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我儘を言っていいですか
第一話 ピアス
しおりを挟む「平和ですね~~」
少ししかない休憩時間に、大好きなお友達と一緒にお茶とお菓子を楽しめるのって、ほんと久し振りですわ。幸せで体の力が抜けますね。
ちょっとはしたないですけど、だらけても構いませんよね。えっ、もうだらけるって。見逃して下さいませ。
「クスッ。そうよね。いきなり突撃して、絡んでくる馬鹿もいないし、わざと見せつけに来る馬鹿もいなくなったからね。ほんと、平和だわ」
相変わらず絶好調ですね、リーファは。
「それが普通なのでは」
静かに突っ込むジーナ様。確かにジーナ様の仰る通りですわ。
これが普通なのです。今までが普通ではなかっただけですわ。明らかに異常な状態が続いていましたもの。二度と起きないことを、心から願うばかりですわ。
正直に言えば、例え起きたとしても、私たちに関わらなければお好きにどうぞ。それが今の心情ですけどね。別に、投げやりになったわけではありませんわ。もう、当事者はこりごりなのです。
「で、セリアはどうなの? 着けないの?」
いきなり、リーファの顔がアップになりました。過去に意識が飛んでいましたわ。全く会話が耳に入っていませんでした。
「ごめんなさい、リーファ。聞いていませんでしたわ」
ここは素直に謝ります。
「もう。しょうがないわね。セリアはピアスは着けないの? って訊いたのよ」
リーファは耳たぶを飾っている、小さな紅いピアスを見せながら訊いてきます。
いつ見ても、紅くて綺麗な宝石ですね。魔法を付与されてますし、これを贈った方は、余程リーファのことを大事に想ってらっしゃるのですね。
「ピアスですか……それは、今すぐにでも着けたいですわ」
ずっと羨ましく思ってましたから。私も着けたいですわ。
緑色のピアスを。
前々からそう希望していました。だって、年頃の女子なら皆夢見ますもの。普通の女子から掛け離れている私でも。
お父様もリムお兄様もお母様も着けています。勿論、目の前にいるリーファも。
愛する人の瞳の色のピアスを。
そして反対に、私の瞳の色のピアスをシオン様に着けてもらいたい。でもそれって……私の我儘なのでは。
「婚約して、それなりに日も経つんだから、別に着けてもおかしくないでしょ。それに、良い魔除けにもなるんじゃない?」
確かに、リーファの言う通りですけど。
「……それは、私からは言えませんわ」
男性側から渡してくれるものですし。催促するものじゃありませんから。
とはいえ、本当はとてもとても欲しいですわ。実はコッソリと、シオン様の分は用意しているのです。宝石ではありませんが、それ以上の付加価値を付与したものを。まだピアスに加工はしていませんが。いつでも加工出来ますわ。
「セリアって、妙なところで弱気になるのよね」
そんなの、自分でも分かってますわ。
私から逆プロポーズして、押しに押しまくって落とした自覚はありますわ。あの時は必死でしたから。どうしても、シオン様の隣に立ちたくて。娘ではなく、伴侶として見て欲しくて必死でしたもの。
でも、今は……これ以上望んでいいのか不安になりますわ。だって、今が幸せ過ぎるから。シオン様の気持ちを疑ってる訳ではないのです。十分過ぎるほど、愛されています。
だから、怖いのです。
私のおねだりが、大きな波紋になってしまうかもしれないのが。ほんと、私らしくはありませんね。
「……リーファは、婚約してからプレゼントされたのですよね」
ジーナ様の前で訊くのはどうかとは思いましたが、振ってきたのはリーファなので、ここは素直に訊きましょう。
「ううん。違うわよ。私がおねだりしたの」
「えっ……えぇ~~!! ほんとに!? リーファから!?」
思わず、大声をあげてしまいましたわ。いらない所で注目を浴びた私が、慌てて座るのを、リーファは悪戯が成功した子供のように笑って見ています。いい性格してますわ。
「そうでもしないと、絶対くれなかったわね。あの人は、白い結婚を全面に出したかったみたいだし」
リーファは苦笑しながら教えてくれました。やはり、お互い愛し合っていても、政治的意図が強い結婚だからでしょうか。それとも、リーファを護るために。どちらにせよ、部外者の私は何も言えませんわ。
ただ……お互いに、辛かったのだと推測は出来ます。
でもリーファは一歩を踏み出した。
その勇気は賞賛に価しますわ。
「そんな顔しないでよ、セリア。私は今、とても幸せなんだから。まぁ正直、これから先色々あると思うけど、心からおねだりして良かったって思ってるんだから」
そう言いながら微笑むリーファの顔は、とても綺麗で光が満ち溢れていました。だけどその笑顔は、今の私には眩し過ぎて、親友なのに直視出来ませんでした。
人を愛するのって、こんなにも臆病になってしまうものなんですね……シオン様。
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