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貴方がそれを望むのなら

第六話 作戦会議と役割分担

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「薬物に関しては、お母様の専門ですよね」

 自分の資産を使って、医院を経営してますからね。これまでに、秘密裏に三人ほど治療を頼みましたし。薬物学に関しては、お母様より秀でた人は知りませんわ。

「専門までとはいかないけど、任せて。そっちは私が調べてみるわ」

 ニヤリと嗤うお母様を見て、密かに胸の内で呟きます。おそらく、お祖父様もお祖母様も同じことを胸に抱いたはず。

 ――詰みましたわね。あの泥棒猫もシオン様も。

 どんな経緯があったとはいえ、お母様は私のことが超大好きですからね、旧知の中ではいえ、私を泣かしたシオン様に、それ相当の仕置きをなさるでしょう。もちろん、私からも。

 泥棒猫が近い未来どうなるかは、決まりきったことですので、わざわざ述べる時間が勿体ないですわ。

「ならば、私は巣を見付けましょう。幸いにも、私の従者に、それを得意とする者がいますからね。それに探知魔法を使えば、不自然な箇所は自ずとわかりますわ」

 お母様と似た顔で、私はニヤリと嗤います。完全に真っ黒な笑みを。
 
「巣が砦の近くにあるとはかぎらんぞ」

 確かに、お祖父様の疑念は誰もが考えることでしょう。でも不思議と、私は巣が近い場所にあると考えていますの。

「スキルを高める薬品って大量に作れますの?」

 こういった、特別の効能を持った薬はポーションのように、大量生産はできないのが常識ですわ。だけど、あの泥棒猫はそれを使用し続けています。だとしたら、製造元が近くにあると考えるのは当然でしょう。

「……作れないな」

 となれば、自ずと巣の場所の範囲が狭まります。幸いにも、砦は魔の森の境界線上にありますからね。そして、野草も豊富に生えています。

 条件が揃ってますね。但し、それなりの実力があれば、という条件が付きますが。それほど危険な場所ですからね、魔の森は。でも、あの泥棒猫の実力ならば可能でしょう。【鑑定】スキルで見ましたから。

「まず間違いなく、村全体に認識阻害の魔法がかかってますね。魔法具か魔法石か……」

 実に興味深いですわ。

「楽しそうだな、セリア」

「そう仰るお祖父様の声も楽しそうですよ」

「そりゃあ、そうだろ。久しぶりの狩りになりそうだからのう」

 番を殺された竜ではありませんから、自制はききますよね。孫が巻き込まれても。

「巣穴に籠もる小物ですよ」

 活動しているのは数人でしょうね。全員が、あの泥棒猫クラスだとは思えません。もしそうなら、泥棒猫一人でシオン様には接触しないでしょうし、保険を残している可能性は低いですね。シオン様に、二度目はありませんから。

「かなり面倒な奴らだがな」

「だからこそ、攻略しがいがあるとは思いませんか?」

「その時は、私も混ぜてね」

 お母様が背後からおぶさってきました。久しぶりのお母様の体温に、ポッと心が温かくなります。ちゃんと私を見てくれているのですね、母親として。なら、私の答えは決まってますわ。

「当然ですわ。皆で参りましょう」


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