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いざ、エルヴァン王国へ

第十六話 もう、国として終わってますよね

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「まず、率直に申しまして、エルヴィン王国は既に取り返しのつかない、瀕死状態だと言えます。国としての機能は、もはや機能不全を起こしていると見受けられます」

 侍女の意見に、ケルヴァン殿下は俯き、拳にした手が震えています。従者は反論しようと口を開き掛けますが、私が許すわけありませんわ。今ここで、感情論は無駄ですからね。

「そう考えた根拠は?」

「はい。主要な官職の方は既に外され、今国を動かしているのは、第一王子殿下の腰巾着ばかり。ましてや、少しでも魔力がある者は、老若男女関係なく魔力を搾り取られ、大半の者は死に絶えたようです。その中には、貴族も平民も、そしてハンターもいたようです」

「なるほど……だから、あのハンターは私に忠告したのですね。暗い炎を瞳に宿していましたから、何かあったとは思いましたが。まぁ、ある程度想像はしてましたから、特に驚きませんが……外された官職の中にも、魔力を搾り取られた者は多くいるのではなくて?」

 エルヴィン王国の住民は、魔力を有する方が他国より少ない。

 ましてや、本来魔力は、何故か、平民よりも貴族籍を有する者が所有していることが多い。ということは、もうわかるでしょ。

「はい。その通りです、セリア様」

「なら、一族諸共絞り取ったというわけですね」

 この時点で、国としての機能は果たせないでしょうね。第一王子としては、煩い家臣を排除すると同時に、利用したという訳ですか……心底、虫唾が走りますわ。

「はい。死体を確認いたしましたので、間違いありません」

 確認できたということは、無造作に放置されていたってことですね。そして、今なお放置されたまま。

 つまり、第一王子は彼らを二度も殺したというわけですか。

「ゲスが」

 ボソッと呟いた言葉に、ケルヴァン殿下の体がビクッと震えます。従者はそこまで酷いとは考えていなかったのでしょう、俯いたまま顔を上げません。

 一旦、怒りを圧し殺してから、私は再度口を開きます。

「愚かにも、ハンターまで手を出すとは。ハンターはどの国とも属しない独立組織。例え、第二王子殿下が第一王子殿下を討ち取ったとしても大変ですね。エルヴィン王国は、多額の賠償金をハンター協会に支払わなければなりませんから。それも一括で。それだけでなく、エルヴィン王国から完全に撤退するでしょうね。そうなれば……」

 もう、国として終わりなのではーー。

 そう思いましたが、さすがに口には出しませんでした。でも、この場にいる全員、胸の内ではそう思ったでしょうね。ケルヴァン殿下も従者も。

 いくら狂人から国を取り戻しても、維持する基盤がそもそもありません。

 枯れ果てた大地にいくら水を注いでも、大地が直ぐに戻らないように、国もまた直ぐには元には戻らない。第二王子殿下は、完全に見誤りましたね。

 直接お会いしたことはありませんが、噂では優秀な方だと聞き及んでおります。カリスマもあり、常に第一王子殿下よりも第二王子殿下の方を推す声が多かったとか。

 でも、尤も大事な国の存亡の危機に、その手を血に染めることを躊躇ったーー。

 私は思うのです。

 いくら優秀でカリスマがあっても、それだけで王の座に相応しいかと問われれば、否ですわ。例え、平和な時代でも。

 王に相応しい資質は何かと問われたら、私はこう答えますね。

 時を見極める目。

 そして、自分の手を血に染めることを厭わない方ですわ。

 何故って……王座は見た目、とても豪華な造りをしていますわ。でも、本当は血に染まって穢れているのです。穢れているからこそ、美しいのですわ。

 それを、二人の王子殿下は知らなかった。歴史を見返せば、自ずと知ることができるのに。


 


☆☆☆


 いつも、応援ありがとうございますm(_ _)m

【第5回ほっこり・じんわり大賞】始まりましたね。

 実は、こっそりと参加してます。

 異世界ものではなく、現代が舞台となってます。

 初のライト文芸。タイトルは【俺は妹が見ていた世界を見ることはできない】です。

 内容は、奇病におかされた主人公が生きた7年間の物語。

 今まで書いたことがない分野ですね。

 これからも頑張って書いていきますので、応援宜しくお願い致しますm(_ _)m




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