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いざ、エルヴァン王国へ
第七話 過程は関係ありません
しおりを挟むあの後、直ぐに自警団の方々が来たので、人攫いたちの身柄は、そのまま彼らにお渡ししましたわ。
軽く頭を下げ、「協力、感謝する」と短く礼を言ってから、乱暴に人攫いたちを立たせます。そのまま、連れて行くのは構いませんわ。だけどその前に、
「来るのが、少しばかり遅すぎではありませんか?」
不満を口にします。始めは、他国のことに口を挟むつもりはありませんでした。しかし、あまりにも酷すぎます。
大通りから一本外れているとはいえ、結構な騒ぎでした。町とはいえ、さほど大きいとは言えません。
本来なら、私たちが到着する前に到着し、対処するべきだったのではありませんか。遅くても、全てが終わる前に来るべきでした。
だって、そうでしょう。
そうなければ、少女は今頃、何処かに連れ去られ売られていましたわ。今回は、かなり運が良かっただけです。違いますか。
「俺たちはーー」
私の言葉が癇に触ったのか、自警団の中で一番の若手の隊員が抗議しようと口を開きます。
「止めろ」
それを、風格のある中年の隊員が止めました。
「隊長!!」
やはり、隊長ですか。
「非難されて当然だ。俺たちの仕事に過程は関係ない。助けられるか、助けられないかだ」
その通りですわ。結果のみが問われる仕事。その点は、ハンターも共通してますわね。特に、砦で働く者たちは。
隊長の言葉に、若手の隊員が唇を噛み締め、グッと言葉を飲み込みます。隊長は唇を噛み締める隊員に視線を送ってから、私たちに視線を戻します。
「本当に助かった。住人を護ってくれて、心から感謝する」
頭を下げ、改めて礼を口にする隊長。近付こうとしたら、私の腰に抱き付いている少女がビクッと体を竦ませます。それに気付いた隊長は、近付くのを止めました。
「当然のことをしたまでです」
私は少女の背中に手を回しながら答えます。
「お前さんたち、今日はこの町に泊まるんだろう? 明日、報奨金を持って行く」
そう隊長は告げると、人攫いたちを連行して行きました。
「いらない」とは言えませんでしたわ。出掛かっていましたけど。だって、下手に勘繰られるのはどうしても避けたかったのです。あの隊長は、そこそこ優秀そうでしたから。
一応、エルヴァン王国に来た理由は出稼ぎですからね。報奨金を断るのはおかしいですわ。ということは、この町に泊まる必要があるってことですわ。少なくとも、宿屋で部屋をとらなくては。泊まるか泊まらないかは別として。溜め息が出ますわ。
人攫いたちと自警団の方々が去ってから、私は安心させるように少女に声を掛けました。
「……もう、大丈夫よ」
私の言葉に反応するように、少女はコクリと小さく頷きます。見たとこら、大きな怪我はなさそうですね。小さなかすり傷が数か所ありますが。私は治癒魔法で怪我を治してあげました。
少女はビックリとした顔で固まっています。魔法なんて珍しくないのに、可愛いですね。
「とりあえず、この娘を送らないとな」
ケルヴァン殿下が、やや距離をとってから話し掛けてきました。
「そうですね」
最後まで責任を持たなくては。食堂に行くのは、もう少し後になりそうですね。
「何処に住んでるんだ?」
ケルヴァン殿下が優しい声で少女に尋ねると、少女はこっちと私の手を掴んで歩き出します。案内してくれるみたいですね。
少しずつですが見えてきましたわ。町の治安が悪くなっている要因の一つが、自警団、兵士、騎士の弱体化にあるようですわね。
それもこれも、第一王子と第二王子との内乱がそもそもの原因なのでしょう。
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