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エルヴァン王国の未来
第十七話 私らしいといえば、らしいですわね
しおりを挟む容赦なく、逆流する禍々しい魔力。
上がる、断末魔のような悲鳴。
私とお母様はその悲鳴に気を取られることなく、作業を続けます。
魔力を絞り取られますわね。結構、乱暴で、無理してるのは覚悟の上でしたが……考えていた以上に、魔力を費やしてますわね。でも、ここで弱音を吐くわけにはいきません。
魔法陣の再構築と同時に魔水晶の修復。そして、魔水晶の強固。
どちらかの魔力が一瞬でも途切れたら、全てが終わります。溢れた禍々しい魔力で、この辺りは人が住めぬ土地になるでしょう。【腐石】の封印が破れなかったとしてもーー。
シオン様は私とお母様を護る盾になり、ケルヴァン殿下、侍女たちは狂王子に攻撃を仕掛けます。
苦しみ悶ながらも、狂王子は残った魔力で応戦し、隙あらば、私たちを攻撃しようとしますが、侍女たちがそれを許すはずはありません。
次第に、狂王子は隅に追い詰められていきます。
「セリア!! 後、もう少しよ!! 踏ん張りなさい!!」
お母様の叱咤激励の言葉、聞くのは久しぶりですわ。昔を思い出しますわね。
「はい!!」
あの時は、ほんと地獄の毎日でしたが、一度身に付けたことは体が覚えているものですね。知識もですが。
魔法陣の再構築など、狂王子が言った通り簡単にはできませんわ。それができたのは、何百という魔法陣の図形の基礎をお母様に叩き込まれたからですわ。基礎を覚えれば応用が効くという理由で。同時に、魔法陣に描かれている文字も修得しなければなりません。できなければ、待っているのは……思い出すのも嫌ですわ。
でもまさか、ここで、その知識が役に立つとは思いませんでしたが。
「クッ!! ゴホッ!!」
一段と奪われる魔力の量が増えます。珍しく、私の口から苦痛の声が漏れます。
「大丈夫か!? セリア!!」
シオン様の心配する声と焦る声。
そりゃあ、血を吐き出せば焦りますわね。
「……大丈夫……シオン様、今回の件が片付いたら、結婚しませんか? 式は卒業後で、届けだけ先に出しましょう」
プロポーズにしては、表情は一致してませんわね。ニヤリと笑って言ってますもの。甘い表情なんて皆無。私らしいといえば、らしいですわね。不意に思い、口から出てしまうのも。
「いいのか?」
戸惑いながらも嬉しそうなシオン様の声に、私の口元が緩みます。
「嫌ですの? もし嫌だったとしても、拒否は受付けませんわ」
絶対、逃しませんもの。
「拒否? 俺がすると思うか? もう、逃げられないぞ、いいんだな?」
言葉とは裏腹に、目は自信なさげなシオン様。
「それは、私の台詞ですわ」
俄然、力が湧いてきます。だって、シオン様との結婚ですよ!!
「……この場面で……全く、呆れるわ。セリア、これで終わりよ!!」
バッチリ、お母様に聞かれていたみたいです。途中邪魔されなくてよかったですわ。これがお父様なら、絶対邪魔してますからね。
お母様の声と同時に、私の体は力なくスーと後ろに倒れます。かなりの魔力を消費しましたからね、仕方ありませんわ。
幸いにも、後頭部を強打することなく、温かいものに包み込まれました。
「よく頑張ったな、セリア」
優しい声で微笑むシオン様を見て、私も笑みが浮かびます。
「……シオン様が護ってくれたからですわ」
和やかな空気はここまでのようですね。
「嘘だ……嘘だ……嘘だーー!!」
視線の先には、痩せ細った男がギラついた目で、私たちを憎々しげに睨んでいた。
☆☆☆
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
実は昨日から、短編予定の恋愛小説を投稿してます。
タイトルは【言いたいことはそれだけですか。では始めましょう】です。
気楽に読めますので、読んで頂ければとても嬉しいです。
これからも頑張って書いていきますので、応援宜しくお願い致します。
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