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また、乙女ゲームですか

第三十三話 まさかの強制送還です

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 頭を下げ、お父様に謝罪する私とシオン様を咎める声が響きました。

「頭を下げる必要はないわ。二人とも顔を上げなさい」

 その声は大きくはありませんでしたが、凛としたものでした。

 振り返ると、立っていたのは寝間着姿のお母様です。さすがに、上にはカーディガンを羽織ってますが。

「お母様!! 大丈夫ですか!? まだ寝ていないといけませんわ」

 そう声を上げる私に、お母様は「大丈夫よ」と微笑みます。そう言いますが、とても辛そうですわ。

 なので、お父様が慌てて駆け寄ろうとしたら、「来ないで!!」と鋭い声でお母様は拒否しました。

 その声に、ピタッと動きを止めるお父様。顔色が見る見る間に真っ青になっていきますわ。さっきまで、私とシオン様を威圧していた人がですよ。

「…………セイラ……」

 弱々しい声で、お父様がお母様の名前を呼びます。

「二度目はないと言った筈よね」

 凍るような冷たい声音で告げるお母様。

 お母様が言う二度目が何なのか、私とお父様には理解出来ました。だから、申した上げたのに……まぁ、私が口にした時、既にアウトでしたけど。

「よく出来たものね。血を分けた自分の娘とその婚約者に対して、殺気を放つなんて。それも理不尽な理由で。
 言っとくけど、私が倒れたのはセリアやシオンのせいじゃないわ。私が我儘を通したからよ。なのにーー。
 そもそも今回の件は、コンフォート皇国に一切関係ないでしょ。さっき、セリアも言ってたけど、一切国交もなく、遥か遠くの国で起きたことでしょ。それをいちいち報告しなければいけないの? 別に事後報告でもよかったでしょ。違う? なのに、威圧を掛けて無理矢理謝罪させようなんて。
 それに、成人して間もない娘を臣下扱いなんて、到底許せやしないわ」

 完全にお母様キレてますね。

「……それは、セイラを心配したからであって……」

 しどろもどろで答えるお父様。そうかもしれませんが、その答えは駄目ですわ。油に火を注ぐことになりますわよ。

 お母様はわざとらしく、大きな溜め息を吐きました。そして告げたのです。

「……つくづく思い知ったわ。
 貴方にとって、セリアやリムはそれだけの存在なのね。ジムのことは関心すらないし。私にとって、子供たちは一番大事な存在だけど、貴方にとっては五番目以降なのね」と。

「そっ、そんなことないぞ!! 俺にとって、リムもジムもセリアも大事な子供だ」

 う~~ん。それは正直、微妙ですわ。少なくとも、お母様よりも下ですけどね。

「子供? 臣下でしょ。十六歳の子供に、色々押し付けて。学園にまともに通えていないのよ。夜も遅くまで仕事をこなして、起きるのも誰よりも早い。それが親のすることなの」

 その言葉に、私は胸が熱くなりましたわ。ちゃんと見てくれてる人がいるのって、とても嬉しいことですよね。勿論、シオン様も見てくれますよ。

「……それは……」

 言葉に詰まるお父様に、お母様の目が更に鋭くなります。

「もういいわ。約束通り、私は貴方と離縁します」

 そう宣言すると同時に、お母様の手元に書簡が現れました。あれは……書簡の形をしてますが、魔法具ですね。ということは、お母様本気なのですね。

 だってあの魔法具は、魔力によって交わされた契約書のようなものです。その効力は絶大で、絶対に反故が出来る品物ではありませんもの。

 つまり、お母様は契約を履行するつもりなのですね。履行すると、魔法具は消えてなくなりますから。

「まっ、待ってくれ!!!! それだけは!!!!」

 お父様が必死な形相で、お母様から魔法具を奪おうとします。

「待ちませんわ」

 そう言い放つと、無情にも、魔法具は青白い炎と一緒に燃えてなくなりました。崩れ落ち、その場に座り込むお父様。そのお父様を、とてもいい笑顔でお母様は見下ろしています。

 すると、座り込むお父様の足元に魔法陣が。スーと消えていくお父様。お母様、お父様を強制送還したんですね……。

 あれは……暫く使い物にはならないですね。リムお兄様と宰相様の負担が、計り知れないものになりますね。ご愁傷様です。

 お母様とお父様の離婚に関してですか? そうですね……二人が離婚しても親であることは変わりませんし、それに、元々側にいる時間も短かったので、特にこれといって感傷に浸ることはありませんね。


    
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