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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか
第五話 羞恥心ですか……
しおりを挟む「母上の顔色も、思っていたよりも良くて安心した」
ホッとした表情のリムお兄様。強張っていた体が脱力します。
そうですわね。こんなにダメージを受けたお母様を見るのは、お互い初めてですもの。その気持ち分かりますわ。それにしても、マジックポーションが思いのほか良く効いて良かったですわ。
「後はゆっくりと寝て頂いて、魔力を回復するだけですわ」
魔力不足の治療法は寝ることですからね。そんなことを考えていると。リムお兄様がポツリと呟きました。
「…………いつも、その距離感なのか……?」と。
リムお兄様は何とも言えない顔をしています。ましてや、私と視線を合わせないようにしています。頬も赤いような気がするのですが……引っばり回し過ぎたかしら。まぁでも、しんどそうな感じではなさそうですし、大丈夫でしょう。
「距離感……? 何のことです?」
突然の余所余所しさに、首を傾げてしまいましたわ。そんな私の頭を、シオン様はずっと撫でています。時には、頬も。くすぐったいですわ。
「それだ。シオン殿との距離感だ」
頬の赤みが増してますね。
「シオン様との距離感ですか……? いつも、このようなものですが。まだ大人しい方ですよ。
それよりも、顔が赤いですわ。しんどかったら、遠慮なく言って下さいね」
「…………やっぱり、セリアは父上の子だな」
何故か疲れた声でボヤくリムお兄様。
「何を今更なことを言ってるのです?」
私がお父様と似ていることは自覚しておりますわ。内心複雑ですけど。でも、私はお父様のような馬鹿はしませんわ。
「いや……男女間は逆だけどな。父上は母上が傍にいる時はずっと触っていたな」
確かに。
「そう言われれば、そうですね。お母様はとても嫌がっていましたが」
何度も伸びてくる手を叩いていましたね。子供の前で攻防戦を繰り広げていましたわ。
「だが、セリアはしないよな」
攻防戦をですか?
「嫌ではありませんから。寧ろ、幸せですわ」
そう素直に告げると、リムお兄様は苦虫を噛み潰したような表情をしました。さすがに、少しムカッとしましたわ。
「そういう所がよく似ている。セリアがもし男なら、シオン殿と同じことをしているだろ?」
「勿論」
即答ですわ。
「妹が幸せなのは兄としても嬉しいよ。シオン殿なら、セリアを幸せにしてくれると信じてるからな。
でも……少しは母上を見習え。羞恥心を置き去りにするのは、どうかと思う。兄妹間でもな。触りたければ、二人だけの時にしろ」
羞恥心ですか……ちゃんと持ち合わせてるつもりですが。そもそも、
「軽く触るぐらいですよ」
「ずっとだろ」
そういえば、そうですわね。戻って来た私とリムお兄様を出迎えてくれた時から、シオン様は私の体のどこかに触れていますね。主に頭か手だけど。特に意識はしませんでしたわ。それこそ、いつものことなので。
「時間の問題ですか……?」
難しいですわね。あっ、シオン様の手が止まってますわ。触れて下さいませ。シオン様の手を腕ごと抱き締める私にを見て、リムお兄様は疲れた顔をして一言こう呟きました。
「…………言うだけ無駄だったな」と。
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