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お仕置きの時間です
第一話 また、魔法具製作の腕が上がりますね
しおりを挟む魔力量が多い者は、種族関係なく、ある一定の年齢になると、老いる速度が極端に遅くなります。
当然、私もそうです。
数百年、さほど見た目が変わることなく、生きていくことになるでしょう。まだ魔力量が増えていますから、さらに生きることになるでしょうね。
でも、寂しくはありませんわ。孤独を感じることもないでしょう。私と共に長い時を生きていくために、シオン様が竜の血を目覚めさせ、竜人として生きていく道を選んでくれましたから。
とはいえ、シオン様の人生を変えてしまったことに、何も思わないわけではありません。例えそれが、シオン様自身が決断したことだとしても。
だからこそ、私はシオン様に幸せになって欲しいのです。後に、後悔の念を抱かせたくはないのです。
まぁ、シオン様の幸せは私と共に生きることですから、特に何もしなくても叶えられはするのですが……そうだとしても、少しでも、笑って暮らしたいと考えています。その方が幸せで健全でしょう。
竜族の特性には驚かされながらですけどね。
竜に変化はできませんが、シオン様は竜族の特性を強く受け継いでおります。覚悟もしていましたし、私も学習してきたつもりです。手探り状態ですけど、それなりに向き合ってきました。
ですが……まだまだ、私の考えが甘かったと痛感させられましたわ。
お祖父様が、何故あんなに取り乱したか、今となっては身に沁みて理解しましたわ。
リュウシュウ族の件が片付いたあと、私はシオン様に接触禁止のお仕置きを決行しました。
期間は一か月間――
似たお仕置きを一度しておりますが、期間はあの時と比べて長いですね。でもそれは、仕方ないことです。下手したら、皇国が焼け野原になっていましたし。
それは表向きで、本音は、あの女とのデート現場を見掛けたからですわ。私と行こうと約束していた場所を、私より先に私以外の女と行って楽しんだのだから、怒っていい案件ですよね。
あ~思い出しても腹が立つ。
だから、少し意固地になってしまったのは認めますわ。
でも……あれは、ないでしょう。
「……今日は朝からいますね」
クラン君が若干引きながら言ってきました。
「休みなので。難しいかもしれませんが、居ないものとして扱ってください」
この台詞、何回目かしら。
「……それは、難しいですね」
そうですね。あれをいないものして扱うことができる強者は、スミスくらいですわ。完全に空気として扱ってますもの。
「これ以上続くと、仕事に影響が出ますよね。とはいえ、接触禁止だけであの状態。来ないようにお願いしたら、一体何が起きるのか、怖くてできませんわ」
「まぁ、実害があるわけではないですし、放置するしかありませんね。ヒッ!!」
クラン君が悲鳴を上げ逃げて行きます。
シオン様の殺気と威嚇をもろに浴びたからですわ。私の従者に何をしてくれるんですか。相手はクラン君ですよ。文句を言いたいのですが、それを待っているように感じて、言えないでいるのが、今の状況ですね。
クラン君は実害がないと言いましたが……間接的ですが、ありますよね。精神的に確実にじわじわとダメージを受けていますわ。まるで、遅延性の毒に蝕まれているようです。
何故、お仕置きする側が、これほどのダメージを負わねばならないのでしょう。
何度目かしら。溜め息が出ます。
見ないようにしているのですが、存在感がありすぎて、つい視線を向けてしまいます。すると、慌てて隠れるのです。体躯がいいので、隠れきれていませんけどね。そして、ちょこっと顔を出し、私の様子を伺ってくるのです。
なんですか!? この生き物は!? 悶絶するほど可愛くて愛おしいですわ!! 今すぐ抱き付きたくてたまりませんわ!!
まぁ私個人の感想はさておき、皇国の守護神であるシオン様が、完璧なストーカーになってしまいましたの。
本人は見守っているだけらしいですけど。
仕事は完璧にこなし、それ以外の時間は私の付き纏いに時間を当ててますね。そして、異性と話をしていると、さっきのように殺気と威嚇を飛ばしてくるのです。誰構わず。
主な被害者はスミスとクラン君に、あとはケルヴァンですね。特に友人のケルヴァンに対しての当たりが強すぎて、さすがに可哀想になってきましたわ。
「スミス、これ、ケルヴァンに渡してくれるかしら」
今の状況で、確実にケルヴァンに届けられるのはスミスだけですわ。
「手紙ですか……失礼ですが、内容をお伺いしてもよろしいですか?」
特に隠そうとは思ってないので、素直に答えた。
「お茶に招待したくて。といっても、簡単なものですけどね。あと、渡しておきたいものもありますの」
色々助けてくれましたから、感謝の気持ちですわ。
「なら、屋敷でいたしましょう。あそこならば、これ以上、シオン様の醜態をさらすこともないでしょう」
その辛辣な言葉に、私は苦笑します。
確かに、他者から見れば醜態かもしれませんね。または、理想の英雄像とは違う姿を目撃して幻滅するかもしれません。なので、できれば色々な意味で、他の人にあの姿は見られたくはありません。
あ~ほんとに、悶絶する可愛さですわ!!
また、魔法具製作の腕が上がりますね。
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