264 / 331
エルヴァン王国の未来
第七話 搾り取られてないとしたら
しおりを挟むまもなく、王都に到着します。
私たちは一旦コクエンたちから降りると、徒歩に切り替えました。一応、念のために。
王都は町から半日ぐらいの距離に位置していますが、私たちなら半日も掛りませんわ。ものの数時間で移動できますわね。コクエン様々ですわ。
実は町を出たところで、第一王子の叔父様たちが再登場するとふんでましたの。とても期待していたのに、再登場はなし。非常に残念ですわ。もう少し、ゆっくりと町中を歩いた方がよかったのかしら。でもね……遊びで訪れたわけではありませんし。そんなことを考えていたら、突然、シオン様に引き寄せられました。
「そんなに、残念そうな顔をして。少し、妬けるな」
私の腰に手を回したまま、もう片方の掌で頬をスルリと撫でながら、シオン様は耳元でそう囁きます。シオン様の吐息が耳に直接掛かります。密着しているので、シオン様の匂いに包まれます。それは同時に、私の匂いにシオン様が包まれるということですわ。
カーと顔が火がついたように熱くなります。
反射的に逃げの体勢をとりますが、シオン様相手にそれは不可能。私でも。それでも逃れようと足掻いていたら、足先が地面から離れる始末。
「シオン様、下ろしてくださいませ!!」
砦や屋敷では許しますよ。でも今は、外ですわ!! 人の目があるでしょう。
「大きい声を上げると、なお目立つと思うぞ」
可笑しそうに笑っている、シオン様。ケルヴァン殿下たちは皆空気ですわ。お母様だけニヤニヤと笑っています。
「……お母様、お父様に看過されたのですか?」
お母様の機嫌が悪く思いましたが、つい訊いてしまいましたわ。
だって、そうでしょ。この行為は、人前ではかなり破廉恥な行為なのです。貴族、平民関係なく。後ろ指を指される行為なのですよ。まぁお父様は、そんなことを気にせず、お母様がいればイチャイチャしてましたけどね。それでも、周囲に姿を見られないよう配慮していましたよ、あのお父様でさえ。
「あんな人、どうでもいいわ」
やっぱり、お父様のことを口にすると途端に機嫌が悪くなり、プリプリと怒り出すお母様。
喧嘩、まだ尾をかなり引いているようですね。お母様から三行半突きつけて、絶縁宣言をしましたから。根はかなり深いと思いますわ。その詳細は、以前お話したと思いますので、この場ではお話しませんわ。
私は溜め息を吐き、現在進行形で私を抱えているシオン様に視線を向けます。
「……いったい、どうしたのです?」
ただ、妬いたからだけではないでしょう。
「匂い付けだ。セリアは俺のモノだと意思表示しただけだ」
人相手にですが?
ケルヴァン殿下と従者さんがいるので、声に出しはしません。なので、いつもの心配性ということにしときましょ。事実、そうですからね。
「誰にです?」
「決まってるだろ、狂王子にだ」
シオン様の眉間に皺が寄ります。
「あ~、そういえば、誰か私たちを見てますわね」
王都に入る前から視線を感じていました。周囲を見回しても、私たちに視線を向けているものはいませんでしたわ。
ならば、遠い所から見ているのでしょう。
よく、お父様がお母様を見ているように。
何かしらの魔法具をかいしてとかね。
もしそうなら、かなりの魔力持ちですわね。その魔力が生まれつきか、人工的なものかは別として。もし生まれつきならば、既に魔力を搾り取られてますわ。
搾り取られてないとしたら……
10
お気に入りに追加
7,468
あなたにおすすめの小説
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。