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裁判が始まりました

第七話 自業自得ですわ

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 ほんの少しだけ【威圧】してみたら、それはそれは、セリーヌ様の震えが酷くなりましたわ。まるで、小ウサギか小鹿のようにね。

 愛しのシオン様のことを何度も馬鹿にされて、ましてや不貞を疑われたのですもの、私の怒りはまだまだ治まりませんわ。

 でもね……震えるセリーヌ様を見たら、まるで私が虐めているように見えますわね。か弱い容姿のおかげで。まぁ、私が虐めていると捉える方はこの場にはいないでしょうけど。もしいたら、神経を疑いますわ。

 震えているせいで、セリーヌ様からの返答はもらえません。さっきまでの威勢が嘘のようですわ。なので、自然と一方通行になりますわね。別に支障はないので、このまま進めますわ。

「そもそも、このピアスをお疑いなら、直接、シオン様にお伺いすれば宜しいのでは。なんなら、購入した商会の頭首もこの場にお呼びしましょうか。……それと、私の不貞の嫌疑ですが、それはクニール様から否定されましたよね。それでも、まだお疑いならば、裁判所に提出してある私の行動記録をご覧ください。十年以上前のものも用意できますよ。それでもまだお疑いなら、お好きなように私の身辺を調査してくださいませ。特に困ることは何一つありませんから。なんなら、今すぐこの場に、神官を連れてきてくださいませ。神誓しますわ。私にやましいことなど、一切ありませんから」

 私はゴードン伯爵家の方々を見据え告げました。

 貴方がたは証拠になるものを何一つ用意できませんでしたが、私の方はこの一か月で完璧に用意できましたよ。望むのならば、神誓も致しましょう。

 貴方がたにはその覚悟はありませんよね。証拠書類が用意できなかったから、裁判を欠席しようとした方ですから。宿題を忘れてさぼろうとする子供のようですわね。ましてや、仮病を使って退出しようともしていましたわね。本当に、子供ですわ……

 そうそう、頼りにしていた親友は離婚し侯爵家を追い出され、今は発言力も力もないと聞いてますわ。それならばと、不貞を偽造しようとするなんて。心底呆れますわ。結果、借金をさらに増やしたようですね。御愁傷様です。

 あぁもう、そのように、苦虫を噛み潰したような悔しそうな顔をして、私を睨み付けなくても。そういうのを、自業自得というのですよ。

 あの時、誠意ある態度で謝罪してくだされば、このようなことにはなりませんでしたのに。今尚、謝罪の言葉一つでないとは。貴方たちの頭には謝罪という言葉は存在しないのですね。

【威圧】は解いてますよね。なのに、ここにきて無言の抵抗ですか。まぁ構いませんが。

「……ゴードン伯爵家の皆様、貴方がたに掛ける言葉は、もはや何一つありませんわ。に貴族として、誠意ある態度を求めた私が馬鹿でしたわ。私もまだまだ甘いですわね」

「「最後……」」

 私の言葉に反応したのは、ゴードン伯爵とクニール様でした。

「ええ。ゴードン伯爵夫妻には、傷害罪に監禁罪、殺人未遂と虐待罪の容疑が掛けられてますから。貴族籍の剥奪は確定的ですわね。当然、セリーヌ様も。この裁判の後、ご夫妻は尋問に掛けられますわ」

 そう告げた後、私は視線を扉に向けます。つられるように、ゴードン伯爵夫妻とクニール様も扉に。そこには、騎士が四人待機していました。

 私の発言にざわつく場内。

 だけど、私とゴードン伯爵家、クニール様の間は水を打ったかのように静かでした。私とクニール様とは違い、ゴードン伯爵夫妻は現実を理解していないからでしょうね。

 裁判官が木槌を二度打ち、ようやく場内はおさまった。だけど、

「なっ!! こんなことが許されると思っているのか!? 冤罪だ!!」

「皇女だからって、していいことと悪いことがありますわ!!」

 今度はゴードン伯爵夫妻が騒ぎ出しました。やっと、自分たちが置かれている立場を理解したのでしょう。

「冤罪? 私が冤罪をでっち上げたと? ならお訊きしますわ。この場に、本来、もう一人いなくてはいけませんよね。その方は今どちらにいらっしゃるのですか? ゴードン伯爵」

 私がそう問い掛けると、ゴードン伯爵はハッとし、顔を青くして冷や汗をかきはじめた。夫人は気付いてませんね。興奮で顔を真っ赤にしてますもの。

 アリーヌ様はセリーヌ様と同じ、貴女がお腹を痛めて産んだ子供なのに……何故、こうも差別ができるのです? どうして? 

 淑女教育で表情は変わりませんが、私の胸の内は悲しみと憤りで荒れていました。

 
 
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