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貴方がそれを望むのなら
第五話 リュウショウ族
しおりを挟む「お母様、リュウショウ族ってなんなのですか?」
最強と呼ばれるお祖父様とお母様、そして、お祖母様が頭を抱えさせる種族……普通の種族ではなさそうですわね。
私が聞かない名から小集民族。おそらく、竜に関わる種族だと推察できます。種族名にリュウって入ってますしね。
「……簡単に言えば、竜を神だと崇めていた種族だ」
お母様の代わりに答えたのはお祖父様。でもその答えに、私は首を傾げます。
「竜を崇め奉る信仰があるのは、特に珍しくはないのでは」
確かに、創世神様を奉る神殿は多いです。実際、我が皇国にも王都に大神殿がありますわ。だからといって、他の神を崇めることを咎めたりはしませんし、事実、竜信仰は意外と身近にあったりするのですよ。人は畏怖する者を信仰する生き物ですからね。
「確かに、珍しくはないな。だが、奴らは過激過ぎるのだ」
お祖父様をそこまで悩ませるほど過激って……
「簡単に言えば、信仰心が高過ぎるのよ。っていうか、自分たちが竜族に一番近い位置にいなければ気がすまないのよね。竜族にお仕えし、手足のように動き奉仕する。それを喜びにしている、かなり頭がおかしな輩よ」
お母様がお祖父様の言葉を補足します。
正直、引きますね。人の血が混じった竜人でも、リュウシュウ族の対象になるのに驚きましたわ。少し矛盾してませんか。
「あ~だから、私のことを人間風情がと罵ったわけですね。あ、でも、そこまで頭を悩ますのなら、彼らを拒否し、追放すればよろしいのでは?」
竜族は謂わばリュウシュウ族にとっては絶対神、なら、神が民を拒否し追放されても文句は言えないでしょう。
「したのよ。赤竜の番を蔑ろにした時に徹底的にね。赤竜の番は兎の獣人でね、奴らはそれが認められなかった。竜の番は竜であるべきだと、勝手に決めつけ、番の世話をしないところか、食事に遅効性の毒を盛っていたのよ。無味無臭のね。まぁそれは、竜の鼻には通用しないけどね。番を傷付け殺そうと画策したリュウシュウ族を赤竜は許さなかった」
そりゃあそうですよね。本来竜族は、番を愛し大切に囲い込むもの。お祖父様とお祖母様のように。
「赤竜の怒りは凄まじかった。自らの巣諸共、焼け尽くしたのたからな。てっきり、滅んだとばかり思っていたが……まさか、生き残りがいたとは。しぶとい奴らよ」
お母様の台詞を引き継ぐように、お祖父様が教えてくれました。
「まるで、あれと一緒ですね……どこで、シオン様が竜人だと知ったのかは、今は横に置いて置きましょう。今すべきなのは、あれの排除です。私に取って代わろうとしていますからね。その過程を、シオン様が許しているのが気がかりですわ。同情をひいて懐に入り込んだのか、私がかけた魔法に関知しない、なにかの魔術、薬を用いたのか。そこがはっきりとしないと、手が打てませんね」
といっても、じっくり見極める時間はありませんわ。私が耐え切れないこともありますが、シオン様の身を考えると。
「……セリアは魔法を感知しなかったのだな、だとしたら、スキル持ちかもしれない」
お祖父様がポツリと呟きます。
「スキル? 魅了とかですか……でも、竜人には効かないのでは?」
前に学園で魅了持ちの子がやらかしたことがあります。今でも腹立たしい限りですわ。
「本来ならな。でも、色々なものを複合して使用したら、もしかしてがあり得るかもしれないぞ」
確かに、お祖父様の仰る通りかもしれない。シオン様はその見た目に反して、とても優しい人だから。
もし、その優しさを利用したのなら――私は絶対に貴方がたを許しませんわ。
「その可能性は大ですわね。その件と並行して、奴らの巣を探さなければなりませんね」
この際、徹底的にやりましょう。私は赤竜様とは到底及びはしないでしょうが、その態度次第では、近いことが小規模で起きるでしょうね。
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