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なんとしてでも、結婚してみせます
第八話 駄々っ子は止めてください
しおりを挟む「このような夜更けに申し訳ありません、聖騎士様。神殿長様に取次をお願いいたします」
私は神殿長の部屋の前で、警護している聖騎士に声を掛けます。
異様な三人組に警戒する聖騎士。
まぁ、警戒して当然ですわね。明らかに怪しい三人組ですもの。ましてや、麻袋を担いでますし。麻袋からは蛙の鳴き声がたまにしますからね。警戒しない方がおかしいでしょう。
「その麻袋の中は何だ!?」
聖騎士の一人が私に剣を向けながら尋ねます。
仕事熱心でよろしい。
「それ、訊かない方がよろしいですよ」
私はにっこりと微笑みながらフードを取ります。
「セリア皇女殿下!?」
私の顔が晒されると、聖騎士は驚愕し慌てて剣を鞘に戻しました。
「失礼ですが、セリア皇女殿下、こんな夜分に大荷物を持って何用ですか?」
慌てる聖騎士をよそに、もう一人の聖騎士が代わりに訊いてきます。その目の鋭さに、私は感心しながら答えました。
「訊かない方がいいと、さっき申したはずですが」
「確かにそうお聞きしましたが、こちらも、はいそうですか、と通すわけにはいきません。相手が貴女様でも」
この聖騎士、麻袋の中に入ってるが人だと認識してますね。目の鋭さがさらに鋭くなってますもの。絶対引きはしませんわ。
「……そうですわね。困りましたね……別に見せてもよろしいのですが、衝撃を受けると思いますがよろしいですか?」
不愉快だとは思いませんよ。それが彼の仕事ですから、仕方ありませんわ。でも一応、念をおしておきましょう。
なんせ、麻袋の中には皇帝陛下が入ってますからね。かなりの衝撃だと思いますわ。一生、忘れないほどの。
「構いません」
「わかりましたわ」
私はそう答え、スミスに視線を向けた時でした。
「その必要はありませんよ。どうぞ、セリア皇女殿下」
神殿長が自ら扉を開け、入るよう促してくれました。
「「神殿長様!!」」
聖騎士たちは声を上げますが、神殿長はそれを一瞥して黙らせます。
「どうぞ、セリア皇女殿下、コンフォ伯爵様」
「ありがとうございます、神殿長様」
私なそう礼を口にしてから、室内に足を踏み入れます。私の後を続くように、シオン様とスミスが室内に。
「聖騎士が無礼を働き、申し訳ありません」
扉を閉めた直後、神殿長は私たちに謝罪します。
「無礼な扱いは受けておりませんわ、神殿長様。聖騎士二人の反応は正解です。不審者が皇族でも怯まない姿勢、さすが神殿長様ですね。教育が行き届いてますわ」
「そう言ってもらえると、嬉しいですね」
神殿長は髭を触りながら言います。
和やかな雰囲気なのに、それを潰す声が麻袋の中からします。そろそろ出してあげましょうか。
「スミス、そろそろ出してあげましょうか」
「畏まりました」
スミスはそう返事をすると、麻袋を床に下ろし、口を縛っていた紐を解きました。
中から出てきたのは、予想していた通りお父様でした。
「貴様ら!!」
血走った目で私たちを睨み付けるお父様。完全にキレてますね。魔封じの紐で手足を縛られてるから、得意な魔法も撃てない。なおさらですね。
「お父様、私たちの婚姻を認めてください」
私は膝を付き頭を下げ頼みます。
「…………絶対に嫌だ」
小さな声でポツリと呟くお父様。
「往生際が悪いですよ、お父様。約束を守ってくださいませ」
捕まえてみろと言い出したのは、お父様の方でしょ。
「嫌だ!!」
まるで、子供の駄々っ子のようなお父様に、私たちは大きな溜め息を吐きます。
「そうですか……お父様が仕掛けた鬼ごっこに勝者しましたのに。約束を守れないとは……では、仕方ありませんね。神殿長様、書類をいただけませんか?」
ならば、直接、拇印を押せばいいだけですわ。それで、万事OK。
これで、シオン様と正式な夫婦になれますわ!!
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