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裁判が始まりました
第十四話 本当に怒りますよ
しおりを挟む「……醜態を晒してしまいましたわ」
昨夜の自分の姿を思い出し、ベッドの上で頭を抱えて項垂れます。顔が熱くて燃えそうですわ。
この私が、まさか気を失うとは……
穴があったら入りたいとは、今の私のことをいうのですね。運んでくれたのはシオン様でしょう。絶対、からかわれますね、お母様に。シオン様は……考えるのは止めましょう。目覚めて直ぐに考える内容ではありませんわ。
あぁ……誰とも会いたくない…………
「ならば、今日はお休みにしたらどうです?」
私の意図を汲んで、侍女の一人がそう提案してきました。
髪の短いほうですわ。伯爵家にいた時から私に仕えてくれています。私の専属侍女ですわ。彼女は、少し楽観的なところがありますね。普段は楽観的ですが、スイッチが入ると、誰よりも冷徹になります。主人の私りも。
「とても魅力的な提案ですわ。だけど、それはできないわね。一日休むと、次の日が大変ですからね」
しみじみそう思います。
「たまには、気分転換も大事だと思いますが」
もう一人の専属侍女が私の身を案じて、休むよう言ってくれました。
私の専属侍女たちは、本当に優しくて頼もしいですわね。
ちなみに、彼女は髪が長いです。誰よりも真面目で少々堅物な面がありますが、彼女の鋭さに助かったことは何度もありますわ。
「気分転換なら大丈夫。裁判に出廷しましたから」
「「それは、気分転換とは言いません!!」」
良いコンビですね。息がピッタリですわ。
「そうかしら。普段、体験しない事柄を体験することで、気分転換になるのでは?」
「「裁判は含まれません」」
本当に、良いコンビだこと。
「なら、魔物討伐は?」
「それは含まれますね」
「大きさによりますね」
あら? ハモりませんでしたね。でも、考えは一緒。もちろん、私もですわ。
「今日の午後、魔物討伐の時間をいれましょうか? セリア様」
「おやつを御用意しますね」
二人の気持ちは嬉しいのですが……
「…………また、醜態を晒すことになりそうなので、今回は止めとくわ」
精神をゴリゴリと削られそうなので。
だって、倒れた私を、シオン様が心配しないはずありませんもの。今以上に過剰な反応を示すはず。それも人前関係なく。また、砦に勤務する方々に、生温かい目で見られますわ。そしてそれが、町にまで広がるのです。あ~~恥ずかしい。
「それなら、心配はありません」
心配ない? 首を傾げる私に、髪の短い侍女が教えてくれました。
「はい。ご安心ください。セイラ様とスミスさんがビシッと叱ってくれましたから」
お母様とスミスが……シオン様を?
想像するだけで、身震いがしますわ。色々な意味で。ある意味、最凶の二人ですからね。
「それで、シオン様は?」
「砦に向かわれました。スミスさんと一緒に」
「しばらくはお戻りにならないかと」
……二人とも、とても良い笑顔ね。
その笑顔を見て、シオン様が可哀相に思えてきました。軽く溜め息を吐くとベッドを下り、侍女二人の脇を抜けクローゼットに向かいます。
魔物討伐がしやすい衣装に着替え、ブーツを履きローブを羽織ります。髪も自分で整えます。
「「セ、セリア様!!」」
焦る侍女二人に冷たい視線を向け、私は一言言い放ちます。
「シオン様は私の婚約者。いずれ、伴侶になる方です。その意味をじっくりと考えなさい」
顔色を失う侍女二人を置いて、私はシオン様を追い掛けます。シオン様の魔力はちゃんと覚えてますから、見失うことはありませんわ。
どんなに忙しくても、朝ご飯は一緒に取る約束を交わしたのに破るのですか。本当に怒りますよ、シオン様。
今行きますね!!
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