婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
321 / 342
今度は学園外にアレが発生したようです

第四話 リーファの観察眼さすがです

しおりを挟む

 ドリアーヌ帝国――

 山脈を越えた先にある大陸の中では、大国だったと記憶しています。聖教会とは犬猿の仲だとか……あくまで、噂程度ですけどね。例のシスター事件の際に少し調べましたから。

「そもそも、疑問に思うのですが、何故、山脈を越えてこちら側に? 例のシスターが言っていた、浄化のためではないですよね。布教ですか? どちらにしても、はた迷惑なことですわ」

 私は例の受験者の申し込み用紙を机に広げ、うんざりしながら見返していましたが、途中で馬鹿らしくなって止めましたわ。

「どっちでも、いいんじゃない? 対処は同じでしょ。考えても答えがでないことを考えても、時間の無駄無駄」

 リーファが笑いながら言います。

「そうですね、リーファの言う通りですわ」

「ドリアーヌ帝国って、確か……竜神信仰の国だったよね」

 お菓子を頬張りながら、リーファが言います。

「よく、知ってるわね」

「まぁね、例のシスター事件の時に少し調べたの。それに、レイファがこの手の話、詳しいからね。あの子、好きなのよ竜が。なんか、ロマンがあるとか言ってね」

「その気持ち、深く理解できますわ」

 確かにあの姿は神々しくて、一生忘れることはありませんから。

「……ほんと、セリアって、レイファと趣味合うよね。完全に男脳」

「リーファさん、私に喧嘩売ってます? 買いますよ。今から訓練場に行きましょうか?」

「ごっ、ごめん。冗談だから!!」

 私がそう言いながら立つと、途端に慌ててリーファは謝ります。渋々、私は座りなおしました。

「全く……それで、竜神の巫女っていうのは、大聖女みたいな立場なのかしら」

「似たようなものね。大聖女みたいに仕事をしているかはわからないけど。ただの象徴的な者の可能性も高いよね」

「でしょうね。真面目に仕事をし、何かしらの役割があるのなら、山脈を越えて、このような場所に足を運んだりしません。そう考えると、彼女に竜神様の加護があるとは考えにくいですわね」

 通常、加護持ちを国から出したりはしませんから。

「でも、聖教会のシスターは来たよね」

 リーファの的確な指摘に、私は頭を抱えます。

「あ~そうでした。常識が通用しませんでしたね。とりあえず、誰と来たのか調べましょうか。それで、ある程度は推察できますから」

「……はっきりと断言できないけど、あんまり共を付けて来てないと思うわよ」

「どうして、そう思ったのです?」

「気付かなかった? なんか、薄汚れていたのよね」

 そう言われれば、確かに薄汚れてましたわ。ワイシャツもスカートもしわがあって、ヨレッとしてましたね。貴族、それも王族や高位貴族ならありえませんわ。

「確かに、薄汚れてましたわ。つまり、侍女や従者の数が少ないから身だしなみまで行き届かない、なら……放り出された可能性も出てきますよね」

 ゴミを我が皇国に捨てないでほしいですわ。

「まぁ、アレだしね……考えられるよね~」

「だとしたら、彼らの目的は衣食住ですか……」

「無料になるのは、特待生だけなのにね~」

 正規の入学試験よりも難しい試験を幾重にも突破して、始めて特待生になれます。資格を得たからといって、そこで終わりません。成績が落ちれば、即剥奪されます。超厳しいのです。だけど、特待生のまま卒業できれば、明るい未来が待っていますわ。

 少なくとも、ハンター資格がない者はその受験資格さえないのです。入学自体無理ですから。

「優秀だと勘違いしてますよね……あれ」

「絶対、また来るよ」

 嫌なことを言いますわね、リーファは。でも、激しく同感ですわ。

「少し確認したいことがあるので、それが終わり次第、送り返しますわ」

「早い方がいいわよ」

「そうですね」

 あ~癒やしがほしい。シオン様以外で、私の身体を包みこんでくれる温かさを渇望しますわ。例えば、モフモフとか……

 

しおりを挟む
感想 775

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです

珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。 ※全3話。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。