婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか

間違えたのね。なら……

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 全身が痛い。ズキズキする。真っ暗で何も見えないよ……手足一つ動かせない。どうして……?

 もしかして、私縛られてるの!? 嘘!? マジで? こんなシーン、どこにもなかったよ。だって、私はヒロインだよ。皆に愛される存在なのよ。なのにこんな扱い許される訳ないじゃない。

 さてはあの女ね。ほんと忌々しいバグが。

「解きなさいよ!! 糞女!!!! こんなことをしても、私は絶対にシオン様を諦めないんだから!!!! 今すぐ解いてよ!! シオン様の元に絶対行くんだから!!!!」

 こんなことをしても無駄よ。どんなにゲームがバグっても、ストーリーは変更されないんだから。私がシオン様と結ばれるのは、決定事項なの。糞女、アンタがしてることは、只の足掻きよ。無駄な足掻き。可哀想よね。

「うるせぇーな。まだ夢を見てるのか? どこまでもお目出度いやつだな」

 明らかに馬鹿にした声に、私は更にヒートアップする。当然よね。

「アンタこそ、何訳の分かんないこと言ってるのよ!! 今すぐ私を開放して、シオン様の所に連れて行きなさい!! それで、アンタのこと許してあげる」

 これでもかなり譲歩してやったのに、馬鹿笑いされた。マジ腹立つ。シオン様に言って、絶対魔物の餌にしてやる。その時になって、謝っても許してあげないんだから。

「許す? お前が俺を? あ~~おかしい。」

 更に馬鹿笑いは大きくなる。完全にイカれてるわ。コイツじゃ話にならない。

 でも、絶望なんてしてないわ。だって、私はヒロイン。ヒロインは困難に屈しないのよ。そして最後に、王子様と結ばれて一生幸せに暮らすの。だから、私はありったけの声で助けを求めた。

「お願い!!!! 誰かいないの!? 誰か助けて!!!!」ってね。

 すると、複数の足音が聞こえた。

「ほらね。助けに来てくれた。馬鹿男、アンタはもう終わりよ」

 嗤いながら言ってやった。すると、

「……馬鹿はお前の方だぜ、馬鹿女。そろそろ現実見ようぜ」

「はぁ~~何言ってるの?」

 私がそう不快感まるだしでそう言った時だった。足音が私のすぐ側で止まった。

 言い争う声も、馬鹿男を取り押さえるような音が全くしない。

 ……私を助けに来てくれたんじゃないの?

「ほらよ」

 馬鹿男の声と同時に光が目を襲う。一瞬白くなった視界はすぐに元に戻った。

 目隠しを持った男。そして、私を取り囲むように立つ男たち。彼らは皆、同じ服を着ていた。私はその服をよく知ってる。

「…………う……嘘よ……」

 漸く出た声は、とても小さかった。呆然とする私に、馬鹿男は見下ろしながら言い放った。

「馬鹿女。夢の時間は終わりだ。
 楽しんだか? これからは、自由に動けないからな。お前はこれから信仰の対象になってもらう。光栄な話だろ。チヤホラされるぜ。あくまで表面上だけどな。されるの好きだろ?」

 必死で首を横に振り拒否する。

 嫌よ。絶対に嫌!! だって、それじゃあ、私は監禁エンドじゃない!!

「お前が主人公の物語は終わったんだよ。ここからが本編だな。ちゃんと役割を全うしてもらわないと困るぜ。
 なぁに、心配するな。頭の悪い馬鹿女でも出来る簡単な仕事だから、安心しろ」

 それだけ告げると馬鹿男は立ち上がって、仲間に何か指示をした。

 途端に眠くなる。激しい睡魔に襲われながら、私は思う。

 こんなのゲームになかった。ここはゲームの世界じゃないの……って。

 ……私はヒロインじゃないの?

「違うに決まってるだろ」

 思ってたことが知らず知らずのうちに口から出てたみたい。明らかに馬鹿にした声がまた聞こえた。

 私は間違えたのね……。リセットボタンはどこ? 早く押さ……ないと…………今ならまだ……間に合…………

「合わねーよ」

 馬鹿男の声が聞こえた気がした。





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