298 / 336
貴方がそれを望むのなら
第十二話 代わりに選んであげました
しおりを挟む私がこのモードになるのは久しぶりですね。
コンフォ伯爵家にいる時は、ハンターたちに負けたくなくて、いつもこんな風でしたわ。徐々に皇女としての話し方になりましたが……三年前に起きたスタンピード以後は完全に皇女としての振る舞いをするようになりました。
あの時は、特に王女の肩書きなど邪魔でしたわ。皆が、血塗れで、腕や足をもがれても必死で目の前の魔物を討伐し続けましたから。スタンピードが終わるまで。
今回は私の意思で、この肩書きを一時忘れましょう。でも、後悔なさらないで。そうさせたのは、貴方たちなのだから――
「私は竜の血を引いてはいないが、竜人並の執着と番に対しての愛情があるの。お前たちの敗因は、そこを見誤った。私が人族だからという理由でね。私はシオン様ほど甘くはない。私の大事な宝に手を出し奪い去ろうとした罪、どう償うつもり? 百回死んでも、許さないけど」
言葉使いと共にガラリと雰囲気が変わった私に戸惑う、リュウシュウ族たち。
答えやすいように、威圧を少し緩めます。話す分には問題がない程度に。
「……我らは、より良い種を残すことが、我が神のためだと信じております」
一縷の望みを込めてすがるのは、私の後ろにいるお祖父様。問い掛けているのは私なのに。つくづく、神経に障る種族だこと。
「お前たちが束になっても叶わぬ相手に……より良い種とはな、なにをほざいている、愚か者が」
吐き捨てるように拒絶された言葉と態度に、リュウシュウ族たちは絶望に打ちひしがれ、わなわなと震えています。
ここにきても、彼らは私に謝ろうとはしませんね。最後の機会でしたのに……残念ですわ。
とはいえ、謝ったとしても、この先の未来は変わることはありませんが、少しは手心を加えたかもしれませんね。私も良心はありますから。でももう時間切れ。私はさらに威圧を強めます。
リュウシュウ族は完全に動きを封じられ、うめき声しかあげることしかできません。
「始めに宣言しておく。私はお前たち、リュウシュウ族を許しはしない。番を失った竜人がどうなるかは理解してるでしょ。この私にとって代われる!? つくづく愚かね。私は竜族ほど甘くはない。生き残りを残すような真似は決してしない。さぁ、今、ここで選べ。ここで全員死ぬか、命は助かるが、ゆるりと種族が滅びるのを見続けるかを」
私はどちらでもいい。最後の選択肢くらいあげますわ。
「……ゆるりと種族が滅びるのを見続けるって、種が存続しないように呪いをかけるってことよね。その呪いって、確か……術者が死んでも解かれないタイプのものよね。一度掛けると、解呪不可能な呪い。まぁ無理したら解けないこともないけど、解くには、セリア以上の術者が命をかける必要があるのよね。果たしているのかしら? そんなお人好しが。私は解かないわよ。だって、貴方たち、私の大事な娘と婿の敵だから」
お母様らしいわ。ニンマリと嗤いながら、リュウシュウ族の皆を容赦なく地獄に叩き落としています。
お母様って、惚れ惚れするほど悪役顔が似合いますよね。私の悪役顔って、やっぱり母親譲りですわ。性格はお父様似ですけど。
「さて、そろそろ答えはでた? 決めかねているのなら、私が選ぶけど、それでいいかな?」
やっぱり、なにも言わないか……私と口を聞くのが悪って感じなのですね。それとも、穢れると考えているのか……まぁ、どちらでも構いませんが。無意味な矜持ほど、身を滅ぼすものはないのに。
「ならば、呪いを掛けることにしようかな」
私はにっこりと笑みを浮かべながら、そう告げました。
330
お気に入りに追加
7,469
あなたにおすすめの小説
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。