325 / 342
今度は学園外にアレが発生したようです
第八話 高位貴族だからといって例外はありません
しおりを挟む「俺に、こんなことをして許されると思っているのか!!」
侯爵子息をかわきりに、口々に汚い言葉を吐き捨てるお仲間たち。いっせいに怒鳴るものですから、何を言ってるかわかりませんわ。
まぁ、今の状況に文句を言っていることはわかりますけどね。……それにしても、貴族籍がある者が犯罪を犯すと、皆、同じ台詞を吐きますね。
「許されますわ。監禁、拷問、恐喝、殺人未遂、どれも凶悪犯罪ですよ。貴方がたの国では、平民孤児は人として扱われないかもしれませんが、皇国は違います。身分関係なく、罪を犯せば罰せられる。皇国で罪を犯したのですから、皇国の法にのっとり罰せられますわ」
懇切丁寧に説明して差し上げたのに、馬鹿には伝わらなかったようです。
「思い上がるな!! 兵士風情が!! 友好国の代表者を罰するだと、反対にお前が罰せらるぞ。俺の持ち物を俺自身が壊して、何が悪い!! 平民が一人、どうなろうとも、痛くも痒くもないわ!!」
人の命をなんだって思ってますの。命は一つしかないのですよ。それなのに――
私は怒鳴りたい気持ちを抑えるために、軽く深呼吸をしてから、隣に立っている騎士団長に向かって言いました。
「騎士団長、自白取れましたね。尋問の時間、かなり削ることができましたわ」
冷ややかで低い声に、犯罪者たちは黙ります。
「そうですね、セリア皇女殿下」
私の正体を知った犯罪者たちは、皆、顔を真っ青にし、わなわなと震え出しました。
「そうそう、友好国がどうとか言っていたようですが、このことを知った皇帝陛下がどう判断なさるか、楽しみですね。私なら、即凍結しますわ。なんせ、平然と自分の持ち物だと吐き捨てる貴方がたが、その持ち物よりも劣ることが許せなくて、認められなくて、起きた犯行。情けなくありませんの?」
蔑みと侮蔑の目で、私は犯罪者たちを見下ろします。
「……セリア皇女殿下、そろそろ、町民が活動しだす時間になります」
騎士団長が、私と犯罪者たちの間に割って入ってきました。
どうやら、時間がきたようですね。
「わかりました。連れて行きなさい。侯爵子息と伯爵子息は貴族牢に。他は平民牢へ。着き次第、尋問を開始するように。面倒ですが、お願いしますわ」
騎士団長に指示を出します。
「御意」
騎士たちは五人を連行していきました。
連行して行くのを見送ったあと、私たちは転移魔法で学園に戻って来ました。急いで、保健室に向かいます。
小さめにノックをすると、私は音を立てないようにドアを開けます。
まだ、目を覚ましてはいないようです。
私は忍び足で医師に近付き、「容態は?」と尋ねます。
「セリア皇女殿下の治癒魔法で、身体の損傷は完全に回復しております。しかし、目に見えないダメージは、思いのほか深手のようですね。おそらく、すぐには目を覚まさないでしょう。三日ほど寝続けると思います」
「そうですか……」
「私の院で様子を診れたらいいのですが……」
確かにそれが一番だと、私でもわかります。しかし、
「正直、それは難しいですわ。被害者である彼を、口封じするおそれがあります。全てが片付くまでは学園で保護します」
先生に負担をかけるとわかってはいますが、青年の身柄の安全のためには、ここから出すわけにはいきません。
「畏まりました」
「いつも、迷惑をかけてごめんなさい」
迷惑料込みの診療代を払いましょう。孤児院の寄付金も別に用意しないといけませんね。
「構いませんよ。セリア皇女殿下の頼みですから」
「そう言ってもらえると助かりますわ」
「……セリア皇女殿下、綺麗な朝焼けですよ」
そう言われて窓に視線を向けると、朝日が顔を出し始めているところでした。
「綺麗ですわ……」
少し間だけ、現実逃避したくなりました。できませんが……代わりに、元気をもらいましたわ。
332
お気に入りに追加
7,462
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです
珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。
※全3話。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。