仲がいいことは良いことだろう。訊くが、お前たちは困ってるのか?」

 威嚇しないでください。

 コンフォートの守護神にそう訊かれて、首を縦に振る方がいるわけないでしょ。全員、首を横に振ってますわ。

 こうなる前に、ちゃんと対策は打っていたのですよ。結界魔法を三重に掛けて、入って来れないようにしてました。

 しかし、あの謎スキルは魔法を華麗にスルー。何重に重ね掛けしても徒労とろうに終わりました。

 シオン様が使える転移魔法は、私の元に移動するというものです。通常の魔法のように、他の場所に移動することはできません。

 お祖父様に訊いてみると、「そんなスキル始めてだぞ。よほど、お仕置きが堪えたようだな」と爆笑されましたわ。お祖母様には苦笑され、心から同情されました。

 つまり、番と共にいたいのに、自分の不注意のせいで番を怒らせ、お仕置きのせいで我慢に我慢を重ねた結果、謎スキルを習得したようです。

 拗らせた末、生まれたスキルって……

 正直、そこまでシオン様が私を求めてくれるのは嬉しいことですし、幸せですわ。顔がにやけそうになりますわ。でも、限度があります。限度が!!

 糖度が高すぎるのです!!

 無意識かもしれませんが、膝に乗せただけでなく、何処か触れてくるのです。今は、右手が腰を抱き、左手は私の頬に。そして隙あらば、匂いを嗅いでくるのです。

 これで集中できますか!?

 できませんよね。

 というわけで、最終兵器突入です。

「お母様、助けてください!!」

 私のストーカーをしているお母様ですから、十中八九、私を見ているはずですわ。

「セリア!!」

 シオン様が慌てます。

「嬉しい!! セリアが私を呼んでくれるなんて!! それで、どうしたの? ああ、わかったわ。これを隔離すればいいね」

 言わなくても、ひと目見て理解してくれるお母様、頼りになりますわ。

「私が迎えに行くまで、よろしくお願いしますわ。砦と魔の森から出られないようにしてくれると助かります」

「任せて」

 お母様が指をクイッとさせただけで、シオン様が宙に浮いてます。

「セ、セリア!!」

「数時間の我慢です。晩御飯は一緒に食べましょうね」

 私は満面な笑みを浮かべながら、手を振って送り出しました。

 
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