婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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覚悟はよろしくて

第二話 初のお茶会です

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 初のお茶会ですもの。私でも緊張します。先日の英雄の誕生パーティーよりも緊張していますわ。

 味方というか……知り合いがいませんもの。完全に浮いてますわ。ヒソヒソと夫人や令嬢たちが囁いていますわね。お茶会、嫌いになりそうだわ……

「セリアちゃん、来てくれましたのね」

 知っている声がしました。

 声の主は、シオン様からプレゼントされたドレスを着た私を見付けた義姉様でした。

「本日は、招待して頂きありがとうございます」

 軽く頭を下げます。顔を上げてから気付きました。義姉様のやや後ろに、私より一、二歳、年上の令嬢が控えていたのを。不審に思いながらも、会話を続けます。

「来てくれて嬉しいですわ。今日も可愛いわ、セリアちゃん。とても似合ってますわ。コンフォ伯爵は本当に趣味がいいわね」

「ありがとうございます。。義姉様のドレスも素敵ですわ。義姉様の魅力が引き出されてますもの」

 ドレスを褒めるのは、挨拶と同じく必要なこと。ここまでは、スミスとリーファの教え通りですわ。

「ありがとう、セリアちゃん。セリアちゃんとは、一度ゆっくりとお話したかったの。いつも、お邪魔虫が一緒だったでしょ」

 義姉様はコロコロと笑います。

 反対に、後ろに控えている令嬢は顔色が悪いですわ。表情も固まってますし。大丈夫かしら。

「そうですね。私も、義姉様とお話したかったですわ」

 だって、社交界で私が見習わないといけない方ですから。周囲は男ばかりですもの。唯一の女性であるユナ隊長は、正直、模範にはなりませんからね。スミスとリーファにずっと訊くのもなんですし。

「可愛いこと。セリアちゃん、まずは、そのピアスのことから聞きたいわ」

 訊かれるとは思いましたわ。話の振り方が自然ですわ。さすが、義姉様。周囲の夫人や令嬢たちも訊きたそうにしてますからね。ダンボになってますわよ。

 後ろに控えている令嬢も、ビクッと反応してますわね。でも、反応の仕方が周囲とは明らかに違います。気にはなりましたが、話を続けます。

「先日、シオン様から頂きましたの」

「あら、ついに交換なさいましたのね」

 自分ごとのように、義姉様は喜んでくれます。

「はい。なんでも、私を傷付けたくなくて、贈りたくても贈れなかったそうですわ。まぁ……子供と認識されていた時間が長かったから、仕方ないのかもしれませんが……」

 少しむくれながら答えます。

「そう怒らないの。私から見て、セリアちゃんはとても愛されてるわ。前のドレスといい、今日のドレスも、シオン様色ですものね」

 クスクスと笑いながら、義姉様はからかってきます。

「義姉様は意地悪ですわ。……でも、シオン様が側にいてくれているようで、とても幸せですわ」

 顔に熱が集まりますわ。扇でも、全部は隠せないですよね。

「本当に、私の義妹はなんて可愛いのでしょ。撫で撫でしたくなりますわ」

 また、コロコロと笑いながら義姉様は言います。その時でした。

「本当に、コンフォ伯爵様から頂いた物ですか?」

 信じられない質問をされました。質問をしたのは、義姉様の後ろに控えていた令嬢です。

 さっきまでの幸せな空気は霧散してしまいましたわ。

「セリーヌ!!」

 叱責すると同時に、義姉様は令嬢の頬を扇で叩きます。倒れ込む令嬢。私は冷ややかな目で、令嬢を見下ろします。

「貴女、何を言ってるのかしら? このピアスがシオン様からではないと仰りたいの? つまり、私が不貞をはたらいていると、糾弾してるのかしら?」

 自然と声が低くなります。口調もややゆっくりとなります。

「そっ、そういうつもりでは!!」

「では、どういうつもりで仰ったのですか?」

「私はただ確かめたかっただけですわ!!」

 涙目になりながら、それでも令嬢は私を見据えて言い放ちます。あまりにもその声が大きくて、騒ぎを聞き付けた姉らしき令嬢が慌てて駆け寄ります。

「セリーヌ!! 皇太子妃殿下、皇女殿下、これはいったい!?」

 姉の訴えを無視し、私は義姉様に尋ねます。

「義姉様、これはどういうことですか?」

「ごめんなさい、セリアちゃん。最後まで黙っているように、あれほど注意したのに……」

 表情を歪める義姉様。

「それは、後でいくらでも聞きますわ。そもそも、何故、私が不貞を疑わなければならないのですか!? それも、挨拶もされていない、見知らぬ令嬢に。最愛のシオン様が選んで、その手で身に着けてくださったピアスを。何故、穢されるようなことを言われなければならないのですか!?」

 最初は怒りで一杯でしたが、最後は悲しくなってきましたわ。

「セリアちゃん……」

 義姉様の声が耳に入ってはきませんでした。

「不愉快です。帰りますわ」

「セリアちゃん!!」
 
 義姉様の声を無視して、私は侍女と一緒に元城に戻りました。


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