婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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今度は学園外にアレが発生したようです

第十七話 因果応報ですね

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「ご苦労さま、スミス。早かったですね?」

 スミスが席を外したのは十分程度です。もう少し掛かると思っていたので、思わず尋ねてしまいました。

 スミスのことだから、一日歩いて国境に辿り着くだろう場所に、あえてやつらを放置し、しばらく監視すると思っていましたので。

「はい。事前にセイラ様のご指示があり、国境まで送り届けました。なので、監視する手間が省けました」

「お母様の指示?」

 忘れてたわけではないみたいですね。私が知らないうちに、全く。

「元竜神の巫女一行を、わざわざ迎えに来られる奇特な方がいたそうで」

 あのお荷物を? とんだもの好きですわね。

「それ……絶対、ドリアーヌ帝国ではありませんよね?」

「さぁ、私には。ただ、全身真っ白な衣を身にまとっておいででしたよ」

 しれっと答えていますが、当然、迎えに来た者が何者かわかっているはず。それで、この反応ですわ。

 お母様、聖教会に密告しましたね。昔、縁があった場所ですからね、月日は流れてもお友達がいるのでしょう。

「……なかなか、えげつない手を」

 一番ダメージを与えられて、つ、一番確実な処理方法ですわ。元竜神の巫女一行がどうなるかわかっていて、お母様は密告したのですから……ほんと、怒らすと怖い方ですわ。

「えげつないって、嫌な言い方止めて。私はただ、新しい就職先と定住する場所を提供しただけよ」

 私たちのやり取りを隠れて聞いていたのか、お母様はタイミングよく現れ、私の背中に張り付きます。ここで、重たいと振り払うと、ねるので、ある程度満足するまで放置ですわ。

「就職先って……」

「セリアって、ほんと優しいよね。罪人なんだから、それなりの就職先になって当たり前じゃない。生きてるだけでもマシよ」

「そうですけど……お母様、彼らはすでに罪を清算してますからね」

「呪印のこと? まぁあれだけ、でかでかと印が施されたら、人としては生きていけないわ。どっちにせよ、迫害されて生き恥をさらすのは間違いないんじゃない。似たりよったりよ。でも、うけたわ。まさか、七代先までの呪印なんて。どんな悪さをしてきたら、そこまで罪が重くなるのよ。結構な人を殺めたって言われてもおかしくないわよ、あれ」

 まぁ確かに、お母様の言う通りですわ。儀式の後で、黒衣の神官に尋ねたら、同じようなことを言われましたから。

 ただ……お母様と違うのは、黒衣の神官は罪なき弱き者を大勢と言ってましたね。その割には、彼らの身体から死臭はしません。となれば、だまして死に追いやったのでしょう。直接手を下してないか否かは、人の法。神の法とは違います。

「……因果応報ですね」

 自分がやったことは、いずれ必ず戻って来ますわ。

 善行も、悪行も――

「そう、まさに、そう。で、セリア、貴女を付きまとっているあいつらとは知り合いなの?」

 お母様の声が途中から低くなります。

「知り合いではありません。でも、動機に心当たりはありますね」

 収監所から出て来たと同時に、私の監視を始めましたね。全員で五名。結構な人数いてますね。当然、気付いてますよ。

「新しくコンフォート皇国の民になった平民が関わってる?」

 相変わらず、地獄耳ですわね。

「ええ、アルセイの元主の関係者の手のものですわ」

 領地の経営をしていると、それなりに敵はできますけど、さすがにプロを雇いいれるとなれば話は別です。すぐに私に報告がきますわ。

「まさか、セリアを誘拐しに!?」

 そう言われて、思わず笑ってしまいましたわ。

「この私を誘拐ですか? それほどの実力があるなら、人に雇われたりしませんよ。ソロで活動します」

「ま~確かにそうよね。それで、どうするの?」

 やけに、ウキウキした声でお母様は尋ねます。

「何を期待しているんですか? 何もしませんよ。放置です、放置」

「えっ、何もしないの~。ほんと、セリアって放置プレイ好きよね」

 お母様がそう言った時です。隣で、クラン君が吹き出していました。スーと静かにスミスは移動し、クラン君の後ろに立ちます。クラン君、冷や汗が吹き出してますわ。

 今晩、補習を受けることが決定しましたね。

「こちらから手を出したら負けですよ。罠が掛かるまでじっと待ちましょ」

 すぐに掛かると思いますから。



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