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覚悟はよろしくて
第十五話 彼らの未来は決まったようです
しおりを挟むさて、張り詰めた空気のままひと休憩した後、上映会後半が始まりました。
ゴードン伯爵が裁判所で、対応している事務員を怒鳴っている場面からですわ。
『こんな裁判、認められるわけないだろ!?』
何様なのでしょうね。
方や、冷静に対処する事務員。こういう輩が意外と多いのか、対応がやけに慣れていますわ。
『そう仰られても、訴えられた以上裁判は行われます』
子供でも理解できることを淡々と事務員は述べている。
『その裁判自体がありえんのだ!!』
興奮度が増す伯爵。ありえないって……さすがお花畑の父親ですね、その思考回路もよく似ていますわ。
『平行線ですね。これ以上騒ぐのなら、兵士を呼びますが宜しいですか』
そう事務員が告げると、渋々伯爵はその場から離れました。悪態を吐きながら。まるで、ならず者のようですわ。嘆かわしい。
ここで、場面が変わるーー。
ゴードン伯爵が馬車を下り、屋敷に戻って来た。執事が玄関の扉を開けると、夫人とセリーヌが待っていたトばかりに出迎え、詰め寄る。
『あなた、お帰りなさい。それで、裁判所はどうでした!?』
『お父様、何かの間違いだったのよね!!』
同時に尋ねる夫人とセリーヌ。
普通なら、暗い顔で戻って来た時点で、どうなのかは容易に想像できるのに。この二人は無理だったみたいね。そもそも、裁判所に抗議に行くこと自体、考えられない行為なのですけどね。
『…………間違いではなかった。抗議したが、聞き入れられなかった』
低い声でぼそりと告げる伯爵。力無く聞こえるが、その声音には明らかに怒りがあった。
『どうしてなの!?』
『私、何も悪いことしてないのに……酷い!! 酷過ぎるわ!! 悪いことをしていれのは、皇女様よね!?』
理不尽だと叫ぶ夫人とお花畑。そのヒステリックな金切り声に伯爵は切れた。
『煩い!! そもそも、セリーヌ、お前が皇女殿下にあんな質問をしなければ、こんなことは起きなかったんだ!! 謝りたくない。自分は悪くないって、謝りにも行かなかった。全部、セリーヌ、お前のせいだろ!!』
まぁ、確かにそうですけど、お花畑を育てたのは貴方ですよね。引き摺ってでも連れて来るべきでしたわ。それに、謝罪をしに来た貴方がたの態度も、なかなか酷かったって記憶してますが。
『酷い!! 私は尋ねただけよ。それを、こんな大袈裟にしたのは皇女様じゃない。自分が悪いことをしているから、気が動転したんだろって、お母様もお父様も言ってたじゃない!! だから、あまり事が大きくならないだろうって。嫌なら謝らなくていいって言ったのは、お父様とお母様じゃない!!』
そうだったのですね。私も、皇族も随分舐められたものですわ。
私が悪いことをしているって? それって何ですの? もしかして、私がお花畑の元婚約者と恋人同士だと考えているのかしら。心底、気持ち悪くて苛々しますわ。
「全てが終わったら、処理致しましょう」
ーー殺しましょう。
うん。副音声がはっきりと聞こえたわ。何度目かしら。もちろん、この台詞を吐いたのはスミスです。口角を上げながら。彼の中では、処理することは決定事項のようですね。
「全てが終わってからな。場は、俺が用意してやろう。最高の場をな」
シオン様の言葉に、私以外全員が良い笑顔で頷きます。クラン君も皆と同化してますね。かなり、染まったということですか……いいのか、悪いのか。
「…………程々にお願いしますわ」
そんな皆を見ながら、私は聞き入れないだろうお願いをしました。
『黙れ!! 一か月後に裁判だそ!! いったい、どうすればいいんだ……』
頭を抱える伯爵。すると、
『ウルグス侯爵家を頼っては如何です?』
夫人が妙案とばかりに言った。
『そうですわ!! お母様!! おば様にお願いすれば力になってくれるわ!!』
『そうよね。だって、皇太子妃の実母ですもの。上手くとりなしてくださるわ!!』
顔を輝かせる夫人とお花畑。
『なら、さっそく行きましょう、お母様』
『ええ!! 貴方も一緒に行きますわよ!!』
そう言い放つ夫人。
『…………そうだな。それしかないな……』
方針が決まったようですね。三人はさっき伯爵が乗って帰った馬車に乗り込んだ。予想範囲内の行動ですね。それよりも気になったことが一つあります。
「……完全に姉の存在忘れてますね」
両親とお花畑もですが、執事も気にしている様子はありません。当然、伯爵家で働く侍女たちもです。これは見過ごせませんわ。
「……スミス。明日、お茶会を開きたいですわ」
だから、わかってますよね。
「畏まりました、セリア様」
そう告げると、スミスは部屋の隅に目をやります。すると、影が一つスーと消えましたわ。
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