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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか
第一話 逃しませんよ
しおりを挟む皇宮が全壊もしくは半壊している覚悟があったのですが、どうやら無事でした。王都も無事です。幸か不幸か、暴れる程の心の余裕はなかったようですね。自業自得なので、同情はしませんが。
どこにも物理的な被害がないことに、内心、ホッと胸を撫で下ろしていたら、早速、リムお兄様に見付かり連行されました。
連れて来られたのは執務室。
主はいませんが、まぁここが、一番防音がしっかりしてますからね。当然でしょう。コンフォート皇国の皇帝陛下が再起不能になっているなんて、他所に知られる訳にはいきませんもの。いくら皇宮内でも。
とてもとても不機嫌な宰相様が、待っていました。でしょうね。あ~~帰りたい。
「……で、一体何があったんだ?」
そう切り出したのは、リムお兄様。我が家族の良心的存在が、そんな顔は似合いませんわ。にこやかな笑みですが、目が全く笑ってはいませんもの。そうなる気持ちは理解出来ますが。
「とうとう、お母様に三行半を突き付けられましたの」
沈んだ声で答えます。
「…………殺され掛けたのか?」
リムお兄様の目がキラリと光ります。
咄嗟に出て来る答えがそれって……かなり問題だと思いますが、ここは突っ込まないでおきましょう。
「一触即発の空気にはなりましたね。……ほんと、お母様が絡むとお父様は駄目になりますね」
「何があった?」
リムお兄様は否定しないで訊いてきます。口調は穏やかですが、その声音は反対ですね。これは立派な詰問でしょう。
「……実は学園に、教国のシスターが入学して来ましたの」
「教国? って、あの山脈を越えた国のか!?」
二人とも驚いてますね。穢れた存在だと公言している国に来たのだから当然ですね。
「ええ」
「何故?」
「さぁ……例のヤツですわ」
それで納得するのもどうかと思いますが……。当事者は常識外と認識されているので、ここは軽く流されましたわ。ただ、例の件は訊いてきましたが。
「落ち人か?」
「はい。ただ人工的なものだとーー」
「人工的なものですか?」
ずっと黙って、私とリムお兄様の話を聞いていた宰相が尋ねてきます。
「無理矢理、召喚されたようですわ。多くの魔術師の命を対価にして」
「キナ臭いですね」
「ええ。何の目的かは存じませんが、キナ臭いですね」
キナ臭過ぎます。何らかの大きな意図があってのことでしょう。遥か離れた国のことですが。
「つまり、皇后様は、単身それを調べに行かれたのですか?」
私は頷きます。
「で、皇后様はご無事で?」
「今は眠ってますわ」
「魔力を消耗したからですか?」
「ええ。私も何があったのかは知りませんの。ただ……殺り合ったみたいですけどね。それも、かなりの魔力を消耗するくらいに」
嘘は吐いてはいません。言葉を濁す私に、宰相様は自分で眉間の間をゴリゴリと揉んでいます。リムお兄様も。
「母上がそこまでする相手は気になるが……まぁそれは今はいい。母上は無事か?」
「ええ。今はゆっくりと休むのが一番の治療ですわね」
ホッと胸を撫で下ろす、リムお兄様と宰相様。しかし、その表情は次第に疲れた顔へと変わりました。
ここまで迷惑を掛けまくっているお父様ですが、突撃して来ませんね。ということは、
「それで……リムお兄様、宰相様、お父様は今何処に?」
「昨晩、強制送還された後、暫く放心状態だったんだが、すぐに何処に行ってしまわれた」
つまり、何処に行ったか把握していないってことですね。それはそれで、かなり問題があると思いますが。そもそも、お父様クラスの魔術師に首輪は付けられませんもの。仕方ありませんわ。
とはいえ、放置は出来ませんわね。だから、凄く面倒なんですの。はぁ~~。溜め息が出ますわ。
「宰相様。暫くお時間頂けますか?」
取り敢えず、お父様の様子を見て来ますか。
「はい。宜しくお願い致します」
深々と頭を下げる宰相様。
危険を察知したのか、後退るリムお兄様の腕をギュと掴むと、満面な笑みでリムお兄様を見上げます。
「家族の問題は家族で解決しないといけませんわ」
真っ青になるリムお兄様。嫌とは言わせませんわ。
「陛下のいる場所がお分かりに?」
「たぶん、あの場所に……」
お母様を一番感じられる場所に、おそらくお父様は居るでしょう。
それじゃあ、早速行きましょうか。リムお兄様。
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