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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか

第十一話 適任者がいましたね

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 中々、お母様は折れてくれませんでしたわ。

「絶対嫌よ!!」

 相当嫌悪してますからね。拗れに拗れて殺し合いをした仲ですし、まぁ当然と言えば当然でしょう。異空間魔法に封印することは簡単ですが、その中には自分の私物も入ってる訳ですからね。勿論宝物も。汚染されると思っているのでしょうね。

 その気持ちは、私も痛い程理解出来ます。私がお母様の立場なら、お母様と同じ反応をしましたわ。

 だけど、ある意味魔物以上に危険な物を、皇国に置いとくことを見過ごす訳にはいかないのです。リムお兄様も同じ気持ちなのでしょう。私たちは親不孝な子供ですわね。

「そう言っても……この地に残してると、万が一ってことがあるでしょう」

 私は困り切った顔で告げます。

「…………確かにそうだけど……」

 グラついてますね。あともう一押しですわ。自分自身が嫌になる程性格悪いですね。

「母上。お願いします」

 リムお兄様が頭を下げます。当然私もです。家族に甘いお母様なら、これで折れてくれるでしょう。

 お母様は盛大に顔を歪めてますわ。心が痛みますが、ここは心を鬼にして押し通さないと。

 すると意外な所から、お母様の援軍が現れましたの。

「……無理して、セイラが封印することないだろ。それに、リム皇太子殿下もセリアも、わざと悪者になる必要もない」

 シオン様の台詞に言葉を失う私たち。

「…………じゃあ、どうすればいいのです?」

 少し間が空いてから、独り言のような力ない声で尋ねました。そんな私を、シオン様は優しい目で見詰めてくれます。

 シオン様は私の頬をひと撫でしてから、お母様とリムお兄様に視線を向けます。

「二人とも忘れていないか? そういう事に長けた奴がいるだろ? 奴なら、喜んでするぞ。確実に残酷にな」

 え………? そんな方いました? あれ? お母様が苦虫を噛み潰したような渋い顔をしてますわ。リムお兄様も。……って、まさか!?

「……お父様ですか?」

「適任者だろ?」

「まぁ確かに……お父様なら……」

 容赦ないでしょうね。お母様を追い込んだ敵なら、徹底的に甚振いたぶり壊すでしょうね。お母様が一言壊さないでと口にしたら、壊さない分扱いが酷くなりそうですね。どんな事をするのか、想像するのも怖いですわ。

「じゃあ、決まりだな。セイラは会いにくいだろうから、俺が直接皇帝陛下に届けて来るよ。リム皇太子殿下もセイラもそれでいいか?」

 シオン様はお父様との交渉役をかって出てくれました。一番嫌な役どころです。且つ難しい役どころですね。

「……そうしてもらえると助かるけど、いいの?」
 
 お母様に再度確認され、シオン様は頷きます。

 ん……?

 見詰め合うの長くないですか? 何でそんなに優しそうな目でお母様を見ているんです? お母様も頼り切った表情で。……今、お母様って独身ですよね。私の容姿って、お母様似ですよね。

「シオン様!」

 私は取られないように、そして牽制するように、シオン様に抱き付きます。考えるより体が動きました。

 そんな私の行動を、お母様は呆れながら「間違ってもないわ」と否定し、おかしそうに笑いました。リムお兄様は苦笑してます。シオン様は嬉しそうでしたわ。

 私は……穴があったら入りたいですわ。

 


 後日ーー。

 シオン様はお母様がこの地にやって来た経緯、そして、今回の件をほぼ隠さずに話しました。

 私とリムお兄様は傍観者に徹します。

「セイラは本当に優しいな。そんな目に合いながらも、壊さないで封印だけって言ってるのか……セイラらしい。
 なら、俺もその気持ちに答えないとな。大事な大事な妻の願いだ。丁重におもてなししよう」

 そう告げながら、シオン様から魂の入った瓶を受け取ります。もの凄く良い笑顔で。目は全く笑ってはいませんけどね。

 瓶の中の魂が、微かに震えているのは私の気のせいでしょうか。たぶん違いますね……。

 
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