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エルヴァン王国の未来

第七話 搾り取られてないとしたら

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 まもなく、王都に到着します。

 私たちは一旦コクエンたちから降りると、徒歩に切り替えました。一応、念のために。

 王都は町から半日ぐらいの距離に位置していますが、私たちなら半日も掛りませんわ。ものの数時間で移動できますわね。コクエン様々ですわ。

 実は町を出たところで、第一王子の叔父様たちが再登場するとふんでましたの。とても期待していたのに、再登場はなし。非常に残念ですわ。もう少し、ゆっくりと町中を歩いた方がよかったのかしら。でもね……遊びで訪れたわけではありませんし。そんなことを考えていたら、突然、シオン様に引き寄せられました。

「そんなに、残念そうな顔をして。少し、妬けるな」

 私の腰に手を回したまま、もう片方の掌で頬をスルリと撫でながら、シオン様は耳元でそう囁きます。シオン様の吐息が耳に直接掛かります。密着しているので、シオン様の匂いに包まれます。それは同時に、私の匂いにシオン様が包まれるということですわ。

 カーと顔が火がついたように熱くなります。

 反射的に逃げの体勢をとりますが、シオン様相手にそれは不可能。私でも。それでも逃れようと足掻いていたら、足先が地面から離れる始末。

「シオン様、下ろしてくださいませ!!」

 砦や屋敷では許しますよ。でも今は、外ですわ!! 人の目があるでしょう。

「大きい声を上げると、なお目立つと思うぞ」

 可笑しそうに笑っている、シオン様。ケルヴァン殿下たちは皆空気ですわ。お母様だけニヤニヤと笑っています。

「……お母様、お父様に看過されたのですか?」

 お母様の機嫌が悪く思いましたが、つい訊いてしまいましたわ。

 だって、そうでしょ。この行為は、人前ではかなり破廉恥な行為なのです。貴族、平民関係なく。後ろ指を指される行為なのですよ。まぁお父様は、そんなことを気にせず、お母様がいればイチャイチャしてましたけどね。それでも、周囲に姿を見られないよう配慮していましたよ、あのお父様でさえ。

「あんな人、どうでもいいわ」

 やっぱり、お父様のことを口にすると途端に機嫌が悪くなり、プリプリと怒り出すお母様。

 喧嘩、まだ尾をかなり引いているようですね。お母様から三行半突きつけて、絶縁宣言をしましたから。根はかなり深いと思いますわ。その詳細は、以前お話したと思いますので、この場ではお話しませんわ。

 私は溜め息を吐き、現在進行形で私を抱えているシオン様に視線を向けます。

「……いったい、どうしたのです?」

 ただ、妬いたからだけではないでしょう。

「匂い付けだ。セリアは俺のモノだと意思表示しただけだ」

 人相手にですが?

 ケルヴァン殿下と従者さんがいるので、声に出しはしません。なので、いつもの心配性ということにしときましょ。事実、そうですからね。

「誰にです?」

「決まってるだろ、狂王子にだ」

 シオン様の眉間に皺が寄ります。

「あ~、そういえば、誰か私たちを見てますわね」

 王都に入る前から視線を感じていました。周囲を見回しても、私たちに視線を向けているものはいませんでしたわ。

 ならば、遠い所から見ているのでしょう。

 よく、お父様がお母様を見ている監視ように。

 何かしらの魔法具をかいしてとかね。

 もしそうなら、かなりの魔力持ちですわね。その魔力が生まれつきか、人工的なものかは別として。もし生まれつきならば、既に魔力を搾り取られてますわ。

 搾り取られてないとしたら……

 

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