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貴方がそれを望むのなら
第十一話 無傷ですむと思うなよ
しおりを挟む「さぁ、今から断罪の時間ですわ」
にっこりと微笑む私に反して、集落の者たちは顔を強張らせて短い悲鳴を上げます。
しかしすぐに、腰を抜かしながらも拝み始めました。リュウシュウ族の神が降臨なされたのだから、仕方ありませんよね。
それらを一瞥したあと、私は周囲を観察します。
異変に気付き、家から出てくる者は若くて三十代、大半が六十代以上ばかりですね。まだ働き盛りの年齢層が結構数いるということは、子供ができにくい種族なのか、余所者を入れるのが嫌なのか……閉鎖的な集落から、おそらく後者ですね。
だとしたら、あの泥棒猫が一番若いのかしら。
なるほどね、だからあの小娘が選ばれたのですね……新しい血を入れるのなら、竜人であるシオン様は最高ですわ。腸が煮えくり返りますけど。ですが、ここは冷静に、感情を表面上では消して話しましょう。その方が、より相手を精神的に追い詰めることができますから。
「おはようございます、リュウシュウ族の皆様方。私、シオン・コンフォ様の番であるセリア・コンフォートと申します。私がこの地に訪れたわけは、言わずともわかりますね」
少しゆっくり目に話して上げましたわ。もちろん、満面な笑顔を添えて。
「……なっ、なぜ、竜神様が!?」
いや、さっき拝んでいませんでしたか!?
私の怒りよりも、そちらの方が気になるようです。今は人化しているとはいえ、登場した時は本来の姿でしたからね。
もしかして、私眼中に入ってませんでした!? こんな歓迎初めてですわ。なかなか新鮮ですね……本当に。
「シオンの運命の番であるセリアを、排除しようと画策しているのを聞いてな……またもや、過去の過ちを繰り返そうとはしていたとは、つくづく愚かだ」
さすが、お祖父様ですわ。一番効果的な言葉を選んでくれています。
「で、ですが、人族です!! 一番弱い種族ではありませんか!! 竜人であるシオン様には、相応しくはありません!!」
お前たちは何様目線なの!? ほんと、命知らずですね。真っ向から否定されましたわ。
放置されていた私は、ここで口を開きます。
「まぁ確かに、人族は他の種族よりも弱いと思われてはいますが、今はそうではありませんよ。獣人族並の身体能力、エルフ族などが持つ魔力、個人では及ばなくても、それを補える魔法具や装備がありますからね」
事実、獣人族やエルフ族よりも強いハンターも多数存在します。私のようにね。
「それは詭弁だ!!」
さらに、命知らずが増えましたね。お祖父様もお母様も威圧をかけずに傍観してますから、このような発言ができると思いますが、まさか、発言を許されていると勘違いしてませんか!?
「そうですか。私が弱いと仰るのですね。この結界を無効化した私が弱いと……なら、なぜ、正々堂々と奪いにこなかったのですか? このような薬品、魅了薬を使って関係に持ち込もうと画策するとは……人族を舐めていたわりには、行動は正反対なのですね」
私はスミスから薬品が入った瓶を受け取り鑑定します。結果は申した通りでしたわ。私はそれをお母様に手渡しします。
「薬ごときで奪われるのなら、それぐらいの関係だったということじゃろ!!」
その集落で一番年をとった長老らしき人が、私に向かって怒鳴ってきました。
「……奪われた? まだ、奪われてはいませんが」
私がそう訂正すると同時に、集落の者たちは皆、冷や汗を大量にかきながら地面に座り込み動けなくなっていました。当然、声を発することもできません。
「貴方たち、なにか勘違いをしていませんか? お祖父様とお母様が静観しているから、自分たちに発言権が許されていると、自分たちに理があると思ってはいませんか? 愚かですね、逆ですよ。この場において、すべての主導権を握っているのは私です。当然、貴方がたの生存権もです」
手始めに、私は彼らの命綱を目の前で砂に変えてあげました。
次に、リュウシュウ族の御神体である、竜の木彫りも燃やしてあげました。勝手に、竜を崇めているだけで、お祖父様は放置してましたから構わないでしょう。
「…………」
殺気から威圧にへと和らげてあげましたが、リュウシュウ族の皆様は、まだ言葉を発することはできませんね。でも、憤怒と畏怖の感情は伝わってきますね。
だから、なに?
殺気の量を増やしながら、私はこの集落にきた時に告げた言葉を繰り返します。
「さぁ、今から断罪の時間です」
再度、にっこりと微笑みます。今回は効果覿面ですね。
「私の運命の番に卑怯な手を使い、傷付け、殺そうととした罰を、しっかりとその身に受けてもらいますわ。覚悟なさってくださいね」
すがる目で、お祖父様を見詰めるリュウシュウ族の人たち。そんな彼らに私は言い放ちます。
「お前たちは私の逆鱗に触れた。よもや、無傷ですむと思うなよ」
ここから先は、セリア・コンフォートではありませんわ。ただの、セリアです。
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