婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか

第十話 倫理感はどこにいきましたか

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「…………生ゴミにでも出す?」

 ポツリと瓶を見ながらお母様が呟きます。

 ん……? 今、なんて言いました? 生ゴミ? 聞き間違いですよね。えっ、聞き間違いじゃない。そうですか。ハハハ……。

 口には出来ませんよ。でも、口元は完全に引き攣ってると思いますわ。

 このままでは間違いなく、初代聖王様は生ゴミ行きです。魂なので、匂いが分かるかは分かりませんが。もし何らかの衝撃で瓶が割れ、生まれ変われたとしたら、生臭い体臭をしてそうですね。私なら、絶対人がいない場所に引きこもってしまいますね。

「さ、さすがにそれは駄目でしょう。お母様ったら、冗談が下手ですね」

 冗談には全く聞こえませんでしたが、ここは冗談ってことにしときましょう。そうでないと怖いですわ。今も、背中がゾクゾクしてますもの。

「冗談じゃないけど」

 否定しないで下さい!! 何言ってるのって顔をしているけど、言ってる内容、かなりぶっ飛んでますからね。

「生ゴミに出したら、回収者の人に迷惑が掛かるんじゃないか?」

「いや、問題はそこじゃないだろ?」

 リムお兄様の言う通りですわ。

 確かにシオン様の心配も分かりますが……。見付けた回収者は腰を抜かすかもしれませんね。瓶の中に入ってるのが魂だって気付けばの話ですが。

「そうなの? じゃあ、仕方ないわね。……生ゴミが駄目だったから、今ここでぶっ壊す?」

 破壊一択なんですね。人の手か自分の手かの違いだけですか。

「あの……一応訊きますが、倫理感はどこにいきましたか?」

 誰にも触れないので、念のために確認しときましょう。

 何を言ってるの的な顔をされましたわ。そんなに変な事を言ってるつもりはありませんが。

「そんなのないわよ。コレに関してはね」

 ないんですか……。

「コレ解き放ったら、まず間違いなく自力でシスターの所に行くわよ。そして寄生するわよ。
 魔力量が以前よりかなり少ないから、転移するのも一苦労。
 だとしたら、当然、この国で色々しだすわね」

 それはかなり嫌ですわ。今もかなり面倒ですのに、それ以上面倒くさいことになりますね。私とこの皇国に実害がなければ構いませんが。そういう訳にはいかないでしょう。

 それに、シスターの推しはシオン様ですし。

 初代聖王もシスターにつられるかもしれません。そうなったら、速やかに退場してもらいますわ。何処に? とは訊かないで下さいね。

「まぁ……魔力量は以前よりは少なくなるから脅威ではないけど、魔力を増やすためなら、平気でこの国の民を実験台に使うかもね。
 それでも、倫理感は必要?」

 確かに。

 自分が復活するために、大勢の魔術師の命を奪ってますしね。自国の民の命が大事です。未然に防がないといけませんね。

「ならば、お母様の空間魔法で永久に封印するというのはどうでしょう?」

 それならば、ギリギリ大丈夫なのでは。妥協案としては、ここらへんが落とし所ではないでしょうか。お母様はもの凄く嫌な顔をしていますが。

「え~~」

 え~~ではありませんよ。可愛く膨れても引きませんよ。ここは何としても、お母様に折れてもらわないと。そうですよね、リムお兄様。

 リムお兄様に視線を向けると、大きく頷いていますわ。同意見なのですね。後はお母様を納得させないといけませんわね。

 まぁ……封印した後、内緒でお母様が破壊したとしても、私たちは知る由もないことですけどね。勿論、口にはしませんよ。そんな事を内心考えている私も、大概ですよね。


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