婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
336 / 342
今度は学園外にアレが発生したようです

第十九話 暗殺者ギルドに突入しました

しおりを挟む

「へぇ~まさか、暗殺者ギルドの入口が廃神殿の礼拝堂とはね……考え付きもしませんでしたわ」

 私がそう呟くと、抱えている暗殺者さんの身体が一瞬ですが、強張りました。

 正解のようですね。

 それにしても、高い教育されているのか、素直に戻らず、あえてかなり遠回りをし、地下道にも潜って移動していたようですけど、全部無駄に終わりましたね。

「驚いたようですね。私には貴方がたよりも優秀な暗部がいるのですよ。当然でしょ。私はこの皇国の第一皇女ですよ。そして、この地の領主です」

「…………」

「さて、行きましょうか」

 イヤリング型の魔法具から連絡を受けた私たちは、転移魔法で廃神殿に向かいました。

 到着すると、残りの二人を追尾していた者たちと合流しました。スミスに人選を任せていましたが、私の専属侍女とは。なかなかナイスな人選ですね。

 私が頷くと、侍女の一人が祭壇の板の裏に手を伸ばします。

 カチャという音がすると、そのまま床板に手を伸ばします。どうやら、ここから入るみたいですね。なんか、ワクワクしてきましたわ。

「……まさかと思いますが、セリア様、楽しんでいませんか?」

 スミスの声がやや低いです。

「少しだけ」

「今から暗殺者ギルドの本部に乗り込むというのに……」

 溜め息混じりに言われましたわ。

「緊張してガチガチよりはマシですよ、スミス様」

 仕掛けを解いた侍女が助け舟を出してくれました。もう一人の侍女は、私の荷物を代わりに持ってくれます。持つというよりは、引きずってますけどね。

「言葉遣いが悪いですよ」

 冷たい声で、同僚をいさめます。いつも通りの展開ですね。ほんと、良いコンビですわ。

 侍女二人が先行して地下に潜ります。

 大丈夫そうなので、私とスミスも地下へ。床板を戻すと、カチャと音がし鍵がしまりました。

 私は探知魔法ではなく、気配察知のスキルを使い、地下の様子を探ります。

 探知魔法は魔力を周囲に張り巡らせ探る魔法なので、範囲によりますが、それなりに魔力は使います。その反面、スキルはそれほど魔力を使いません。代わりに、制限が掛かっていることが多いです。回数であったり、範囲であったり。私の場合は範囲ですね。でもこれくらいなら、気配察知で十分です。

 それに、魔力探知の魔法具を暗殺者ギルドが使用していたら、探知魔法を使った時点で、皆さんにバレて逃げられる可能性がありましたから。

「……それほど、奥にいませんね。でも、地下にこんな大きい空間があったなんて知りませんでした」

「貯蔵庫にしては広すぎますね。ダンジョンの名残りでしょうか?」

「たぶん。廃ダンジョンの地下と繋げてるようね」

 ほぼ声を出さずに話す私たちを見て、捕まっている男が驚いてます。

「驚きました? まさか、皇族の姫が暗部の訓練を習得してるなんて思いもしませんよね」

 この訓練、リムお兄様は受けてはいません。お兄様は政、表で生きる人間。

 でも私は、魔物討伐をする、いわば汚れ役。

 暗部の訓練は必要不可欠でした。シオン様の剣術と同時に、スミスから暗部の訓練も受けていたのです。つまり、スミスは私の師の一人ですね。

「バラバラに配置されていなくてラッキーでしたね」

 先頭を歩く侍女が言います。

「とりあえず、私と侍女で中に入るから、あとの制圧お願いするわ」

「「畏まりました」」

 その返事と同時に、二人の姿は消えました。

「では、開けましょうか」

 私は声を出して、侍女に告げます。侍女が頷き、扉を開けました。

 突然の来訪者に驚愕する、暗殺者たち。

「こんばんは。私、セリア・コンフォートと申します。深夜ですが、お邪魔しますわ。暗殺者ギルドの皆様方」

 挨拶しているのに、せっかちですね。一斉に攻撃を仕掛けて来ました。

 でも、届かないですよ。届くわけないでしょ。貴方がたが相手にしているのは、大陸一と噂されている、最強の暗部軍団なのですから。

「――さて、落ち着いた所で、話をしましょうか。貴方がたの今後の話を」





☆☆☆

 最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 新連載スタートしてます。

 タイトルは〈幼馴染と義妹、合されば最強だと思いませんか? 悪い意味で〉です。

 鋼メンタルの伯爵令嬢が、お花畑の親たちと婚約者、そして、婚約者の義妹たちを捨て、自分の居場所を掴み取る物語です。

 これからも、頑張って書いていきますね。

 
しおりを挟む
感想 775

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです

珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。 ※全3話。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。