婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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我儘を言っていいですか

第五話 恙無く終わりましたわ

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 恙無つつがなく、初めてのパーティーは終わりましたわ。

 最後まで、私は好機な目で見られましたけどね。

 幸いにも、皇女である私に直接囁いてくる勇者はいませんでしたわ。近くで囁く勇者もいませんでしたね。居たら居たらでかえって問題ですけどね。

 教育が出来ていない者が、皇族が主催するパーティーに参加した。

 家の恥な上、下手したら降格されるかもしれませんもの。信用もだだ下がりになりますからね。そうなれば、力のない家は潰れるかもしれませんね。

 まぁ実際、一年前に馬鹿をやった者たちは、皆人であることを止めてしまいましたわね。特にあの二人は、今も仲良く餌として頑張って下さってますし。流石、将来を誓った運命の恋人同士ですわ。

 私も負けてはいませんよ。シオン様とは運命の相手、番だと思っております。何があろうとも、その手を離すつもりはありませんわ。

 それはさておき、パーティーでのことですが、おそらく私の評価は大きく二つに分かれたと思いますわ。

 私の我儘で無理矢理シオン様と婚約関係になったために、表面上の関係でしかないという説と、反対にお互いを思いやり愛し合っている説。半々といったところでしょうか。

 後は、別のパーティーにシオン様と一緒に参加して仲の良さを皆に見せ付ければ、私の我儘説は次第に消えて行くことでしょう。一番の解決の道はピアスなんですけどね。そこは敢えて何も申しませんわ。

 それにしても、途中、お義姉様のフォローがなければ、私はあの台詞を告げる機会は訪れませんでしたわ。

 もし訪れなければ、圧倒的に私の我儘説が過半数を占めていたでしょうね。

 それは、後の社交に大きな影響を与えたことでしょう。一度付いたイメージを払拭するのは、かなり難しいですからね。そうなれば最悪でした。

 まぁそれでも、実績がそれなりにありますからね。皇女を無しにしても。なので、多少我儘皇女と陰口を叩かれても特に痛くはありませんわ。ただ気分的に嫌ですし、これから先何かしらの交渉の際、色眼鏡で見られるのが不愉快なだけですわ。なので、出来れば払拭したいですね。

 幸いにも、お義姉様のおかげで決定的なものにはならないで済みました。感謝しかありませんわ。流石、リムお兄様が惚れ込んだ方ですわ。後でお義姉様にお礼を言っとかないといけませんね。好物を添えて。

 概ね平和に終わったパーティーでしたが、総合的に見れば、私の社交デビューはまぁまぁ成功したといえるでしょう。

 ただ一つ気になる点が。

 パーティーの中盤、私がシオン様の想いを告げたあの後から退出するまで、とても強い視線を感じていました。

 まるで、獲物を射るような熱い視線。

 視線を合わしたら面倒くさそうなので、一切視線を合わせることはしませんでしたが気になります。

「……確かあの方は、クニール公爵家の方でしたよね」

 ドレスを脱ぎながら呟きます。一応、参加者貴族のことは把握しておりますわ。

「嫡男のレイモンド様です」

 本当に私の侍女は優秀ですわね。直ぐに答えが返って来ます。

「私と関わりがなかった方ですよね」

 名前は存じていますが、一度も会ったことはありませんよね。接点もなかった筈です。

「一切ないですね」

 ほぼ一緒にいる侍女の言葉に私は頷きます。

「そうよね。ならどうして、あの様な目で見られたのでしょう」

 不思議ですわ。

「それは……」

 珍しく侍女が言い淀んでいます。
 
「どうかしましたか?」

 鏡越しに侍女を伺います。何とも言えない表情をしていますね。

「おそらく、セリア様の魅力に改めて魅了されたのだと思います」

 私の魅力?

 本当におかしなことを言いますね。そんなものある訳ないでしょ。可笑しすぎて笑いが込み上げてきましたわ。

「それはないわ。絶対に」

 だって、よく知っていますから。伯爵家が王都の貴族たちにどう思われているかを。一年前よりはかなりマシになったとはいえ、正直まだまだ認識度は低いですからね。低い分、軽く考えられがちです。嘆かわしいことですが。でもそれは、いずれ払拭されると信じております。いえ、払拭させてみせますわ。

 その伯爵家に引き籠もっていた私に、何の魅力があるのでしょう。

 皇女だからですか? 

 皇族に次ぐ家柄の嫡男にとって、それは然程魅力があるとは思えませんわ。

 ならば、私にですか?

 それは断じてありませんわね。私のような幼児体型な女にどこに魅力が? 容姿も幼いですし。

 シオン様は幼少時から一緒にいるから受け入れてくれたのです。でなければ、只の子供の戯言と一笑されたでしょうね。自分のことはよく把握してますわ。

「いつも思いますが、セリア様は自分を低く見ておいでです」

 悲しそうに言われたら、否定することが出来ませんわ。本当に、私に甘い侍女です。

「……取り敢えず、次のパーティーまで会うことはないでしょう。特に問題がなければ、彼が参加するパーティーに参加しなければいいだけですしね」

 なので、今は忘れることに致しましょう。考え事をしながら眠るのは、肌にはよくありませんからね。


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