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また、乙女ゲームですか
第三十一話 娘に向ける表情ではありませんよね
しおりを挟む「もう一度言う。そこをどけ」
お父様は更なる威圧を掛けてきます。ここで怯んだら負けですわ。
「いいえ。退きませんわ」
お父様から視線を逸らせずに、きっぱりと撥ね除けます。
「どうしてもか?」
完全に魔王化してますね。シオン様が私を護るように前に立ちます。
大きな背中ですわ。護られるのって、中々ありませんもの。護るばかりで。とても新鮮ですわ。ああ、その広い背中に頬を寄せ抱き付きたいですわ。でも我慢しないと。今は、目の前の魔王をなんとかしないといけませんわ。瞬時に気持ちを切り替えます。
「はい。お母様はこの城に滞在することを望んでおりますので」
実戦から離れたとはいえ、経験値が私より遥かにあるお父様と殺り合ったら、私の方が分がかなり悪いですわ。シオン様はお母様を護ってもらわなくてはいけませんもの。だって、お父様と殺り合うのに、他で魔力を消費しながらでは無理ですからね。
どっちにせよ、私が不利ですわね。
なので、出来る限り正面対決は避けたいですわ。いえ、避けるべきです。城を半壊、もしくは全壊は嫌ですし。後始末も大変ですからね。
それに、お母様が監禁させられますわ。過去、三度同じ手を使ってますからね。
となれば、私が取るべき戦法は自ずと決まります。ずばり、精神攻撃ですね。
まずは軽くジョブを入れてみました。
「どうして、そう言い切れる?」
少し効いてるようですね。
「お母様は自由な方ですもの。
いくら逃げ出さないように、お父様が羽を切ったとしても、すぐに癒やして飛び出してしまいますわ。今はまだ、嫌々でも帰って来てくれて鳥籠に入ってくれますが、入口を閉ざすと二度と帰って来ませんよ」
因みにその鳥籠って、コンフォート皇国そのものですわ。大きな鳥籠ですよね。
「…………」
苦々しい表情をしてますわ。それ、娘に向ける表情ですか? ここからは畳み掛けていきますよ。
「私とリムお兄様には会いに来てくれますが、お父様からは逃げるでしょうね」
お母様は分かりづらい表現方法をしますが、かなりの子煩悩ですもの。それは、お父様がよく知っているでしょう。
「……レイ忘れたのか。
一度だけ、セイラが本気でお前の前から姿を消した時のことを」
黙って聞いていたシオン様が、援護射撃をしてくれました。
どうやら、私が生まれる前の話のようですね。
「原因は、お前がセイラの大事なものに嫉妬して排除しようとしたからだったな。
今ここで、お前が無理矢理セイラを連れて行こうとしたら、セリアと俺を攻撃することになる。
子煩悩なセイラのことだ。前と比べものにはならないだろうな。
言いたいことは分かるよな? レイ」
私はシオン様とお父様のやり取りを静かに見守っていました。どうやら軍配はシオン様に上がったようです。
良かったですわ……被害が出なくて。でも……そこまで苦虫を噛み潰したような表情をなさらなくても。憤怒もプラスされて、他の者が見たら一生悪夢にうなされそうですわね。先程も思いましたが、娘に向ける表情ではありませんよね。勿論、親友でも。
「お父様。お母様が目覚めるまで、まだ時間がありますわ。お茶でも如何ですか? シオン様も」
ニコッと微笑みながらソファーに案内します。タイミングよく、スミスがお茶を用意してくれてます。洗練された優雅な動きで。
ほんと、優秀過ぎますわ。でも、侍女ではなくスミスがってところは、大目に見ないといけませんね。……トラウマにならなければいいのだけど。後で、精神的フォローも必要ですね。
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