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貴方がそれを望むのなら
第十七話 もったいないですね
しおりを挟む昼過ぎから、屋敷(城)外の林の中で、私を狙いにきた輩が身を潜めて待機していることに、側近含め私も気付いていました。
側近たちには、いつも通りにしているように伝えています。なので、屋敷内は今は静かですわ。
仕事が一段落したので、休憩のためにソファーに移動し座ります。そして、腕を組み、ポツリと独り言のように呟きました。
「かなり高度な認識阻害だこと」
おそらく、あの集落を護る結界を張ったのも、その者の仕業ですね。
複数ではなく単体。
生きている者なら、量は関係なく必ず魔力はあります。私の魔力探知でわかるのは、人数と場所、その体に秘めている魔力量です。
その中で一際高い魔力量を持った者が一人。
周囲の輩より小柄だから、女性か未成年の少年ですね。これほどの魔法を使っているのです、かなり枯渇していて当然なのに……あっ、かなり回復していますね。八割ほど一気に回復しましたわ。おかしいですね、魔力回復のポーションでもあれほどの魔力量は……
合点がいかない部分はあるけど、抱いていた疑問は解けましたわ。
ずばり、今になってリュウシュウ族が行動に移した理由――
確かに竜族は個体数が少なく、一番若いのはシオン様でしょう。シオン様に目を付けるのは理解できます。でも行動に移せば、他の竜族に知られる危険性がグンッと上がったはず。なのに、行動に移せたのは、竜族の目を欺けることができると確信していたから。
なるほど……背景に、高度な魔術師がいたからですね。お父様レベルに匹敵する魔術師が。魔法に常時関わっているからこそ、私たちは対応することができるのです。優秀な暗部ですら、すぐに対応できないレベルですね。
だとしたら……なぜ、集落で、感じなかったのでしょう。少し奇妙な空気を感じる場所はあったのですが……
新たな疑問が頭を過ります。今考えても答えは出ませんわ。直接会わないと。それにしても、ほんとにもったいない。リュウシュウ族でなければスカウトしていましたよ。
まぁそれはさておき、私たちが騒がないので、おそらく、やつらは私たちが気付いていないと思っているはず。そうでなければ、今も林で待機などしていませんからね。忍び込むために、陽が暮れ真夜中になるのを待っているのでしょう。
「確かに、感嘆するレベルですね。それに、この短時間でこの屋敷に到着するとは、誰か転移魔法を使える者がいるのでしょう」
珍しく、スミスが淹れてくれた紅茶を飲みながら、彼の感想を聞きます。スミスが褒めるなんて、ほんと珍しいですわ。
「それと、このレベルの認識阻害の魔法。それも複数。まず間違いなく、あの結界を張った者ですね。あれを張れて維持できる使い手ならば、転移魔法くらいは容易に使えるでしょう」
だとしても、十人以上の仲間を転移させた上に、この認識阻害の魔法。周囲にも防音防止の結界を張っています。
「これほどの魔法を、連続で掛け続けるのは厳しいでしょう」
スミスが言おうとしていることを正確に理解した私は、にっこりと微笑みながら答えます。
「確かに、持久戦は厳しいようですね。魔力の枯渇よりも、魔術師の身体が保てばいいのですが……」
さっき、魔術師の魔力量が一気に回復したことがどうしても気になります。過度な魔力回復は、反対に身体を病ませてしまうから。
事実、魔力回復のポーションは年齢によって飲む量が定められています。リュウシュウ族は薬物に長けた種族、私が知らないポーションを作り出すことも容易なのでしょう。
本当に、もったいないですね……
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