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今度は学園外にアレが発生したようです
第二十二話 夜空に咲き乱れる花
しおりを挟む一週間、盛大に開催されたコンフォート皇国皇帝陛下の生誕祭は、まもなく終わろうとしています。
何事もなく終わりそうで、ホッと胸を撫で下ろしてますわ。あとはフィナーレだけですね。
毎年フィナーレには花火が上がりますの。国民は皆、それを楽しみにして夜空を見上げています。
生誕祭が始まる前にいなくなった者たちなど、始めからいなかったように、誰もが気にも止めていません。
あくまで、表面上は――
でも、知っている者は知っています。我がコンフォート皇国で問題を起こした者の末路を。見せしめに近いですが、これでいいのです。皇国の威厳は保てられましたからね。
まぁ、最後の最後で少しやらかしてしまいましたけど。
最終日に行われたパーティーで、私はシオン様が用意してくれた緑のドレスを着て参加しました。そして約束通り、私はシオン様と三回踊り、皆に苦笑されましたわ。ゲストを放り出して楽しんでいましたから。皇女としては駄目ですね。
でも、いいですよね。これくらいの我が儘は許してくれないと、やっていけませんわ。たまには、ご褒美もほしいのです。
今も、パーティー会場を抜け出してますし。シオン様は私の肩を抱き寄せ、花火を待ちます。
「今年の花火は凄いらしいな」
楽しそうな、シオン様の声。
寒いだろうと、上着を肩に掛けてもらってから抱き寄せられているので、シオン様の匂いに包まれて、心がほんわかと温かくなります。
「ええ。お父様が参加したらしいですよ。お母様の大好きな花を贈りたいそうです」
「自分の誕生日なのにな。あ~結局、この前の伝言、どうなったんだ?」
「花は受け取ったらしいですよ。でも、プレゼントは受け取ってもらえなかったらしいです」
たぶん、お母様も見ているでしょう。今回は自信作だそうですから。
「時間だな」
シオン様がそう告げると同時に、ドンという大きな音がしました。
そして数秒後、夜空いっぱいにピンクの花が咲きました。濃淡の違うピンク色、一色です。
感嘆の声さえも出ないほどの衝撃でした。
「……圧巻の美しさだな」
「ええ。お母様の母国の花だそうですよ。昔、お弁当を持って、よくこの花を見に出掛けそうです。夜も友だちや家族と宴会をしたとか……」
「あいつ、母国を思い出すものは嫌がっていたのにな」
嫌がるなんて可愛いものではありませんでした。花火も一時は中止にしようとしていたくらいですからね。さすがに、民の声は無視できなかったので、中止にはなりませんでしたが。
「お母様に離婚されて、色々考えることがあったようですよ。まぁ、根本的な所は変わらないと思いますけどね」
「変わる努力をするだけ成長したよ」
確かにそうですね。
「ところで、シオン様、この花火が終わったら生誕祭も終わります。なので、約束通り、お仕置きを再開いたしますね。あと、八日間、頑張ってくださいね」
私はそう言い終えると、ショックを受け落ち込むシオン様の唇を温めてあげました。
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