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覚悟はよろしくて
第一話 本格的に社交界デビューです
しおりを挟む成人になったことで、私にもパーティーやお茶会の招待状が届くようになりました。
ほぼ表に出て来なかった私でも、一応皇女ですからね。私とお近付きになりたい方は結構いらっしゃるようです。素直に喜んでよいのか悩みますけどね。
とはいえ、私も忙しい身。全てに出席することなど出来ません。噂では、綿密な計画を立てて全て出席する強者もいらっしゃるとか。私からしてみれば、理解不可能ですわ。そこまで必死になって何をなさりたいのでしょうか。まぁ、色々あるのでしょうけど。
それはさておき、どれを出るべきか判断に悩みますね。パーティーに関しては、リム兄様が出席するものに絞れますが、お茶会に関してはどうしましょう。私的には、とても面倒臭いんですが。人間関係と貴族図が。勘違いしないで下さいね。お茶会を馬鹿にはしてませんよ。その重要性も把握しておりますわ。その上で、
「スミス。パーティーに関してはリム兄様のパーティーを中心に参加しますわ。無難ですからね。でも、お茶会の件は特に出席する必要はないと思いますが、どうでしょう? まぁ出席するとしたら、義姉様の実家ぐらいでしょうか」
カップをソーサに戻すとスミスに尋ねます。こういうことは、スミスに訊くのが一番ですからね。
言っときますが、面倒だから拒否したわけではありませんよ。贈られてきた招待状を隅々まで確認しましたが、こちら側の利益になるものを感じなかったからです。人脈も広がらなそうですし。なら、出席する意味はないでしょ。
「そうですね。ウルグス侯爵家以外は無理して出席する必要はないかと思います」
悩む私に、スミスが助言してくれます。ウルグス侯爵家は義姉様の実家ですわ。
「なら、今回はウルグス侯爵家以外は全てお断りの返事を致しましょう。パーティーに関しては、シオン様と相談して決めますわ」
「それが宜しいでしょう」
不参加の返事は一応私自身が書きますわ。従者に任せる人もいると聞きますが、最初ですし、最低限のマナーだと思いますの。
その日の夜。
シオン様に、お茶会とパーティーの件を話しました。すると、シオン様が「急いでドレスを新着しないとな」と言い出しました。さも、当然のように。
「……シオン様。お茶会のためにドレスをわざわざ作らなくてもいいと思いますが」
やんわりと断ります。だって、この前のパーティーで作って貰ったばかりですわ。勿体ない。数回しか着ない物に、必要以上お金を掛ける必要はありませんわ。
「何故だ? セリアは皇女であり領主だぞ。お古はだめだろ」
正論で攻撃されます。確かに、シオン様の仰ることは間違ってはいませんが、どうしても、ドレスに使うよりも整備や補修にお金を掛けるべきだと思うのです。
「一度も着たことのないドレスがありますから、それを今風に仕立て直せば大丈夫ですわ」
そう答えると、とても不満そうな顔をされましたわ。でも、こればかりは譲れません。ドレスを新着するってことは、それに似合う装飾品も必要になりますわ。何度も言いますが、勿体ないです。宝石も仕立て直せばいいのです。必要に応じて。
「セリア。それじゃあ訊くが、ドレスを何着持っている?」
「ドレスの数ですか? そうですね、四着ですわね」
先日シオン様から頂いた分も入れて。そう答えると、シオン様が盛大な溜め息を吐きました。
「それで、昼に着るドレスは何着ある?」
「一着ですわ」
「それ仕立てたのいつだ?」
「二年前ですわね。あっでも、皇宮に戻れば何着かあったと思いますが」
背丈もそれ程伸びてはいませんし、二年前のドレスですが、十分着れるように仕立て直せるでしょう。
「二年前のドレスは子供用のドレスだろ。セリアいいか。質素は美徳だが、質素過ぎると貧乏性に見えるぞ。皇女であり領主であるセリアが、貧乏性に見えるのは、果たしてこの皇国にとってどう映るだろうな」
そう言われると、何も言えませんわ。悔しいですが。
「前に言ってたよな。パーティー会場は戦場だって。ドレスは装備だとも言っていたな。セリア。お前は、戦場で装備をケチるのか?」
シオン様は更に畳み掛けてきます。
確かに、前にそう言いました。覚えてますわ。一年前ですけどね。完全に私が言いまかされていますわ。
「……ケチりはしませんわ。でも」
そう言うしかありませんわ。
「それともセリアは、俺が愛している女にドレス一着も贈れない、甲斐なしだと思っているのか?」
最後まで言わさずに、シオン様は悲しそうな表情でそう尋ねてきます。
完敗ですわ。シオン様には勝てません。心底悔しいですが。だから体勢を変え、シオン様の膝の上で向かい合います。
「わかりましたわ。新調しますわ」
耳元でそう囁き、私が贈ったピアスに口付けます。驚くシオン様の唇を奪うと、捕まる前にさっさと逃げ出します。部屋を出る間際に真っ赤な顔のシオン様を見て大満足。
ささやかな意趣返しですわ。
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