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今度は学園外にアレが発生したようです
第十話 仮眠をとる時間もありません
しおりを挟む「お母様、お父様からの伝言ですわ」
お父様と口にしただけで、お母様は露骨に嫌な顔をします。無視を決め込んではいますが、逃げ出さないところを見ると、気にはなるのでしょう。
ほんと、素直ではありませんね……
特に、憎み合って別れたわけではないですから。
ただ、お父様の思考に付いていけなかっただけです。いや……拗らせた想いに付いていけなかった方が正しいですね。
お母様が一番大切にしているものを、悋気から、お父様が自分の手で壊そうとしたのが原因です。
その瞬間、お母様はお父様をきっぱりと切り捨てました。今も許してはいないでしょう。なので、夫婦に戻ることはないと思いますが、微妙な距離感で付き合っていくつもりのようですね。
「窓辺にプレゼントを置いている、とのことですわ」
プレゼントの内容は内緒ですわ。
「セリアに渡さなかったのね」
「私が受け取らなかったのです。あれは、お父様からお母様に渡すべきものですから……とはいえ、直接手渡しは無理でしょう。ですから、窓辺に」
ちゃんと伝えましたわ。取りに行くか行かないかは、お母様自身が決めることなので、私ができるのはここまでです。
「…………わかったわ」
お母様はボソッとそう告げると、どこかに行ってしまいましたわ。
「あっ、三日後に呪印の刑が行われること伝え忘れましたわ」
それをお知らせしたくて、お母様を呼んだのに。
「特に問題はないでしょう。セイラ様ですから」
スミスの言葉に私は頷きます。
「確かに。では、私は保健室に行ってきますね」
目を覚ますにはまだ時間が掛かると聞きましたが、時間があれば様子を見るようにしています。話さなければならないことが色々ありますからね。
「先生、お仕事中、申し訳ありません」
静かにベッドに近付き、カルテを書いている先生に声を掛けます。
「大丈夫ですよ。セリア皇女殿下もお疲れのようですね。寝ていないのでは?」
「私は大丈夫ですわ。一日寝なくても平気です」
魔物討伐の際は、不眠不休が当たり前ですからね。一日や二日、寝なくてもどうってことはありません。
「駄目ですよ。難しいと思いますが、ちゃんと寝ないと」
怒られてしまいましたわ。わかってはいるのですが、問題が起きるとなかなか寝る時間が取れなくて……言い訳になりますね。
「そうですね。時間が取れれば、少し仮眠を取りますわ。それで、彼は?」
「容態は安定していますので、ご安心を」
大丈夫だとわかってはいても、ホッとしますね。顔色も良いですし。深く眠ってますね。よほど、精神と肉体に負荷が掛かっていたのでしょう。
「……先生、しばらく先生に警護を付けたいと考えています。不自由だと思いますが、しばらく我慢して下さい」
念のための処置ですわ。
彼を罪人にした場合、まず間違いなく、引き渡しを申し出てくると考えられます。当然、拒否しますけどね。
学園は許可した者しか立ち入ることは許されていません。例え、高位貴族であろうとも無理です。なら、彼に近付ける者を狙い、もしくは脅し、彼を外に連れ出そうとするでしょう。
一番に狙われるのは医師である先生ですね。
希望としては、ことが終わるまで学園に宿泊してほしいのですが、医師である先生にはそれは難しいでしょう。先生を待っている患者が大勢いますからね。それを無視して学園に留め置くことは、民の反感をかいますし、私の我儘でしょう。
「仕方ありませんね」
溜め息を吐きながらも、先生は許可してくれます。
「本当に助かります。ありがとうございます」
騎士団長から二人回すように指示を出しています。あと、暗部からも二人ほど出しましょう。絶対に怪我をさせるわけにはいきませんからね。
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