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貴方がそれを望むのなら
第十二話 代わりに選んであげました
しおりを挟む私がこのモードになるのは久しぶりですね。
コンフォ伯爵家にいる時は、ハンターたちに負けたくなくて、いつもこんな風でしたわ。徐々に皇女としての話し方になりましたが……三年前に起きたスタンピード以後は完全に皇女としての振る舞いをするようになりました。
あの時は、特に王女の肩書きなど邪魔でしたわ。皆が、血塗れで、腕や足をもがれても必死で目の前の魔物を討伐し続けましたから。スタンピードが終わるまで。
今回は私の意思で、この肩書きを一時忘れましょう。でも、後悔なさらないで。そうさせたのは、貴方たちなのだから――
「私は竜の血を引いてはいないが、竜人並の執着と番に対しての愛情があるの。お前たちの敗因は、そこを見誤った。私が人族だからという理由でね。私はシオン様ほど甘くはない。私の大事な宝に手を出し奪い去ろうとした罪、どう償うつもり? 百回死んでも、許さないけど」
言葉使いと共にガラリと雰囲気が変わった私に戸惑う、リュウシュウ族たち。
答えやすいように、威圧を少し緩めます。話す分には問題がない程度に。
「……我らは、より良い種を残すことが、我が神のためだと信じております」
一縷の望みを込めてすがるのは、私の後ろにいるお祖父様。問い掛けているのは私なのに。つくづく、神経に障る種族だこと。
「お前たちが束になっても叶わぬ相手に……より良い種とはな、なにをほざいている、愚か者が」
吐き捨てるように拒絶された言葉と態度に、リュウシュウ族たちは絶望に打ちひしがれ、わなわなと震えています。
ここにきても、彼らは私に謝ろうとはしませんね。最後の機会でしたのに……残念ですわ。
とはいえ、謝ったとしても、この先の未来は変わることはありませんが、少しは手心を加えたかもしれませんね。私も良心はありますから。でももう時間切れ。私はさらに威圧を強めます。
リュウシュウ族は完全に動きを封じられ、うめき声しかあげることしかできません。
「始めに宣言しておく。私はお前たち、リュウシュウ族を許しはしない。番を失った竜人がどうなるかは理解してるでしょ。この私にとって代われる!? つくづく愚かね。私は竜族ほど甘くはない。生き残りを残すような真似は決してしない。さぁ、今、ここで選べ。ここで全員死ぬか、命は助かるが、ゆるりと種族が滅びるのを見続けるかを」
私はどちらでもいい。最後の選択肢くらいあげますわ。
「……ゆるりと種族が滅びるのを見続けるって、種が存続しないように呪いをかけるってことよね。その呪いって、確か……術者が死んでも解かれないタイプのものよね。一度掛けると、解呪不可能な呪い。まぁ無理したら解けないこともないけど、解くには、セリア以上の術者が命をかける必要があるのよね。果たしているのかしら? そんなお人好しが。私は解かないわよ。だって、貴方たち、私の大事な娘と婿の敵だから」
お母様らしいわ。ニンマリと嗤いながら、リュウシュウ族の皆を容赦なく地獄に叩き落としています。
お母様って、惚れ惚れするほど悪役顔が似合いますよね。私の悪役顔って、やっぱり母親譲りですわ。性格はお父様似ですけど。
「さて、そろそろ答えはでた? 決めかねているのなら、私が選ぶけど、それでいいかな?」
やっぱり、なにも言わないか……私と口を聞くのが悪って感じなのですね。それとも、穢れると考えているのか……まぁ、どちらでも構いませんが。無意味な矜持ほど、身を滅ぼすものはないのに。
「ならば、呪いを掛けることにしようかな」
私はにっこりと笑みを浮かべながら、そう告げました。
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